釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

「とてつもない特権」を手放す米国

2018-10-16 19:18:22 | 経済
秋が次第に深まって来て、釜石では1日の気温差が10度にもなって、夜はセーターを着るようになった。自然は毎年変わらないかのように一見同じような風景を見せてくれる。自然だけではなく、人々の暮らしも変わらないように過ぎている。東北へ初めて来て、東北の自然に感動し、そんな自然の東北の歴史にも興味をそそられた。都会の喧騒から解放された環境にいると、かえって世の中の動きが見やすくなる。次第に世の中の動きにも心を動かされるようになった。特に近年は日本や世界の経済にとても特異な状態が続いており、世界にパラダイムシフトが起ころうとしていることが見えて来た。今後5〜10年のうちに世界は大きく変化するだろう。歴史を振り返れば、全ての超大国は必ず凋落し、新たな超大国に変わっている。現代の超大国、米国もやはり例外ではない。米国は世界一の経済大国であると当時に、世界一の軍事大国でもあるが、所詮はその軍事力も経済力に支えられたものであり、経済大国であるが故の軍事力である。そして、経済力の柱は自国通貨が基軸通貨であることだ。基軸通貨とは簡単に言えば、世界通貨である。世界のどこへ行ってもドルが使える。物を買ってドルを差し出して、拒否されることはないだろう。そのドルはただ印刷しただけの紙切れでしかないのだが。ただの紙切れでしかないのは無論ドルだけではない。しかし、全ての通貨が紙切れであっても世界で通用するのは基軸通貨ドルだけである。何故、ドルだけなのか?それは主要国がドルを基軸通貨として、つまり世界通貨として認めているからだ。ドルを信用して来たからだ。では、そのドルへの信用が揺らぐとどうなるか?1920年代に、それまでの超大国、大英帝国の通貨ポンドが信用を失い、ポンドに替わってドルが信用を集めるようになり、1944年に国際通貨基金IMFが設立され、同じ年のブレトン・ウッズ会議で、ドルが基軸通貨となって以来、米国は「とてつもない特権」を享受して来た。「とてつもない特権」という言葉は、米国の経済学者カリフォルニア大学バリー・アイケングリーンBarry J. Eichengreen教授の著書『とてつもない特権 君臨する基軸通貨ドルの不安』で使われた言葉だ。ドルは基軸通貨である特権で、海外から安い金利で制限なく借金が可能であった。財政赤字21兆ドルも、対外的な経常収支赤字32兆ドルも全て海外からの容易な借金で拡大して来た。これだけの借金を抱えても、これまではドルへの信用が維持されて来た。しかし今、そのドルへの信用が大きく揺らぐ事態が密かに進行して来ている。米国の現在の大統領は、本来、不動産屋であり、大統領になる前には、日系4世の投資家ロバート・キヨサキと何冊かの共著を出し、ドルの価値の低下を主張していた。大統領になると、今貿易戦争を仕掛け、同盟国にも強引な姿勢を取っている。もともと欧州では英国は別として、フランスやドイツは必ずしも米国を信頼仕切っていなかった。欧州は1968年の関税同盟から始まって、ドルとは距離を置いて、ユーロと言う欧州の共通通貨を設けた。新興国としての大国、中国も自国通貨、人民元の国際化を狙っている。しかし、これまではいずれの通貨もまだ国際化には距離があった。ところが、米国大統領が貿易戦争を仕掛けたり、イラン核合意から離脱し、イランと取引する欧州企業への制裁を打ち出したために、欧州はイランとの取引で独自の決済システムを構築すると先月決めた。中国も米国への輸出に関税をかけられることを避けるために、ユーラシア大陸内での取引を加速させる方向にシフトせざるを得なくなった。つまり米国大統領は、自ら他国のドル離れを促進しているのだ。さらに米国内では2008年以上に債務で膨らんだバブルがいずれ近いうちに弾ける。投資銀行のJPモルガンでさえ、「連邦準備理事会(FRB)が2019年までに四半期ごとに金利を上昇させるとすれば、実質金利は2019年中頃にレッド・ゾーンに入るだろう。」と予想していることを14日のBLOOMBERGが伝えている。金利上昇は債務で膨らんだ株式だけでなく、債券にも打撃を与え、世界の債券が1週間で100兆円の価値を失っている。これほどの価値の低下は40数年間なかったことだ。世界恐慌をはじめ過去の金融危機は金利上昇で引き起こされて来た。次のバブル崩壊は歴史上かってない規模であるため、米国経済は極めて厳しい状況に追い込まれ、世界にもそれは波及する。これによりドルの凋落は決定的になるだろう。大統領は自国中央銀行の金利引き上げを先週水曜日に「Crazy」と批判したが、これは来月の中間選挙を勝ち抜くために、やがて来る金融危機の責任を中央銀行のせいにするためである。別に中央銀行に圧力をかけているわけではない。対米従属一辺倒の日本や日本の円は国際的には問題外だ。
アキアカネ

ミンスキー・モーメントは近い?

2018-10-15 19:18:05 | 経済
2008年のリーマン・ショックは100年に一度と言われる金融危機であった。放置すれば間違いなく世界恐慌に発展していた。米国だけでなく、欧州や日本を含む先進国も危機に瀕していた。米国は巨大金融機関に国費を投じて救済し、中央銀行FRBはゼロ金利と不良債権買い取りを行なって、一般金融機関を通してマネーを世の中に流した。しかし、そのマネーはあくまで貸し出しであり、借金である。欧州や日本も同じく中央銀行が非伝統的金融緩和、異次元の金融緩和を行った。つまり、世界の主要国で中央銀行主導の債務を膨らませることで、リーマン・ショックの痛手を緩和した。これはしかし、問題の先延ばしでしかなかった。カリフォルニア大学バークレー校の教授であったハイマン・フィリップ・ミンスキーHyman Philip Minskyは1950年代に資本主義には投機的バブルによる脆さが内在するとする金融不安定説を唱え、「米国経済に金融崩壊の危険が近づく」と度々訴えた。しかし、彼の主張は当時無視された。2008年に負債が負債を呼ぶ「負債デフレ」で、米国経済が破局的な危機を迎えると、ノーベル経済学賞を受賞した主流派経済学者のポール・クルーグマンPaul Robin Krugmanや当時、サンフランシスコ連邦準備銀行総裁だったジャネット・イエレンJanet Louise Yellenがミンスキーを再評価した。この時から、金融が経済を破局へ追い込む転換点を指して、ミンスキー・モーメントMinsky Momentと称されるようになる。昨年10月、中国の共産党大会で、中国の中央銀行、人民銀行総裁周小川が「繁栄の時期に示す過度の楽観性により、矛盾の蓄積が作り出され、特定の時が到来するならば、いわゆるミンスキー・モーメントが生じることだろう。」と警告を発した。中国もリーマン・ショックのあおりを受けて、やはり人民銀行は金融緩和を行っており、企業には巨大な債務が積み上がっている。米国では現在、経済は好調だとされている。しかし、その実態は積み上がった債務で支えられた金融バブルであり、しかもその債務はリーマン・ショック直前よりさらに膨らんでしまっている。ゼロ金利下で、本来は倒産するべき企業まで生き長らえて来た。いわゆるゾンビ企業が増産されている。以前も触れた英国キングストン大学 スティーヴ・キーン教授の近著『次なる金融危機Can we avoid another financial crisis?(次の金融危機を避けられるか?) 』では債務が膨れ上がった企業や日本、米国、英国、デンマーク、アイルランド、ポルトガル、スペイン、中国のような国はそれぞれゾンビ企業、ゾンビ国であり、破綻を避けられないとする。いまだに続く超低金利で生き長らえているだけだ。債務は金利上昇で破綻する。実態経済で十分な収入が得られれば金利負担に耐えられるが、その実態経済は芳しくない。実質賃金の低迷が何よりそれを示している。米国中央銀行が短期金利を上げて来ている中で、長期・超長期米国債の金利も3%を超えてしまった。国債の金利上昇は、国債の買い手が少なくなっていることを表す。米国債の一番の買い手であった中国が、買い控え始めている。世界からドルが米国に引き上げられているため、世界はなお米国国債を買い取るドルが不足する。貿易戦争やロシアへの経済制裁も国債の買い手を少なくさせている。さらに大統領の減税が追い打ちをかけるように国債発行を増やさせてもいる。買い手が減って来ている中で、売られる国債が増加すれば、当然、国債の金利は上昇する。しかし、その金利上昇は米国国内の膨らんだ債務をいずれ破裂させてしまう。ミンスキー・モーメントは目の前かも知れない。冒険投資家のジム・ロジャーズ氏は、アルゼンチン・トルコ・ベネズエラ・インドネシアなどが「終わりの始まり」になり得るとする。次の金融危機は世界恐慌に発展し、ドルは崩壊する可能性が大きい。中央銀行や政府が打てる対策は限られてしまっているからだ。
秋の色付き

類人猿から進化した人類

2018-10-13 19:12:46 | 科学
6500万年前、メキシコのユカタン半島に小惑星が衝突し、恐竜などの大型爬虫類はじめ多くの生物が絶滅した。その1000万年後の5500万年前になり、初期の霊長類が出現する。最古の霊長類の化石は中国で発見されている。さらに1000万年の間に原始霊長類より原猿類と真猿類と分岐する。4500万年前にインド大陸がユーラシア大陸に衝突し、ヒマラヤ山脈が形成される。4000万年前の寒冷化により、高緯度地域で森が消失し、猿はアフリカや南アジアに移動する。3000万年前のアフリカの森の樹上で、類人猿(:オランウータン、ゴリラ、チンパンジー、ボノボ、人の祖先)は猿から分かれた。人は猿よりゴリラにずっと近い。類人猿は食物を弱いものに分配するが、猿は分配しない。人の祖先、初期の猿人は700万年前にアフリカの森の樹上から地上に降りて、二足歩行をするようになる。しかし、その頃はまだ危険を察知すると樹上に逃げることを繰り返していた。400万年前の猿人になると、森と草原を行き来するようになる。200万年前の原人になると脳が大きくなり、石器を使い、家族を構成し、アジアに進出する(北京原人・ジャワ原人)。70万年前のアフリカでは旧人が誕生し、50万年前にはユーラシア大陸に進出して行く。ネアンデルタール人もその一つだ。30万年から20万年前になると新人、ホモ・サピエンスがアフリカに誕生する。数万年前からアフリカを出て、世界に広がり、ユーラシア大陸では、旧人のネアンデルタール人とも交配があったことが明らかになっている。しかし、3万年前頃より、そのネアンデルタール人は絶滅し、ホモ・サピエンスだけが地上に残された。草原での生活をするようになった猿人は、明らかに強い猛獣たちと戦わなければならなかった。武器を持ち、チームで行動することで、猛獣に対抗し、危険な環境で子孫を残すために多産性に進化して行く。現存する霊長類のほとんどと異なり、人類だけが白目を持つようになる。他の類人猿などは白目を持たない。人類の白目に当たる部分は茶色の色素がある。類人猿たちは強敵に遭遇した時に、目の動きを敵に悟られたくない。白目部分があると目の動きが簡単に相手に悟られてしまう。しかし、人類は逆にチームで動く必要があるため、目の動きにより他者とのコミュニケーションが図れる。また、類人猿より目の輪郭が横長になることで、草原での視野を広く取ることが可能となった。類人猿たちはほぼ円形である。類人猿の集団のサイズと脳の大脳皮質の占める割合が相関しており、ゴリラは10〜15、狩猟採集民は100~150と言われる。現代人も従って、100〜150人くらいの範囲での交流が適当のようだ。
赤詰草に止まったツマグロヒョウモン(褄黒豹紋)

財政破綻の引き金

2018-10-12 19:18:04 | 経済
メデイアは現在の日本の財政の異常さをほとんど報じることがない。持続不可能な状況に追い込まれているのにだ。政治家は自分の任期中は、何としても財政破綻のようなことは避けようと、延命策を図る。日本では実質的な財施破綻が過去に二度あった。明治後半と太平洋戦争敗戦直後である。太平洋戦争中は政府が発行した国債を日本銀行が直接買い取る異常事態であった。戦後、日本銀行が直接国債を買い取ることは法律で禁じられた。そのため、現在は一旦は市中の金融機関が買い取った国債を日本銀行が買い取ると言う迂回を行なって買い取っている。財務省が発表した平成30年度の国債発行残高は883兆円となっている。9月30日現在の日本銀行営業毎旬報告によれば、日本銀行が保有する国債は462兆円である。政府が発行した国債の52%をも日本銀行が買い取っている。本来、平常であれば、決してあり得ないことである。アベノミックスによる異次元の金融緩和の名目で、デフレからの脱却を意図するものとされたが、5年以上経って、何も効果を得られていなくとも日本銀行が国債を買い取り続けているのは、政府債務を助けて、財政破綻を先延ばしするためでしかない。しかし、この日本の政府財政の破綻は、米国が引き金を引く可能性もある。米国は1971年に金本位制から離脱して、裏付けなくドルを印刷し、基軸通貨であることを利用して、物やサービスの輸入にドルによる支払いを行なって来た。基軸通貨であるドルは、従って、国内だけでなく、諸外国にも多く流れた。諸外国はそのドルを使って、米国に投資を行ったり、米国の国債を買ったりした。このため、米国には対外債務が増大した。対外債務を払い切れなくなって、1985年、G5に対して、ドルの2分の1の切り下げを行なった。いわゆるプラザ合意だ。この時、日本は米国に持つ資産の半分を失った。この当時、日本は米国に保有する資産も政府の財政赤字も現在より、ずっと少なく、それ故に、数年後にはバブル状態にまで回復可能であった。国際通貨基金IMFの統計によれば、1985年の日本政府の債務残高は232兆円であった。同じIMF統計では2018年には1311兆円にもなっている。当時の6倍近い。ところで、現在の日本の対外資産は2017年末で、1012兆円あり、世界一の債権国だとメディアはこぞって報じた。この対外資産のほとんどは米国である。メディアは世界一の債権国であることを誇るかのように報じた。しかし、過去にドルの切り下げを三度も行なった米国は、今や対外債務を史上最高額まで膨らませている。35兆ドルである。しかも毎年1兆ドルづつ増やしているのだ。1ドル110円としても3850兆円である。米国の政府債務は21兆ドルだ。三度やった切り下げを、四度はやらないと言う保証はどこにもない。プラザ合意と同じく、ドルの2分の1の切り下げを行えば、米国は対外債務を半分に減らせる。その時、日本は500兆円の資産を失う。1985年のプラザ合意当時とは異なり、資産500兆円の消失は、日本の金融機関に大きなダメージを与える。もはや日本の金融機関には、日本の国債を買い取る余裕がなくなる。この金融機関にはゆうちょは無論、年金積立金管理運用独立法人も含まれる。現在、日本銀行は一般の金融機関から国債を買い取っているが、ドルが切り下げられた時には、一般金融機関からは国債を買い取ることが出来なくる。法律を変えて、直接政府から購入する以外にはない。しかし、これは明らかに日本の国債、通貨円に対する信用を失くす。円は暴落し、急激なインフレとなり、実質的に政府は財政破綻に追い込まれるだろう。いくら延命を図ろうとも、持続不可能な政府債務は、国内外に破綻の引き金が隠れている。
秋明菊

日米株式の急落

2018-10-11 19:11:49 | 経済
米国のNYダウ、NASDAQ、S&P500などの主要株式市場が急落した。これに合わせて日本の株も下落している。ただ米国の株式下落は3~4%程度であり、20%の暴落には程遠い。貿易戦争の拡大や金利上昇への不安が心理的に株式の売りを招いたのだろう。ドルも同時に下がった。それでも、まだまだ米国の株式はバブル状態であり、主要20都市の住宅価格もリーマン・ショック直前の2006年の最高価格を上回っている。1980年代に米国の製造業は衰退したため、リーマン・ショック後に米国で行われた「非伝統的」金融緩和は製造業の設備投資ではなく、資産価格を押し上げる形で、マネーが流れた。中央銀行FRBは市中金融機関を通して企業や個人へ超低金利の貸し出しを促進させた。この企業や個人の借金は不動産や株式などに向かった。昨日、米国の株式が急落したとは言え、まだまだ高値であり、バブル状態は継続している。ところで、最近は、米国の景気について一貫して強気で「永遠のブル(牛の角が上に振り上げられる様から景気上昇を表す)」とまで言われる米国のペンシルベニア大学ジェレミー・シーゲルJeremy Siegel教授までが、金利上昇と貿易摩擦で、来年度は企業収益の減少を見るようになると判断し始めている。金融緩和とはあくまで金融機関を通した貸し出しを容易にすることであり、それは借金である。日本では「異次元」の金融緩和が行われたが、企業も個人も将来に不安があるため、貸し出しは増えず、日本銀行の当座預金に滞留されている。そんな日本とは異なり、米国では借金をしてでも消費する文化があるためか、個人は住宅ローンや自動車ローン、学生ローンを膨らませ、企業は社債を発行して、借り入れたその資金を自社株に投じた。2018年第一4半期の米国の家計債務は13.3兆ドルに上り、企業は6.3兆ドルの債務を抱えている。製造業が衰退した米国では、金融経済が主軸であり、その金融経済は現在借金を通して支えられている。借金にとって、金利上昇が致命傷となる。中央銀行FRBが、その借金にとっての大敵である金利上昇を進めている。大統領はそんなFRBに対して昨日「Crazy 」と言う言葉を使ってまで批判した。大統領は好景気だとされる中で、財源のない減税を行い、景気を押し上げさせた。せっかく自分が押し上げた景気を中央銀行の金利引き上げが冷やしてしまう。11月の中間選挙を乗り切りたい大統領には、そんなFRBの姿勢を容認出来ないようだ。日本も米国も景気の指標が株式になっている。株式さえ上がっていれば、景気がいいとされる。しかし、米国の株式は社債を通した借金が支え、日本の株式は日本銀行のETFを通じた株式購入が支えている。実体経済とは無縁のところで株価が上がっているだけである。しかし、たとえ実体経済とは無縁に株価が上がっているとしても、そんな株式が暴落すると、実体経済には直接大きな影響を及ぼす。世の中のマネーが一気に失われるからだ。リーマン・ショック後、米国の株式は3倍に膨れ上がっている。日本はそこまでの上り方ではないが、やはり近年としては上昇している。日本の株式が暴落すると日本銀行が損失を抱える。日本銀行は中央銀行ではあるが、資本金1億円、準備金3兆2000億円ほどの銀行でしかなく、資本金1兆7000億円の三菱UFJ銀行よりも小さい銀行である。23兆円を株式に投じている日本銀行にとって、株式の暴落は日本銀行の準備金など吹き飛ばしてしまう可能性を持つ。12月には米国FRBはさらに金利を上げると見込まれている。米国の長期国債の金利もすでに3%を超えた。国債の金利が上がれば、株式に投じられた資金が国債の金利を求めて、株式から国債に流れる可能性が出て来る。これも株式の下落のきっかけとなる。
大文字草

低カロリーでも人工甘味料は人体を害する

2018-10-10 15:14:32 | 科学
現在、スーパーやコンビニなどで売られている食品の多くに食品添加物が使われている。添加物が使われていない食品を探すのが難しいほどだ。日本は他国に比べてその食品添加物の種類が桁違いに多い。主要先進国では200〜300種であるが、日本は1000を超える。長寿国であっても病気は増え続けている原因の一つだと思っている。そんな添加物の中の、いわゆる低カロリー甘味料が、人体を害していると言う論文が発表された。日本では低カロリー甘味料は缶酎ハイにまで入っている。オーストラリアのアデレード大学医学部と同大学健康栄養科学センターの共同研究である。腸内細菌は、人体に寄生する事で、人体を健康に保つ働きをしている。免疫力の6割を腸が担っており、第二の脳と言われるほど神経が分布してもいる。これらを機能させることに腸内細菌は重要な働きをしている。ところが、低カロリー甘味料は腸内細菌の一つであるブチリビブリオ菌を減少させることが分かった。しかも、低カロリー甘味料を2週間服用しただけで、腸内環境を破壊するまでになっている。人が食事をすると、小腸からGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)と言うホルモンが分泌され、それがインシュリンの分泌を促し、血糖値を下げてくれている。ブチリビブリオButyrivibrio菌はこのGLP-1分泌を助けてくれている。GLP-1には胃から小腸に食物が送られるのを遅らせ、血糖値を上がりにくくさせるは働きや、食欲を抑える働きもある。これまでの研究で、すでに低カロリー甘味料入りのドリンク(ダイエットドリンクなど)を定期的に、あるいは多量に飲用している場合は、2型糖尿病の発症リスクが高くなることが明らかにされていたが、そのメカニズムは分かっていなかった。研究グループは、平均的な体重を有する平均年齢 30歳の 29人の糖尿病ではない健康な体の人たちに、低カロリー甘味料を添加した食事を2週間摂ってもらった。15人は無作為にプラセボを摂取し、14人は 1日当たり 1.5リットルの低カロリー甘味料入りの飲料を飲むことに相当する低カロリー甘味料の組み合わせ(スクラロース 92mg および アセスルファム 52mg )を摂取した。その結果、低カロリー甘味料を摂取したグループでは、良好な健康と関連する細菌であるユーバクテリウム‐シリンドロイデスEubacterium cylindroides が有意に減少し、食物の発酵を助ける腸内の有益な細菌種の個体群も減少し、逆に、11種の日和見菌(体が弱った時に腸内で悪い働きをする細菌)は増加していた。そして、前記のようにブチリビブリオ細菌集団の減少が認められたのだ。また、ショ糖およびグルコースのような単糖の代謝に関与する微生物遺伝子の量にまで変化が認められた。論文では、「健康な非糖尿病被験者たちにおいて、2週間の低カロリー甘味料の補給は、消化管の細菌を破壊し、健常な人(の腸内)には通常存在しない(悪い)細菌類を増加させるのに十分であった」と述べられている。昨年発表された米国ボストン大学の研究では、人工甘味料を摂取している人は、脳卒中の発症率が2.96倍、アルツハイマー病になる率が2.89倍になり、砂糖も人工甘味料も含めて甘味料を多く摂取している人たちには「脳の老化の加速」が認められ、1日に1種類以上のダイエット飲料を飲む人たちは脳の容量が小さくなっていた。公益財団法人日本糖尿病財団や糖尿病治療研究会などが運営する「糖尿病リソースガイド」には、今尚、「低カロリーやノンカロリーの甘味料は、急激な血糖上昇につながりやすい砂糖の使用量を抑える目的で広く使われています。最近ではさまざまなタイプの甘味料が出回っており、これらを有効に使うことにより食事療法をより容易に行うことができるようになりました。」とある。
ススキ

米国金利の上昇

2018-10-09 19:15:09 | 経済
米国大統領は製造業の復活を訴え、労働者の支持を得て、選挙に勝った。そのため、自国製造業を復活させる目的で、貿易戦争を仕掛けた。外国からの輸入品に関税をかけることで、安い輸入品も高価になり、自国生産品に競争力を持たせ、製造業を復活させる。製造業が復活すれば、労働者も職を得られ、安定した収入が入るようになる、と言うわけだ。しかし、関税は都合のいいことばかりでなく、輸入物価を押し上げる。つまりインフレになる。インフレは実質賃金を下げる。また、貿易戦争を仕掛けられた相手国も対抗処置を取るため、米国の輸出量も減る。実際に米国の農産物にその影響が出て来ている。こうした貿易戦争の中で、米国の中央銀行は金利を上げている。米国の中央銀行の使命は物価の安定と雇用の安定とされる。中央銀行は、物価が上昇して来ており、失業率も最低水準にあることから、賃金が上昇し、物価上昇が進むと判断して、金利を上げると説明している。これはあくまで表向きの説明であり、実際は、いずれ訪れる傾向後退で、金利を下げなければならず、そのための金利引き下げ余地を今のうちに作っておきたいと言うのが本音である。しかし、金利上昇により、米国から新興国に投じられられた資金が、その上がった金利を求めて、米国に引き揚げられ、新興国は資金が不足し、株式も通貨も下がってしまった。欧州の銀行は、新興国にドル建てで融資をしており、これもドル高で新興国に負担となっている。景気後退の波は、世界では先ず体力の弱い新興国に発生し、次いで、米国の中小企業の株式に現れる。それが現在、米国で発生している。大企業の株式はまだ高値圏にあるが、中小企業の株式はすでに下落して来ている。一般に短期金利より長期金利の方が高い。しかし、景気後退の前には、それがしばしば逆転した。つまり短期金利が長期金利よりも高くなった。過去のデータではこの逆転が起きて、平均9.7カ月で主要な株式がピークに達し、その5ヶ月後に景気後退が始まっていると言う。2018年12月に金利の逆転が発生し、2019年9月に主要株式の頂点となり、2020年2月に景気後退が始まると予想するビジネス界のエコノミストの予想が出ている。景気後退の規模は債務に比例する。その債務は現在、史上最高である。従って、次の景気後退はこれまで見られなかった規模の景気後退となる。特に米国の債務は絶対額であまりにも巨額である。政府債務は21兆ドルに達し、企業債務は6.3兆ドル、家計債務は13.3兆ドルであり、他にも米国の対外債務が38兆ドルもある。米国の国家の債務である国債の金利が上昇している。これまで米国との貿易で得たドルを諸外国は米国債の購入に投じた。しかし、貿易戦争はその得られるドルを減少させるため、諸外国は米国の国債購入を減らさざるを得ない。国債購入が減れば、当然国債の金利は上昇する。米国は自ら仕掛けた貿易戦争で、国債の金利を上昇させている。その金利上昇がいずれ株式の大暴落の引き金となることを過去の金融危機が教えている。世界経済を牽引する米国経済が後退すれば、世界経済も後退し、その規模は歴史上かってない規模となる。
秋の空

深刻な遺伝子変化

2018-10-06 19:15:28 | 科学
文部科学省が昨年10月26日に公表した「いじめ」の認知件数は統計を始めた1985年以来、最高の32万3808件だった。途中二度の「いじめ」定義の変更があるため、多少の数値の違いがあるが、1986年に件数の低下が見られた後、低下が続いていたが、2011年から急増し始めていた。同省によれば、「いじめ」の90%は認知後に改称しているとする。後を絶たない「いじめ」が90%も解消していると言うのは、容易には納得出来ないところだが。自殺に追い込まれる子供もいることを思うと、考えさせられる。「いじめ」はいつの時代にもあった。しかし、それが自殺に繋がったのは近年だ。また、児童相談所の児童虐待相談件数も増え続け、昨年は133778件となっている。虐待により、ほぼ毎年50人前後の子供が亡くなっている。小中高生の全体の自殺は毎年300人前後だ。少子高齢化の進む日本で、子供にはとても生きずらい環境になっている。いじめも虐待も子供を死に追いやっているが、生きていても子供の受ける精神的な影響は、想像以上に大きいことが科学的に明らかになって来ている。今月3日のAFP通信で、「虐待を受けた子どもは、そのトラウマ(心の傷)を示す物質的特徴が細胞の中に刻み込まれている可能性がある」と言う研究結果が報じられている。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学University of British Columbiaや米国ハーバード大学などの共同研究である。児童虐待の被害者を含む成人男性34人の精子細胞を詳しく調べた結果、「精神的、身体的、性的な虐待を受けたことのある男性のDNAの12の領域に、トラウマによる影響の痕跡がしっかりと残されていることが分かった。」と言うもので、DNAのメチル化と言うDNAの変化が認められた。遺伝子は以前には生後変化しないと考えられていたが、現在では「環境要因や個人の人生経験によって活性化・非活性化される遺伝子も一部に存在する」ことが明らかとなっている。昨年、米国エモリー大学医学部Emory University School of Medicineの研究者により、ストレスがやはりDNAのメチル化を引き起こすことが明らかにされている。そして、このDNAのメチル化は癌やうつ病を含むさまざまな心身の病気の原因になっていると言う。DNAの変化はしかも子孫にも引き継がれてしまう。様々なストレスが免疫力を低下させ、発癌に結びつくことはすでに知られていたが、遺伝子まで変えてしまうのだ。少子化が進む日本で、いじめや虐待が増加している事実に真摯に向き合わなければ、将来日本人としての存亡にさえ深刻な問題を投げかけるかも知れない。心のトラウマも無論だが、遺伝子の変化は個人を超えて、日本社会の問題となる。いつも感じるが、こうした研究が何故日本で出てこないのだろうか。生物としての人間の進化はとても長い時間を要するが、こうした子供のトラウマはとても短時間に遺伝子を変えていた。それだけ、心の傷が深いと言えるのだろう。病は気からと言われるが、単なる病ではなく、遺伝子まで変化することに脅威を覚える。現代はストレス社会と言われて久しい。そのストレス社会に身を置く成人にもDNAのメチル化が起きているのではないだろうか。
都忘れ

祭りの後

2018-10-05 19:18:06 | 経済
今年7月21日の毎日新聞は、「世界債務  過去最高2.8京円に 量的金融緩和が原因」と題する記事を載せた。同様の記事は日本経済新聞でも小さく載せられた。世界の負債(政府債務+企業債務+世帯債務)が「国際金融協会(IIF)の調べによると、2018年1~3月期の残高は前年比約11%増え、過去最高の247兆2000億ドル(約2京7800兆円)になった。」同紙は続けて、「ドル建てが多く、米国の利上げやドル高が引き金になり、返済に困る新興国が出て市場が混乱する恐れがある。」と書いているが、利上げ=金利上昇で困るのは、何も新興国だけではない。現在、新興国経済が不安定になった原因は、確かに米国の利上げであり、米国の金利上昇で、新興国に投じられていた米国の投資資金が、上昇した金利を求めて、新興国から引き上げられたためと、米国からの新興国の借金が金利上昇分だけ増えているためである。金利上昇は、世界の全ての債務に負担となる。特に米国は政府も企業も、個人も大きな負債を抱えている。失業率が低く、企業収益が伸びているため、米国経済は好調だと報じられている。しかし、勤労者の実質賃金はほとんど伸びておらず、個人は衣食住の基本的な生活費を上回る課税額を負担させられている。(米国では年金保険料は税となっている。)過去最高額を更新し続けている米国の株式も、社債と言う企業の借金による自社株買いが大きく支えており、さらには海外からの米国株への投資も支えとなっている。日本からも年金保険料として貯まった162兆円の25%が主に米国の株式に投じられている。ゆうちょや他の金融機関も同じく米国の株や債券に投じられている。国のあらゆる経済主体が借金をしていると言う意味では、米国が世界で最も顕著である。米国の新債券王と称される債券投資のプロであるジェフリー・ガンドラックJeffrey Gundlach氏は、最近、「30年債利回りが引けで2日連続して3.25%を超えれば、利回り上昇が近いとの兆しになる。」と繰り返し行っていた。その米国の30年もの国債の金利がこの3日、4日続けて3.25%を超え、3.35%まで上がっている。超低金利が続いた中で増加し続けた負債、借金の多くは変動金利であり、金利上昇は金利負担を増大させる。1975年以降のデータでは、金融危機や経済後退は必ず金利上昇が引き金となっている。米国の株式に引きずられて日本の株式も高値を更新したが、株式の暴落時には共倒れする。2008年のリーマン・ショック後、米国の株式は3倍に膨らんだ。リーマン・ショックでは株式は最後には86%の暴落となった。社債と言う借金で支えられた株式は、金利上昇で金利負担のために企業が自社の株式を売らねばならない時期が必ず訪れる。歴史上最高値を更新し続けた米国の株式の暴落は歴史上初めての巨大な暴落となる。この時、日本の株式も当然暴落する。日本の年金162兆円のうち、ほぼ25%が米国の株式、同じく25%が日本の株式に投じられている。つまり162兆円の半分が株式に投じられており、80兆円になる。この株式がリーマンショックと同じく86%暴落すれば、年金は一瞬にして68.8兆円を失う。日本政府にはこれを補填する余力はない。株式はリスクのある投資であるため、長い間年金保険料は安全資産とされる国債に主に投じられて来た。しかし、現政権は無理やりそれを経済の好調を装うために、株式に投じるように変更させた。ゆうちょもそのために動員された。過去の歴史は、積み上がった負債で得られた経済繁栄は必ず崩壊することを教える。現在の世界の負債は、世界のGDPの3倍にもなっている。問題は遠からずやって来る金融崩壊後、政府や中央銀行に打つ手が残されていないことだ。財政出動も金融緩和もこれまで目一杯に行って来たからだ。特に日本では経済が悪化したからと言って、もはやこれ以上に下げようがないほどに金利を下げてしまっている。財政出動も、すでに持続不可能なほどの政府債務になってしまっており、限界がある。無理に財政出動すれば、一気に国債の信用が落ち、国債の暴落を招くだろう。すでに国債は一般金融機関が手を出そうとしていない。2008年の金融危機を予想した投資会社Bridgewater Associatesのレイ・ダリオRay Dalio氏は、次の金融危機は米国債と米ドルの下落となり、ドルは簡単に30%下げ得ると言う。ドルの20%の低下で、日本の対外資産1012兆円は大きく傷を受け、株式の暴落と合わせてダブルパンチを受け、まさに年金は破壊される。
金利上昇と金融危機・景気後退

紫式部

変わりゆく世界

2018-10-04 19:13:28 | 社会
かって、現在の職業に就いた頃、職場の同僚の中にはポケコンと呼ばれる初期の携帯パソコンを使っている人がいた。簡単な統計処理が出来た。それから間も無く、親友の一人がマッキントッシュMacintosh、いわゆるマックMacのパソコンを使い始めた。その頃は、しかしマックは高価であった。何十万円もした。そのうち、その親友はこちらにもマックを使うことを勧めて来た。あまりパソコンには興味がなかったので、しばらくはそのままパソコンには触れることがなかった。ウィンドウズWindows'95が出た頃、子供の関係で仕方なくウィンドウズを購入した。しかし、使ってみると、何度も不具合に遭遇し、難渋した。親友の勧めを思い出し、マックを購入して見た。ウィンドウズとは異なり、とても使いやすく、多少の不具合が出ても、自分で処理が可能だった。そんなマックも数年経つと倒産の可能性が噂された。ウィンドウズを出していたマイクロソフトが企業に食い込み、急成長していた。何とかマックを立て直すために、追い出されていた創業者の一人であるスティーブ・ジョブスがマックを作るアップル社に呼び戻された。彼は次々に斬新なアイデアを具体化して、盛り返し、iPhoneと言うスマートフォンを創り出した。今やそのアップルは時価総額1兆ドルを超える世界一の規模の会社となった。日本最大のトヨタの5倍の規模だ。台湾証券取引所の全上場銘柄の時価総額にほぼ匹敵する。現在の米国の、つまりは世界のトップ企業はアップルを初めとする情報に価値をおいた企業群である。GAFAと呼ばれる。Google、Apple、Facebook、Amazonである。情報検索では多くの人がGoogleを使い、スマートフォンではiPhoneが使われ、知人間でFacebookを通して情報を共有し、ネット購入では多くがAmazonを利用している。しかし、これらの企業は利用者の情報をしっかり把握し、それをまた企業戦略に活用している。我々は気付かないうちに情報を掴まれている。米国のスタンフォード大学Stanford Universityの集団行動心理学が専門のマイケル・コジンスキーMichal Kosinski准教授の研究によると、Facebookの利用者は20億人いるが、その多くがプライベートを晒して嬉々としている。しかし、「いいね!」ボタンを68回押しただけで95%の確率でその人の国籍を当てられ、さらに90%の確率でその人の性的志向まで当てられるのだ言う。150回押すとAI(人工知能)は配偶者よりその本人を理解することが出來、300回に達すると本人も気が付いていないような性格やどのような嗜好かまでもが当てられる。実生活には何の影響もないままに、自分の情報が集められており、その情報を使って、瞬時にAIが分析結果を出し、企業はその膨大な情報を得ている。米国ではAmazonが、レジを通らずそのまま商品をもって出てくれば課金されるレジ無しコンビニ、アマゾンゴーを展開している。全米労働者の2.6%とも言われる340万人のレジ係は、いずれ職を失うと考えられている。中国でも主要都市ではすでにコンビニは無人化されている。コード化された個人の買い物の嗜好はすべてAmazonが掴んでいる。国家以上に個人情報を把握しているのだ。もはやこれらの企業は単なるIT企業の枠を超え、世界中の個人を把握している。今後、AIは一層急速にその能力を高めて行く。GPSを搭載しているiPhoneは個人の行動まで掴んでいる。知らないうちに世界は、これまでの世界とは大きく変容してしまっているのだ。
白い時鳥