釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

デジタル化による監視社会の到来

2020-08-31 19:16:46 | 社会
中国の共産党のメディアである人民網は、昨日、「中国の若者はなぜ「新しい貧乏人」になったのか?」と題する記事を載せた。それによると、「90後(1990年代生まれ)は1人あたり平均12万元(約180万円)もの負債を抱えるという。このデータにはいささか大げさであるものの、彼らの多くは従来の意味での貧乏人ではなく、「新しい貧乏人」と呼ばれる。高等教育を受け、一定の美意識をもつ一方で、経済力はブルーカラーと大差なく、都市の周辺に暮らす若者たちだ。」とある。鄧小平の改革開放により、中国は経済の資本主義化を推進したが、家族主義や貯蓄傾向はそのまま残されて来た。しかし、1990年代生まれの世代は中国のいわゆる「一人っ子政策」の真っ只中で生まれた世代で、大切に育てられ、しかも成人となった時には、周囲に消費材が溢れる社会に変容していた。今日の人民網でも「これはもうレジャーランド!上海最大のショッピングモールが開業」が報じられている。総面積が東京ドーム7.3個分の広さで、400軒以上のブランドショップが入居するミニレジャーランドでもある。今年1月に人口600万人の大連市へ行った際にも、ブランド店が並ぶショッピングモールや、両サイドに延々と衣料品の店が並ぶ「市場」を見たが、もはや店舗を見ているだけだと、とてもかっての貧しい中国の残影はなく、若い世代にとっては、「消費」はもはや日常である。米国は世代に関係なくローンで消費するのが当たり前の、消費が国の経済の7割を占める経済大国だが、今や中国もまた「消費」に大きく舵を切った。中国政府は、米国の貿易戦争やIT企業攻撃で、コロナ禍の中で、経済を「貿易」から「内需=国内消費」へ方向転換することにした。米国は貿易戦争を仕掛けただけでなく、中国のIT企業の台頭に脅威を感じ、今のうちに中国のIT企業を抑え込もうとしている。一橋大学の野口悠紀雄名誉教授は2018年2月23日の段階で、現代ビジネスで「中国がまもなく「世界最強のIT国家」になる歴史的必然性」なる記事を載せている。「中国のITにおける強さが、潤沢な資金力や優秀な人材に支えられている面は確かにある。しかし、そうしたことだけではない。中国の特殊な社会・国家構造が、中国のIT産業に対して有利に働くのだ。」「ITには従来なかった特殊な規模の利益が働く。そして人口は途方もない大きさだ。IT産業は本質的な意味で中国に合っていると考えざるをえない。そのことが中国でいま実証されつつあるのだ。」「AI(人工知能)の技術開発においては、ビッグデータをどれだけ集められるかが重要だ。それを簡単に集められる中国は、人工知能のディープラーニングにおいて、有利な立場に立つ。」。中国はこのコロナ禍で、政府も民間も一挙にITを進化させた。危惧を残す5Gも今年中に国内全域がカバーされてしまい、顔認識の監視カメラも国内全域に敷設が完成する。科学ジャーナリストの倉澤治雄氏によれば、「全国民14億人を1秒で特定できる監視システムの構築」となる。今年の末までには6億2600万台のカメラが設置される。都市部では「天網(てんもう)」、農村部では「雪亮(せつりょう)」と呼ばれる監視システムで、監視カメラだけでなく、通信ネットワークやスーパーコンピューターがセットされており、「ファーウェイ、ZTEをはじめ、中国の名だたるハイテク企業が参加」している。マレーシアでは、光ケーブルなどのパソコンLAN環境が整備されなかったために、一挙にスマートフォン文化となったように、中国でもクレジットカードを飛び越して、いきなり電子決済が普及し、アリババグループによる「信用スコア」により、銀行よりずっと早く、かつ簡単な「審査」で借り入れが容易に出来るようにもなっている。すべてがスマートフォンで、簡単に出来る。1月の大連市訪問時も、一度も現金支払いをする場面はなかった。あらかじめ知人にお金を渡しておいて、知人がすべてスマートフォンで決済した。同じく今日の人民網は、「河南省の企業、5Gで無人鉱山を実現」と報じている。「焦煤集団千業水泥(セメント)公司は、5Gネットワークやモノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)クラウドコンピューティングなどの技術を駆使して、「5G+無人鉱山」プロジェクトを立ち上げた。」とある。今年5月に米国のツイッター社の重役に就任した、元スタンフォード大学人工知能研究所所長の李飛飛氏は、16歳で米国に移住した1976年生まれの女性コンピューター科学者である。同氏は、2016年にはグーグルGoogleのチーフサイエンティストに就任し、同社の中国進出に貢献してもいる。米国には多くの中国系IT科学者がいる。中国はITの先端を行く有利な条件を備えており、世界で最も早い「監視国家」となるが、それはいずれ日米欧でも達成されるだろう。日本でも監視カメラはすでに全国に設置されている。デジタル通貨が導入されれば、行動だけでなく、お金の動きまで監視される世の中になる。社会生活の「デジタル化」は共産主義、資本主義とは関係なく、完璧な「監視国家」をもたらす。その動きをもはや誰も止められない。1949年に英国人ジョージ・オーウェルの書いた小説『1984年』の監視社会は、デジタル化がもたらすことになった。
「日経XTECH」より

米国離脱を決めた中国

2020-08-29 19:08:25 | 社会
今日も朝から暑さが続き、日中の気温も昨日と同じくらいだ。例年であれば、この時期に30度を超えることはなく、夜も気温がずっと下がるが、昨夜は風もなく、熱気が残り、暑い夜になっていた。家庭菜園を作られている方の話だと、今年はすべての野菜の出来が悪いと言う。ブルーベリーなども良くないようで、熊が例年以上に出るのも、山の実りが良くないせいなのかも知れない。息子も折角だからと、庭に鉢植えの菜園を少し作っているが、やはり出来は良くない。それが天候のせいなのか、作り方が悪いのかは分からないが。首相は結局、二度目も途中で退任せざるを得なくなったが、持病のためであれば、やむを得ないだろう。今月初めには、共同通信のインタビューで、福田康夫元首相が、「各省庁の中堅以上の幹部は皆、官邸(の顔色)を見て仕事をしている。恥ずかしく、国家の破滅に近づいている。官邸の言うことを聞こうと、忖度以上のことをしようとして、すり寄る人もいる。能力のない人が偉くなっており、むちゃくちゃだ。自民党がつぶれる時は、役所も一緒につぶれる。自殺行為だ。」と批判していた。しかし、意外なのは、中国とロシアの反応である。昨日の首相の辞任を中国は国営放送で生中継し、「彼は実利的な政治家だった。特に外交では国益のために平身低頭することも厭わなかった。前の何人かの意味のない首相より、彼はずっと良くやった」と高評価している。ロシアは「ロシアは非常に残念だと思っている。」、「プーチン大統領と安倍氏の間には、仕事を成し遂げるための輝くような関係があった」と大統領報道官が述べている。恐らく、中ロにとっては御し易い相手だったのだろう。中国は今や日・欧米とは違って、概ねコロナ禍から脱しており、主要国では唯一、経済成長がプラスに転じている。長江や黄河の流域の甚大な洪水被害を抱えているが、社会活動はほぼ正常化し、武漢では巨大プールでの極度の蜜状態のイベントが世界中に報じられたほどである。一国の経済規模は一般にはGDP国内総生産で比較される。このGDPは「労働投入量×生産性」で近似され、「労働投入量(労働量)」は「労働者数×平均年間勤務時間」で求められる。生産性と平均年間勤務時間が変わらなければ、労働者数がGDPを大きく左右する。日本の経済が凋落する原因はそこにもある。国連による2019年の人口を見ると、中国は14億3378万人で、インドが13億6641万人、中国と国土面積がほぼ同じ米国が3億2906万人で3番目に続き、インドネシア2億7062万人、パキスタン2億1656万人、ブラジル2億1105万人、ナイジェリア2億0096万人、バングラデシュ1億6304万人、ロシア1億4587万人、メキシコ1億2757万人、11位が日本1億2686万人となっている。実に11カ国中アジア圏がロシアも含めると7カ国が占めている。インドは中国に肉泊する人口であり、実際、10年以内には人口で中国を追い越すと言われている。しかし、現在のインドの経済規模は中国の5分の1である。インドはいまだに封建的なカースト制度が根底に残るために、優秀な人材が埋没される非効率な経済システムのままである。多くの優秀な人材が米国に渡り、米国のIT産業を支えている。今や米国はこのインドの人材なしには成り立たないとまで言われている。中国は2018年以来米国から経済を初めとする攻撃にさらされるようになり、その上、コロナ禍を迎え、経済の大きな転換を迫られた。中国は米国を含めた輸出と国内の不動産開発で経済成長を図って来たが、いずれもが問題を抱えることになった。他国依存を修正し、国内の消費を高める方向へ大転換することに決めた。無論、「一帯一路」は堅持し、将来的には人民元貿易圏の形成を目指しているようだ。今回の新型コロナウイルスは、風邪とは無論異なるが、風邪と似たところもある。それは容易には抗体が維持出来ない、免疫が長く維持出来ないため、通常の風邪と同じく、何度も感染する可能性があると言うことだ。もちろん、ワクチンが作られても、効果は長く維持出来ない。それでいて風邪と大きく異なるのは、重症化すると医療的にもコントロールが極めて難しくなることだ。コロナ禍は今後も持続して行くことを前提に、社会活動をいかに維持するかを考える必要がある。中国は購買力平価でのGDPでは、すでに2014年に米国を追い越し世界一となっているが、このコロナ禍で、名目GDPでも米国を追い越すことが加速しているようだ。日本は2013年以来の円安で、海外へ日本企業を売り渡し、日本銀行の超低金利と国債中心の債券買い取りと株式購入で、GDP規模の当座預金を積み上げ、企業の同じくGDPに迫る規模の内部留保を促す結果となった。すでに総人口は9年連続減少であり、労働者数の減少に根本的対策は全く打たれておらず、それぞれ500兆円規模に迫る内部留保と日本銀行当座預金と言う巨額の「ダム」を抱えている。経済の縮小とインフレへの危惧が残される状態である。
購買力平価GDP
購買力平価は各国の通貨価値を実生活に近い形で評価したもの
(同じ物が日本で100円、米国で1ドルであれば、通常の為替1ドル105円ではなく、1ドル=100円と言うことになる)

「無症状者に検査は不要」

2020-08-28 19:17:33 | 科学
今日の釜石は34度まで上がり、職場に隣接する薬師公園から聴こえて来るミンミンゼミの声が、一層暑さを増すように感じてしまった。太平洋高気圧の上に重なったチベット高気圧が居座る限り、暑さは続く。そんな中で、昨日は岩手県で一気に6人の感染者が見出され、気付かないうちに19人になってしまった。昨日は隣りの遠野市で5人が感染していたことが明らかになった。PCR検査を限定した中での結果であり、恐らくは、実際は10倍は感染者がいるだろう。 日本では最初から無症状感染者は軽視されて来たが、昨日のロイター通信によると、米疾病対策センター(CDC)も、「検査指針を変更し、コロナ感染者と接触しても無症状であれば検査を受ける必要はないと提言した。」ようだ。「これまでは、感染者と接触があった人は全員検査を受けるべきとの指針を示していた。」。「ジョージ・ワシントン大学ミルケン研究所公衆衛生学校の客員教授、リーナ・ウェン博士はCNNに、突然の指針変更は説明がつかないとした上で、「検査は拡大が必要なのであって、縮小ではない」と非難した。」とある。PCR検査では、ウイルスの残骸や活性がなくなったウイルスまで検知して陽性となる。従って、厳密には陽性者=感染者ではない。陽性者>感染者の関係があり、厳密な意味では陽性者より感染者の方が少ない。しかし、現在、感染者を見出す方法が他にはない。となれば、結局は感染者を見つけるために検査を徹底するしかない。とりあえずは陽性者を隔離し、陰性者は通常の社会活動を続ける。そのための検査を徹底する。それが感染症の本来の対策である。しかし、日本では政府の「専門家集団」が厚生労働省の医務技監や国立感染症研究所により独占主導されたため、その系列で行える検査数そのものが最初から限られていた。データの集積やその解析まで全てを独占したことで、それらに手間取り、先進国ではあり得ない、データ開示の大幅な遅れとなっている。26日には、ついにNHKまでが「感染者情報の国のデータベース 一部データを把握できず」と報じた。これは国が新たに導入したシステムの整備の問題として報じられているが、25日の東洋経済は「日本がコロナ第3波を避けられない決定的弱点 「無症状者に検査は不要」の方針は大いに疑問だ」と題して、医療ガバナンス研究所上昌広理事長が書かれた記事では、そのデータ独占のためにかえって、「日本のコロナ研究が停滞していることがわかる。」結果となっていることを、米国の医学図書館データベース(PubMed)に載る日本の新型コロナウイルス関連論文の少なさで示されている。また、「8月6日、『米国医師会誌(JAMA)内科版』に韓国のスンチョンヒャン(順天郷)大学の研究者」が発表した内容では、陽性者全体の29%が無症状で、「PCR検査で推定したウイルス量とPCR検査が陰性化するまでに要する時間が症状の有無に関わらず、変わらなかったことだ。この事実は、無症状感染者も周囲に感染させることを意味する。無症状の人にはPCR検査を実施しないという厚生労働省の方針は、医学的には不適切ということになる。」としている。「コロナの研究の基盤はPCR検査だ。PCRをしないことには診断できないからだ。逆にPCR体制を充実すれば、さまざまな大学や医療機関が独自に臨床研究を進めることができる。」だが、「厚労省は「無症状者に検査は不要」という方針を貫いている。」。7月3日の東京大学先端科学技術研究センター児玉龍彦名誉教授の外国人記者クラブでの会見の中でも、「なんで東大が閉まっているのが問題かと言うとですね、結局、さっきPCRが増えないという話がありましたが、これは日本の科学技術者が、コロナの災いが起こった時に、文科省の指示によって東京大学を始めとして全部閉じてしまった。それで、われわれ、これを続けようとしたら、もう、、、、あらゆるなんて言うんですかね、妨害の渦です。閉じているんだから、人を来させてはいけない。倫理委員会はできないから、やってはいけない。外部の検体を入れてはいけない。要するに日本の科学技術というのが、これだけ衰退しているのを見たのは私、空前絶後であります。」と語っている。米国は大統領選挙のために、検査数を減らして、感染者が少なくなったように見せかけたい。日本は、一貫してオリンピック開催のために感染者を少なくしておきたい政治と主導権を握り全てを独占する「専門家集団」の思惑が合致して、検査が制限され続けている。しかし、検査を制限することは、容易に感染者を見逃すことになり、結局は、いつまでも感染が終息しない事態を招くだけである。
日本の日毎の死者数推移
人口100万人当たりの死者10人(東アジア最悪)137位、感染者152位、検査数150位(215カ国・地域中)

焦りが高じて来ている米国

2020-08-27 19:16:49 | 社会
台風8号は予想通り今朝朝鮮半島根付けの西岸に上陸した。この台風のために朝鮮半島に近い長崎県の五島列島では1時間に約110mmの猛烈な雨が降った。知人のいる大連も近いので、何らかの影響はあるだろう。中国では6月以来、アジア最長の全長6300kmで、世界最大の三峡ダムのある長江が5回の洪水に見舞われ、長江の北にある全長5500Kmの黄河が6回の洪水に見舞われた。いずれの流域もまだ洪水で溢れた水は引いていないが、どうやら三峡ダムは危機を何とか持ち堪えたようだ。これが崩壊すれば、ただ中国一国の問題では済まなくなる。現在、世界では新型コロナウイルス感染が続き、各国は政府と中央銀行が一層協調して大量マネーを注ぎ込もうとしている。選挙を控えた米国は、対中国攻撃を過激化しつつある。今月9日、米国厚生省アレックス・アザーAlex Azar長官が台湾を訪れた。米国の内閣構成メンバーは、2000年と2014年にも台湾を訪れているが、今回は1979年に「一つの中国政策」を採用して、中華民国と米国が表向き断交して以降、台湾を訪れる最高位の米国閣僚であると言う特別な意味が込められている。これまでも好戦的な貿易関税、中国通信企業に対する制裁、香港やその他への侵害に対する非難、コロナ流行やアメリカ経済の崩壊を中国のせいにする扇動的な反中国言説、中国の南シナ海領有権主張は違法だとする米国の宣言と南シナ海での米国の軍事的示威行動、などが行われて来た。今回の台湾訪問は、1979年以来の中国に対する米国の「宥和政策」の放棄、「一つの中国政策」の放棄を宣言するものである。戦後の超大国であった米国とソ連の間には、「冷戦」があった。互いに核兵器をはじめ強大な武力を有するが故に、まともな武力衝突、熱い戦争は避けざるを得なかった。今やそのかっての米ソと同じ関係が米中間に生まれて来ている。いわば「第2の冷戦」である。現在、イランや北朝鮮は米国からの経済制裁として、貿易取引をドルで決済する国際システムであるSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除されている。米国はこれまで経済制裁の強力な武器として、このSWIFTを利用して来た。SWIFTはベルギーにある民間組織であるが、SWIFT自身が米国の制裁を受けることを恐れて、米国の意向に従って来た。米国はこのSWIFTを中国への武器としても利用する可能性が出て来た。中国は2015年10月に、SWIFTとは異なる人民元による国際決済システム、国際銀行間決済システム(CIPS)を導入し、ロシア、トルコなど米国が経済制裁の対象とした国々の銀行が、このCIPSに多く参加している。日本経済新聞社の調査では、2019年4月時点でCIPSへの参加は89か国・地域の865行となっている。中国のCIPSと「一帯一路」構想は並行したものともなっている。中国の広大な国土の長い歴史は、覇権の交代が如何なるものかを教えて来た。どのような形かは定かではなくとも、いずれドル覇権から離れる時が訪れると認識していた。今年すでに実施しているデジタル人民元もやはりCIPSと切り離せない。近年、ロシアや中国だけでなく新興国の中央銀行は「金」を買い続けて来ている。今年6月末時点での金保有量では、公式には米国が8133トンで世界一と言うことになっているが、実際にはそれだけ保有していない、と言われている。もう何十年と公式な監査がなされていない。ドイツ(3363トン)、IMF国際通貨基金(2814トン)、イタリア(2451トン)、フランス(2436トン)、ロシア(2299トン)、中国(1948トン)、スイス(1040トン)、日本(765トン)と続くが、中国は実際にはすでに2万トンを超えて保有していると言われている。日本はすべての金を米国に預けていおり、ドイツやフランスのように米国に返還を求めることがない。中国はすでに米国のドルから離れて、自国通貨である人民元を金を裏付としたデジタル人民元として準備しようとしている。金に裏付けされた通貨であれば、世界で通用することになる。不安があれば、いつでも手元の人民元と金の交換が可能なのだ。今月10日に発表された世界企業番付「フォーチュングローバル500」では、ついに中国が米国を上回る124社、ランクインした。米国は121社、日本は53社である。中国は巨大な国営企業があるためもあるが、年々着実に企業が育っていることも事実である。覇権国である米国は、中国の科学・技術、経済を必死に抑え込もうとしている。そして、その手段をますますエスカレートさせているが、自国への跳ね返りをほとんど考慮していないようだ。過去40年の「宥和政策」は、中国の成長を助けただけでなく、米国経済の存続をも支えて来たことを見逃しているようだ。米国は中国によるウイグルや香港の人権侵害を問題にするが、現在もやまない国内の人種差別には真剣に取り組んでは来なかった。200年以上も省みられていない。しかも、今や民主党は中国でさえ「真っ青」になりそうな社会主義政策を目白押しさせている。世界の国家に通貨戦争を仕掛け、大きな勝利を治めて来た投資の巨人ジョージ・ソロスは、かって、英国経済誌フィナンシャル・タイムズのインタビューで、「中国は「New World Order」の「 創造と所有 」に於いて、これを主導し、米国を抜いて世界経済の超大国になるべきだ」と主張している。長期的な視点に立つ投資家は、大国の武力衝突は望まず、将来得られる経済的利益に興味を示す。
日米の衰退と中国の興隆が見て取れる

これがファクターXなのかも知れない

2020-08-26 19:15:51 | 科学
日中午後には今日も30度を超えて暑さが残るが、夜の気温が下がってくれるので、楽になった。夕方の川沿いのウォーキングも涼しい風が吹くようになった。釜石へ来た13年ほど前は、この時期にはこれほど暑くはなかったように思う。お盆の15日を過ぎると、北海道のように夜には寒さを感じると言うまでではないが、少なくとも暑くはなかったように思う。近年の夏の異常な暑さは、東から列島に張り出して来る太平洋高気圧とそのさらに上空に西から張り出して来るチベット高気圧が列島上空で重なることでもたらされている。そのチベット高気圧がまだ居残っているので、東北でもこの時期30度を超すのだ。 順天堂大学医学部免疫学の奥村康特任教授によれば、毎年のインフルエンザは秋に渡り鳥が運んで来て、翌年3月の末には「集団免疫」が出来るために感染の拡大が止まるのだ言う。昨年秋から今年の春にかけてのインフルエンザは日本では例年よりずっと少なかった。拍子抜けすると言ってもいいほどの少なさであった。京都大学大学院医学研究科の上久保靖彦特定教授と吉備国際大学の高橋淳教授らは、今年5月に「日本人には新型コロナウイルスの免疫があったので死者数を抑え込むことが出来た」との内容の論文を英国のCambridge Open Engageに発表している。論文では、新型コロナウイルスにはS型、K型、G型の3つの型がある。最初にS型が発生し、それが変異したものがK型で、武漢でさらに変異した感染力の強い型がG型である。ウイルス感染では二つのウイルスが存在する場合、互いに競合し、どちらも単独の時ほど感染は拡大しないと言う。これを「ウイルス競合」とか「ウイルス干渉」と呼ぶそうだ。中国では、1月23日に武漢が閉鎖されたが、日本での入国制限は3月9日まで武漢からの入国に限られていた。S型は、無症候性も多い弱毒ウイルスなので、インフルエンザに対するウイルス干渉も弱かったが、S型から変異したK型は、無症候性~軽症で、中国における感染症サーベイランスでは感知されず蔓延し、日本でもインフルエンザウイルスを抑えるほど広がった。昨年10月~12月にインフルエンザとともにS型やK型が広がっていた。G型が日本へ入って来たのは3月に入ってからである。アメリカやイタリアなどの欧米諸国では、S型が広がっていた時期には渡航制限が無かったため、S型はかなり欧米に蔓延したが、2月初旬に全面的な渡航制限が行われたために、K型の流入は大幅に防ぐことが出来た。S型に対する免疫はG型の感染を予防する能力が乏しい上に、S型に対する抗体がむしろ細胞へのウイルスの感染を助ける抗体依存性免疫増強(ADE)効果があると考えられると言う。日本は武漢以外の国からの入国制限を始めるのが遅かったことで、K型への集団免疫が出来、感染力や毒性の強いG型の感染を大幅に抑えることが出来たと推論している。欧米は抗体依存性免疫増強(ADE)効果のあるS型と、後にG型が拡大し、重症化した。東京大学児玉教授の言うSARS-Xや京都大学中山教授の言うファクターXとはこのS型及K型の気付かれない感染拡大であった可能性がある。日本だけでなくアジアの多くの国で、昨年の内に、気付かれないままS型やK型が蔓延していたのだろう。上久保教授はすでに日本は集団免疫を獲得しており、新型コロナ感染は終息すると言われている。抗体の陽性率も基準値をどこに置くかで変わり、抗体を調べると、殆どの人で抗体が測定されるとも言われている。論文が発表された5月には大手メディアも注目したが、その後は、全く無視されてしまっている。現時点で、上久保教授が言われるように日本ですでに集団免疫が獲得されている、とまでは考えにくい。ただ、確かにかなりの部分まで集団免疫が出来ているのかも知れない。インフルエンザを考えると、岩手のこの感染者の少なさこそが異様に思え、実際にはもっと多くの感染者がいると思っている。まだやはり無症状感染者の炙り出しをやる必要はあるだろう。



「コロナ禍で目前に迫る日本の財政崩壊 」

2020-08-25 19:18:35 | 経済
昨日、香港大学の研究チームが、IT業界で働く33歳の男性が、3月に一度新型コロナウイルスに感染し回復したが、今月再び感染が確認され、ウイルスの遺伝子を分析したところ、二つのウイルスは異なった株であった。日本経済新聞は、「研究チームは「コロナウイルスは一般的な風邪と同様に、患者が免疫を獲得しても、人々の間に長くとどまることが示唆された」と分析」と伝えている。米国イェール大学医学部免疫生物学の岩崎明子教授は、自身のツィッターで、「2回目の感染は無症状でした。この2回目の感染を防げるほどの免疫力はありませんでしたが、病気になることは防いだ」「再感染が起きうるということは、自然な感染に頼った集団免疫の獲得では新型コロナウイルスを淘汰することは難しいということです。安全で効果的な唯一の方法は、ワクチンの摂取で集団免疫を獲得することです。」と書いている。中国では早い段階で同じ人が再感染する事実を報告していた。また、英米のいくつかの研究で、抗体が数ヶ月で効力を失うことも報告されている。インフルエンザのワクチンも3〜4ヶ月しか効力を持たない。しかも、ワクチンを打ったからと言って、感染しないわけではなく、発症することも当然ある。日本の「研究者」には新型コロナウイルスが普通の風邪のようなものだと見る人もいれば、集団免疫の獲得で切り抜けられると言う人もいる。そうした見方は安易過ぎるだろう。インフルエンザともまた違って、季節性がなく、基礎疾患のある人や高齢者にはより危険なウイルスと言える。今のところ日本ではあまり見られないが、欧米では基礎疾患のない小児や若者でも死者が出ている。重症化から死に至る免疫の異常反応、微小血栓やサイレント低酸素症が報告されている。今後もインフルエンザ以上に感染は常態化して行く可能性があるし、ワクチンにも期待はし過ぎない方がいいだろう。そして、常態化するのであれば、なお、どの医療機関でも検査は出来るような状態にする必要がある。通常風邪だとされているものの原因に4種類のコロナウイルスが含まれており、その風邪に対する免疫力も長くは体内で維持されない。しかし、これが何らかの形でアジアでは欧米ほどに感染が拡大しない理由なのかも知れない。とは言え、抗体が長くは維持されない以上、対策はしっかり取る必要がある。ただ、こうした「パンデミック」はしばしば政治的に利用されることがある。法外な追加予算、その財源としての大量国債発行などもその一つと言えるだろう。今月22日の朝日新聞は、変容する経済シリーズ12回として、「進む財政・金融一体化の危うさ 金利の消滅で死んだ市場」なる記事を載せている。他の欧米先進国とは違って日本は政府の債務と中央銀行の支えの関係がコロナ禍以前から「密」であった。そこにコロナ禍が訪れ、その「蜜」な関係がまさに正当化される環境になった。世界を「主導する」米国ですら、このコロナ禍では政府債務と中央銀行の関係が異例に「蜜」となったからである。もはや日本だけが特別とは言えないような状況になった。しかし、だからと言って安心出来ると言うことにはならない。前日の21日には、ニュース屋台村に、「コロナ禍で目前に迫る日本の財政崩壊 『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第175回」と題する記事が投稿されている。投稿者はタイのバンコック銀行小澤仁執行副頭取である。バンコック銀行はタイ最大の商業銀行である。さすがにバンカーらしく、図表が豊富で、いずれも説得力のあるものが掲げられている。政治家が本来、税収を増加させ、支出を減らすべき時期に、それを怠って来たために、政府債務が積み上がって来た過程が示されている。特に、1990年代初頭のバブル崩壊後、それが顕著となった。税収は増加せず、債務だけが着実に積み上がって行った。そして、1998年、「日本の生産年齢人口(15-64歳)がピークアウト」すると、「98年以降急速にこの赤字国債が大量に発行されている」。高齢者が増加し、社会保障費が急増する中で、今回のコロナ禍を迎えた。「2020(令和2)年の合計歳出額は約160兆円となり、国債発行額は90兆2千億円と過去最大の規模である、予算のおよそ56.3%を国債で賄うという驚異的な数字となっている。」。ところで、「日本は海外に約340兆円の資産を保有しているため、日本国全体では資産超過となっている。現状の海外資産の内訳を見ると、証券投資が44%となっている(図11参照)が、そのうち米ドル建債券が約半分の210兆円あり、米国政府との関係上、すぐに現金化できないものが含まれている。差し引きすると、実質的な現金可能化資産は約130兆円となる。 一方、今年は新型コロナウイルスによる政府借金額は約100兆円増加するため、この調達は海外資産の切り崩しなどに頼る可能性が高く、実質的な現金可能化資産はほぼなくなるかもしれない。」「もしそうなった場合、日本は来年度以降実質的な対外純負債国となる可能性が高く海外投資家からの投機対象となる。」。要は、来年以降、「日本全体の資金繰りが赤字となる可能性」があると言う。「円」の暴落が起きることが視野に入って来る。
二つの線の差が年々の債務として積み上がって行く

変容して行く社会

2020-08-24 19:12:29 | 社会
現在、アジアでは台風8号が発生していて、27日には北朝鮮に上陸すると見られているが、朝鮮半島の西の海水温が30度にもなっているため、台風が朝鮮半島に接近すると、台風は勢力を増して、風速200Kmにもなる可能性があると言う。深刻な風水害をもたらす可能性がある。一方、米国でも南部のメキシコ湾沿岸部に2つのハリケーンが接近しており、24日から26日ごろにかけてルイジアナ州に相次いで上陸する可能性があり、2つのハリケーンが連続して直撃すると言う前例のない事態となっている。南部沿岸部では最大3mの高潮も予想され、河川の水が内陸へ50Km近く押し戻される恐れもあると言う。カリブ海の島国ドミニカ共和国ではすでに昨日、3人が死亡し、同じイスパニョーラ島の隣国ハイチでも5人が死亡した。台風やハリケーンの近年の異常さは、やはり海水温の異常から発生している。新型コロナウイルス感染も世界的な感染拡大が続いており、感染者は2358万人を超え、死者は81万人を超えた。英国の研究者にはこのウイルスの感染は今後継続し、常態化するだろうと見るものもいる。PCR検査を7600万件を超えて実施した米国の感染も2山目を超えたとは言え、まだ1日に3万3000人近くの新規感染者がいる。9041万件の検査を行って、徹底的な封じ込め策を取っている中国もなお昨日は16人の新規感染者が出ている。感染拡大が続く米国では、先週株式指標の一つが最高値を更新したが、こうした金融市場とは極端に解離して、企業倒産が記録的なペースで進んでいる。フィナンシャル・タイムズFTによると、8月17日の時点で、資産が10億ドルを超える45社が破産申請している。これは金融危機が深刻化していた2009年の同じ期間の38社を超えている。合計で、5000万ドルを超える負債を持つ157社が今年すでに破産申請しており、今後さらに増え続ける。米国もコロナ対策で数兆ドルの追加予算を計上したが、それらが適切に必要な企業へは回らず、金融市場を押し上げるだけになっている。ある米国の企業家は、「ニューヨーク市は死んでいる」と言う。シティグループ、JPモーガン、グーグル、ツイッター、フェイスブックなどの企業が従業員に「数年またはおそらくは恒久的に」自宅から離れて働くよう奨励しているため、オフィスには誰もいない。状況は悪化するだけで、古いニューヨークは復活せず、クリエイティブとビジネスの機会は今や全国に分散するだろうと言われる。現在は2008年のリーマン・ショック後よりもインターネットが遥かに大容量で高速化されている。米国では日本と違い、遠隔でありながら、かつ、生産性も高い。今日のブルームバーグは「中国の社債デフォルト、今年は過去最高更新か-経済回復の弱さ響く」と題して、中国でもやはりコロナ禍が体力の弱い企業に問題を生じさせていることを報じている。中国では社債市場の規模が4兆1000億ドル(約434兆円)であるが、年末までに3兆6500億元(約56兆円)相当の債券が満期を迎える予定で、4-6月(第2四半期)に落ち着いていた返済遅延が既に増え始めていると言う。「アナリストは借入コストが上昇し、借り換えがより難しくなっていることから、非国営企業や低い格付けの不動産開発業者、一部の地方政府の資金調達事業体(LGFV)が特に脆弱(ぜいじゃく)とみている。」。コロナ禍による実体経済への影響は単なる業績悪化に留まらず、業務の在り方にまで影響し、中国では消費者の消費のデジタル化を一層深化させてもいる。コロナ禍や政府の巨額債務、中央銀行の肥大化した資産(通貨発行)など、どの国にとっても極めて重い問題であるが、これらをいかに乗り越えるのかが、その国の「真の国力」としていずれ試されることになるのだろう。
10億ドル以上の負債を抱えて倒産申請した米国企業の累積数(2002年:ITバブル方介護、2009年:リーマン・ショック後)

資本主義の「大いなるリセット」

2020-08-22 19:19:20 | 経済
1944年6月6日のヨーロッパ反攻作戦、いわゆる史上最大の作戦と言われた連合軍のノルマンディー上陸作戦を連合国遠征軍最高司令官として指揮したドワイト・デビッド・アイゼンハワーDwight David Eisenhowerは、戦後の1953年に米国大統領となった。中佐から大将へわずか4年で昇進した異才の主であるが、トルーマン大統領の原爆投下に反対した人物でもある。1961年、彼は大統領退任演説の中で、「軍産複合体Military-Industrial Complex」が民主主義の脅威となっていると警告していた。そして今では国防総省 (ペンタゴン) を中心とする軍部と巨大な軍需産業群が容易に御することの出来ない存在にまでなっている。米国の軍産複合体は、世界最大の軍事予算を米国にもたらし、常に世界のどこかに「軍事的脅威」を見出して来た。ソ連が崩壊すると、中東に「脅威」を見出し、安定よりも混乱を残した中東に次いで、現在は標的を中国に定めている。ちょうど11月の大統領選で、コロナ対策の失敗で支持率の低下している現大統領の思惑とも合致している。国民の目線を国外へ向ける失策を犯した政治家の常套手段である。1968年にニクソン大統領の補佐官となったヘンリー・アルフレッド・キッシンジャーHenry Alfred Kissingerは、その前の1960年の大統領候補に立候補していたネルソン・ロックフェラーの外交政策顧問を務めたりしていた。後にロックフェラー家が中国に銀行進出する際にも助言している。1971年、彼は中国とソ連の対立の中で、極秘に中国を訪問し、周恩来に会いベトナム戦争の終結を取り付けた。1973年からはフォード大統領の補佐官兼国務長官に就任している。副大統領はネルソン・ロックフェラーである。1979年米中国交が樹立されると、鄧小平は訪米しカーター大統領と会談後、米国の工業地帯を実見し、中国の「遅れ」を新たに認識し、帰国後すぐに深圳をはじめとする経済特区を設置し、外資導入による輸出志向型工業化政策を進めた。この時から米中経済は相互依存の関係を築き、相互に経済を成長させたが、米国だけでなく主要国は工場を自国から次々に中国へ移転させて行った。トランプ大統領が2018年に仕掛けた対中貿易戦争までの38年間は、貿易により相互が利益を得る関係が成立していた。しかし、中国の成長はあまりにも目覚ましく、軍事的脅威と言うよりも、米国にとり経済・科学・技術などでむしろ脅威となって来た。米国にとって軍事的に真に脅威と言えるのは、むしろロシアだろう。現在、世界最大の企業となっているのは株式時価総額が2兆ドルとなった米国Apple社である。米国にはそうそうたるIT産業が肩を並べている。しかし、そこに肉迫して来たのが鄧小平が育てたアジアのシリコンバレー、深圳のIT企業群である。ファーウェイ、アリババ、テンセントなど。米国の攻撃に晒されているTikTokもWeChatもそこから生まれた。米国商務省産業安全保障局(BIS)は17日、ファーウェイおよび世界21カ国のファーウェイ系列関連会社38社に対して、米国の技術・ソフトウェアで生産されるものへのアクセスを制限すると発表した。21カ国には英国・ドイツ・フランスなど欧州、ブラジルなど南米、タイなどアジアが含まれる。英国経済紙フィナンシャル・タイムズはこの措置はファーウェイにとって「死」を意味すると報じている。韓国の中央日報も「息を止められたファーウェイ…米国の半導体「死の攻撃」にサムスンも緊張」と報じている。しかし、米国の措置は、米国企業クアルコムにもファーウェイへの部品販売で最大80億ドルの受注を失わせてしまう。クアルコムは販売制限の撤回を米国政府の議員や官僚に積極的に働きかけているとも言われる。ファーウェイにメモリーチップを供給する韓国の半導体大手サムスン電子とSKハイニックス、アップルに次ぐイメージセンサーの大口顧客を失う日本のソニーへも影響する。ASEAN10ヶ国に、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6ヶ国を含めた計16ヶ国で協議が進められている世界最大の貿易協定である東アジア地域包括的経済連携RCEPにも米国は楔を打ち込むだろうか。米国は安全保障上の懸念をファーウェイなどの排斥理由に上げているが、米国自身が他国への諜報活動を積極的に行って来たことは元中央情報局(CIA)職員のエドワード・スノーデンの暴露を待たないでもよく知られたことである。大国で諜報活動をしていない国などないだろう。米国でFaceBookやGoogleなどのIT企業が個人情報を政府に開示していることはすでに明かにもなっている。米国、特に軍産複合体は、米国の覇権を維持しようと懸命である。昨年1月23日、日本の首相と外務大臣はスイスの世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席したことが今も外務省のHPに記されているが、世界経済フォーラムは、「経済、政治、学究、その他の社会におけるリーダーたちが連携することにより、世界、地域、産業の課題を形成し、世界情勢の改善に取り組むことを目的とした国際機関」であるとされる。その世界経済フォーラムは6月3日、「Now is the time for a 'great reset' (今こそ「大いなるリセット」の時だ)」と題した記事をHPで載せた。「To achieve a better outcome, the world must act jointly and swiftly to revamp all aspects of our societies and economies, from education to social contracts and working conditions. Every country, from the United States to China, must participate, and every industry, from oil and gas to tech, must be transformed. In short, we need a “Great Reset” of capitalism.(より良い結果を達成するために、世界は、教育から社会契約および労働条件に至るまで、私たちの社会および経済のすべての側面を改革するために、共同で迅速に行動しなければなりません。 米国から中国まで、すべての国が参加しなければならず、石油、ガスから技術まで、あらゆる産業が変革されなければなりません。 つまり、資本主義の「大いなるリセット」が必要です。)」とある。「a “Great Reset” of capitalism」なのである。後段には「According to the Financial Times, global government debt has already reached its highest level in peacetime. (フィナンシャル・タイムズによると、世界の政府債務はすでに平時で最高水準に達しています。)」とも書かれている。果たして、米国大統領は、「リセット」を早めようとしているのだろうか?
都忘れ

恐慌の条件

2020-08-21 19:15:53 | 経済
今日は朝8時頃に28度になると、午後までずっとその気温が続く変わった日になった。内陸より5度も低い。お盆が過ぎても暑い日が続く。それでも気付くといつの間にか夕方ヒグラシの声が聴こえなくなっている。ウグイスの声も消えている。代わって夜の虫の声が賑やかになった。日中はエゾゼミとミンミンゼミの声だけはまだ聴こえて来ている。昨日、政府の新型コロナウイルス対策分科会会長は、「今の流行は全国的にはだいたいピークに達したというのが私たちの読みだ。」と述べている。日本の「専門家」はどこまで非科学的なのだろう。限定された検査で、感染者の総体を推定することなど出来るわけがないのだ。これからもいくつも「山」のように見える波がやって来るだろう。この分科会会長を含めた日本の「感染症ムラ」はコロナ対策として政府から100億を超える予算を獲得しているにもかかわらず、わずか数本の新型コロナウイルス研究論文しか発表していないお粗末さである。日本では政府周辺に群がる専門家の多くが予算の無駄遣いをして来た。新型コロナウイルスはまるでその最終章のような態である。コロナ禍は日本でも米国でも、実態を覆い隠す役割を果たしている。 経済では実体経済の大きな落ち込みと金融危機が伴った状態を恐慌と呼ぶ。1929年のニューヨークにおける株式大暴落に始まる世界大恐慌では、米国の実体経済では、実質GDPは27%縮小し、失業者は25%以上にもなった。世界大恐慌の中で、英国の経済学者ケインズは、金融危機の直接的原因は、「債務不履行リスク」「流動性リスク」および「債務不履行リスクと流動性リスクの悪循環」であると指摘している。株式が暴落すると、多くの人が資産を失い、債務があると銀行から債務返済を迫られるが、返済に当てる資産がない。手元にある資産は何でも売られてしまう。資産価格はなお下がって行く。流動性とは、この場合は現金である。金融危機では投資家は現金を手元に置こうとするため、資産を売って現金に替える。金融危機=現金の枯渇と言ってもいいくらいである。2007年のサブプライムローン問題に端を発した2008年のリーマン・ショックはまさに100年に1度とされる金融危機であった。資産価格が暴落し、債務者は返済を迫られ、少しでも返済資金を得るために、さらに資産が売られ、資産価格が一層下落する。一瞬にして資産が失われ、流動性=現金が枯渇する。そこで中央銀行は、この現金を「非伝統的」金融緩和の名で、大量に世の中に供給した。巨大な債務を抱えたものを大きくて潰せないとして、さらなる債務で急場を凌がせたのである。つまり、金融危機とは債務危機であり、その債務危機をさらなる債務で「救済」すると言うのが、「金融緩和」である。先日、史上最高値となった米国株価は、超低金利の社債発行と言う債務で得られた資金を使って自社の株を買うことで吊り上げられたものだ。債務で押し上げられた株式である。歴史上かってないゼロ金利状態が、政府と民間の債務を同じく歴史上かってない膨大な債務に膨らませた。その債務で株式・債券などの資産バブルが今も膨らんでいる。この異常な状態は実際には昨年秋に行き詰まっていた。銀行間資金市場で、資金枯渇が生じ、中央銀行が慌てて介入し、金利の急上昇を抑えた。しかし、その状態は以後も続き、中央銀行の介入も続いていた。そんなところへコロナ禍が襲ったのだ。コロナ禍はまさに実体経済を直撃した。政府は巨額の債務を積み増して対策費に当てた。日米政府は共にもはや税収では返済不能の域にまで債務額が至っている。コロナ禍は容易には終息せず、しばらくは続く。つまり実体経済の悪化は簡単には回復しない。後は、金融危機が来れば恐慌の条件が揃う。やはりその最初の兆候はかっての世界大恐慌と同じく株式の大暴落になるのだろう。コロナ禍では誰もが政府債務の積み増しを「仕方のないこと」として簡単に受け入れてくれる。米国中央銀行は2008年以後、最大で4兆ドルの現金供給を行ったが、このコロナ禍ではわずか数か月で3兆ドルも簡単に供給している。現在、米国中央銀行の総資産は7兆ドルだが、いずれ10兆ドルになると言われている。米国議会は追加のコロナ対策予算を議論している。世界の先進国では今後も未曾有の通貨印刷が続いて行く。そして、膨大な債務や通貨発行を誰も気に留めない。しかし、それは遠からず終末を迎えざるを得ない。中央銀行は「打ち出の小槌」ではない。通貨の希薄化もいずれ限界を迎える時が来る。
法定通貨量で調整された金

酸素飽和度測定の重要性

2020-08-20 19:21:14 | 科学
息子が戻るつもりでいる米国フロリダ州では、ついに死者が1万人を超え、ドイツより多くなった。まだしばらくは米国へは行けそうにないようだ。米国と中国は国土の広さがほぼ同じだが、人口はずいぶん違っている。米国は3億3000万人で、中国は13億9000万人である。しかし、息子と話すと、中国人と米国人はよく似ているし、中国人には共産主義が似合わず、むしろ日本人の方が何事につけても共産主義的だと言う話になった。無論、茶飲み話のレベルだが。今日の米国メディアCNNは、中国の洪水について報じている。中国の四川省を流れる長江の河岸に1200年前に彫られた高さ71mの楽山大仏の坐像があるが、長江の流れがその大仏の足元にまで達した。長江の水位がそこまで達したのは1949年以来初めてである。洪水による被害は約6,300万人にのぼり、経済的損害は合計で260億ドルにもなる。中国が抱える爆弾だとされる三峡ダム the Three Gorges Damは流入水量が増加し続けていたが、昨日、毎秒74000m3を記録し、過去最高となった。中国はこの初夏以来、長江流域で4回の洪水が発生している。月曜には、水資源省が長江の上部に沿った38の支流が危機的なレベルにあると警告している。火曜日には四川省で10万人以上が自宅から避難した。「鄱陽湖を含む長江流域圏は、東の上海から西のチベット境界まで約6300Kmにわたって伸び、中国の米生産の7割を担っている。」。米国では記録的な高温が発生したばかりであり、両国のように国土が広いと、やはり日本では考えられないような自然現象も発生するのだろう。中国では現在、海外からの入国者以外の国内例は発生していないようだが、米国は1日5万人を切るようにはなったが、まだまだ感染者が続いている。CNNの調査では、新型コロナウイルス感染拡大への米国の対応について、米国人の7割以上が「恥ずかしい」と感じている。しかし、支持政党別で見ると、トランプ大統領の属する共和党の支持者では、61%が「誇りに思う」と答えており、民主党支持者では93%が「恥ずかしい」と答えた。感染者数世界一が続く米国は、連邦政府としては、ブラジル同様厳しい規制をしていない。州任せである。新型コロナウイルス感染は、多くが感染しても重症化しないが、無症状・軽症でも感染力があるだけでなく、後遺症が長く続くことがある。重症化は何らかの基礎疾患のある人に多いとされるが、基礎疾患が全くない人で、突然急変する例も報告されている。以前にも書いた米国ニューヨークの救急医であるリチャード・レビタンRichard Levitan博士は、何度かThe New York Timesに自分の重症化した新型コロナウイルス感染患者の臨床経験から知り得たことを書いている。以前、博士は血液中の酸素飽和度が異常に低下しているにもかかわらず、呼吸苦を訴えない感染者が多くいることを見出した。そして、それらの人が急変する。博士によれば、この新型コロナウイルスによる肺炎は通常の肺炎とは異なる。通常の肺炎は肺胞と言う酸素交換が行われる大事な肺の組織で、水分と膿が溜まるが、このウイルスによる肺炎ではウイルスが肺胞の界面活性剤物質(サーファクタント)を産生する肺細胞を攻撃するために、肺胞が膨らんだ状態を保てなくなり、酸素の取り込みだけが障害され、二酸化炭素の除去は障害されない。この二酸化炭素の除去が障害されないためにむしろ一層悪化してから呼吸苦が発生しており、このことが重症化の要因となっていると言う。人工呼吸器を装着しなければならない状態になると80%が救命出来ないと言う。そして、重症化しないためには、早期に血液中の酸素飽和度の低下を見出し、早く酸素を与えることで、重症化が防げると言う。5月10日の「We Treated Older Coronavirus Patients. Here’s How to Save More of Them. Requiring pulse oximetry in nursing homes would be a big step.」と言う記事では、日本でもクラスター発生で問題になる高齢者施設での血液中の酸素飽和度を知るためのパルスオキシメータの利用が、重症化の防止に役立つことを書いている。別の記事では、感染陽性に出た人は無症状であっても2週間は血液中の酸素飽和度を測定するべきだと訴えている。6月19日には米国国立生物工学情報センターNCBIに、マレーシア大学のJason Teo教授の「Early Detection of Silent Hypoxia in Covid-19 Pneumonia Using Smartphone Pulse Oximetry(スマートフォンのパルス酸素濃度計を使用したCovid-19肺炎におけるサイレント低酸素の早期検出) 」なる論文が掲載された。スマートフォンのパルス酸素濃度計は、一般に正常とされる95~100%の酸素飽和度を概ね正常に表示するとして、呼吸苦のないサイレントな低酸素血症の人を早期に発見するのに有効であるとの内容である。日本国内では、厚生労働省によりPCR検査数が制限されているだけに、尚更、せめてパルスオキシメータを活用して、無症状であっても陽性であれば、2週間は血液中の酸素飽和度を測るべきである。それがまさしく重症化を防止し、医療崩壊を防ぐ。低酸素状態を早期に発見し、早期に酸素を使えば、人工呼吸器を使わないで済む。PCR検査が容易に受けられない日本ではせめて市販の安いパルスオキシメータを使ってでも自己管理するしかないだろう。酸素飽和度が低下すれば、100%PCR検査の対象にもなるはずだ。
木槿