この日、おむさんが、姿を見せなかった。 | |
雨天時は別として、いつもの時間・いつもの場所に、おむさんが現れないというのは、ここ数ヶ月なかったことなので、私(筆者)は大いに心配した。 | |
ケガなどしていなければいいが。 事故になど巻き込まれていなければいいが。 |
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私は、「おむさんが来ない、見かけたら知らせて欲しい」とボラさんにメールを送った。 すると、まもなく、当のボラさんが、車で現地に来てくれた。 |
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だが、聞いてみると、私のメールを見て来てくれたわけではなくて、まったくの偶然なのであった。 そして ―― なんと、たった今、おむさんをバス通りの向こうで見たという。 |
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やや離れた所にあるバス通りは、交通量が多い。猫にとって、横断するのは、たいへん危険である。 私としては、おむさん(達)に、その道路を渡って欲しくないのである。 |
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バス通りの向こうの住宅街へ行って、合図の口笛を吹くと、 ―― おむさんが現れた。 驚いた。 そんな所でおむさんの姿を見るのは、初めてである。 要するに、おむさんはこの日、なぜか遠出をして、バス通りを越えてしまったのである。 |
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おむさんが「いつもの場所」へ帰るためには、当然、またバス通りを横断しなければならないわけだが、しかし、上記の通り、それはたいへん危険なことである。 | |
結局 ―― 私は、(或る聡明な人物と相談し、協力して、)おむさんをしっかりダッコしてバス通りを渡り、安全な「いつもの場所」へと、連れ帰ったのである。 | |
おむさん(達)は、立春の頃に、失踪する。
春だけでなく、秋にも、失踪するのだろうか? |
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後で知ったことだが ―― この日、10月27日は、この秋一番の冷え込みだったそうな。 夜が明ける前から、「木枯し1号」が吹き荒れていたという。 (ちなみに、この地方で10月に「木枯し1号」が吹くのは、10年振りのことだという。) |
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猫たちも、突然の寒さに、とまどったのかもしれない。 |
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―― というわけで、この日は、事件に満ちていたのであった。 おかか先生がバッグに入り、 よっちゃんが久し振りに現れ、 そして、おむさんはミニ失踪したのである。 |
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そんな秋の日 ―― いや、「冬の始まりの日」であった。 | |