失踪譚 02

2009年02月01日 15時54分00秒 | B地点 おむ

 

承前


おむは眠った。

彼の夢の中に、春の精が訪れたのではなかろうか。
春の精が、自らの顕現を、おむに告げたのではなかろうか。
その夢は、春のかぐわしい香りに満ちていたのではなかろうか。
目覚めたおむは、既に春の訪れを知っていたに違いない。
桜の幹の高みに上ったおむは、目前に迫る「春」を、はっきり見たに違いない。
きっとこの時、彼は「春」を確信したのだ。
彼はおもむろに木から下りた。
その瞳には、或る種の緊張が漲っていた。
よっちゃんが現れた。
こんなに早い時間に、よっちゃんが現れるのも、私が見てきた限り、「この冬初めて」のことである。そして恐らく同時に、「この初めて」のことなのだ。

15時54分。この日の、最後の写真。

この日の夕刻、ボランティアさんの給餌の後、72時間に亙って、おむは姿を消したのである。


つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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2 コメント

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Unknown (よっちゃん)
2009-02-07 00:21:37
いや~、ごまねしさん、
夜が好きな僕も、実はけっこう写真を撮られてるんだけどね。


でも、カメラのお兄さんが、なかなか整理してくれないもんだから、
あんまり登場できないんだよ。


お兄さん、もっとがんばってよ!


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Unknown (ごまねし)
2009-02-06 23:23:15
よっちゃん、久しぶり!
おむさん、どこかへお出かけしていたのでしょうか?
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