釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

南海トラフ巨大地震の前兆?

2018-06-19 19:15:41 | 科学
大阪では昨日に続いて、今日も小さいが余震が何度も続いている。昨日、政府の地震調査委員会は臨時会合を開き、今回の地震に関する評価をまとめて公表した。大阪には3つの断層帯が走るが、委員会ではどの断層によるものか特定出来なかったため、「周辺の活断層帯と関連した活動である可能性がある」との表現に止めている。その上で、委員長の平田直東京大学地震研究所教授は「この2~3日の間は、さらに大きな地震が起こる可能性に警戒してほしい」と述べている。実際、2011年の東北地方太平洋沖地震でも3月9日のM7.3の地震に続いて、翌日10日に弱まったM6.4の地震があったために、最初のM7.3の地震が本震だと思われていた。ところがさらに翌日にM9.0の巨大地震が発生した。2016年の熊本地震でも4月14日にM6.5の地震が発生し、15日にはM6.4の地震があり、14日の地震が本震と思われたが、16日にM7.3の地震が発生し、これが本震であった。2015年2月6日、徳島県南部でM5.0の地震があった際、武蔵野学院大学島村英紀特任教授は、西日本での直下型地震は「南海トラフ地震の先駆け」となる可能性があるとして警告されている。1925年に兵庫県でM6.3の北但馬地震があり、1927年にはM7.3の阪神淡路大震災と同じ規模の北丹後地震が発生した。その後、1943年にM7.2の鳥取地震が起きて、翌年の1944年にM7.9の東南海地震が、1946年にはM8.0の南海地震が発生している。今年3月6日から爆発的噴火が断続的に発生した九州の霧島連山の新燃岳の噴火の際に、立命館大環太平洋文明研究センターの高橋学教授は、この噴火は「スーパー南海地震」の前兆の一つで、2年以内にその「スーパー南海地震」が発生する可能性もあるとして警告された。「直下型地震、プレート型地震、火山噴火との間に密接な関係があると考えているため、これら3つの現象を引き起こすのは、東北日本の場合、北米プレートとその下にもぐり込む太平洋プレート、西南日本の場合にはユーラシアプレートとその下にもぐり込むフィリピン海プレート4枚のプレートの動きがカギを握っている」とされる。新燃岳の噴火などは、高橋教授が「南海トラフ地震」を四国沖—東海沖地震に範囲を限定せず、フィリピン—台湾—琉球列島—南海—東南海—東海に広がるフィリピン海プレートとユーラシアプレートの接触する範囲全体を視野に入れた広範囲の「スーパー南海地震」と呼ぶ巨大地震の前兆であり、2020年の東京五輪までに起きる可能性が極めて高いと述べておられる。高橋教授はプレートや火山噴火の動きを5つのステージで考えておられる。ステージ1は、相対的に上にあるプレートが、もぐり込むプレートの圧縮で歪み、限界を超えると直下型地震が発生する。1995年の兵庫県南部地震(阪神大震災M7.3)や、2000年の鳥取県西部地震(M7.3)などがこれにあたる。ステージ2は、もぐり込むプレートが相対的に上にあるプレートのマグマだまりを圧縮し、火山が噴火する。今年起きたフィリピンのマヨン山噴火や2011年前後からの阿蘇山、霧島新燃岳、桜島の噴火、2014年の木曽御嶽山噴火などがこれにあたる。これまで、西南日本が位置するユーラシアプレートでは、フィリピン海プレートの影響を受けるだけで、太平洋プレートの影響を受けるとは考えられていなかった。しかし、教授は、フィリピン海プレート自体の動きも太平洋プレートの影響を受けているし、ユーラシアプレートの火山活動にも間接的に関与していると考えておられる。ステージ3aは、相対的に上にあるプレートで歪に耐えかねて、比較的大規模な直下型地震が発生する。2008年の岩手・宮城内陸地震、2016年の熊本地震、鳥取県中部地震などがこれにあたる。ステージ3bは、東日本大震災のように、太平洋プレートに引きずり込まれていた北米プレートが跳ねあがり、巨大地震と津波を生じさせるのがこのステージになる。ステージ4aは、陸側プレートの跳ね上がりにより、プレート間の固着域が少なくなり、海側プレートの沈み込む速度が速くなる、現在の東北日本の状態になる。太平洋プレートの沈み込み速度は震災前の年間10cmから、年間30~40cmに加速しており、太平洋プレートは深さ200~500Kmに到達し、溶けて大量のマグマが生成されている。従って、このステージでは火山噴火が爆発的噴火になると考えられると言う。まだ東日本では巨大な噴火は起きていないが、地下では大量のマグマが溜まっているのだ。ステージ4bは太平洋プレートの沈み込み速度が数倍にも加速したことで、東側に続くプレートが追従できず正断層が生じる「アウターライズ型」地震が起きる。東北日本では、まだそれが起きていないために、もう一度大きな揺れとともに津波が発生する可能性があるとされる。独立行政法人産業技術総合研究所の地震考古学の寒川旭研究員によれば、南海、東南海しか地震が起きない場合と、東海を含めた3つ全部が地震を起こす場合とが交互に繰り返して来たと言う。従って、次には3つが揃って発生することになる。
黄萓

大阪北部の地震

2018-06-18 19:16:44 | 自然
今朝、大阪で地震があったが、家族が震源地に比較的近いところに住んでいるので、すぐに連絡を取った。震度5強で、部屋の中は落ちて来たものや倒れたもので散乱したようだが、幸い怪我はなかった。気象庁はここ1週間は注意が必要だと発表している。日本には4つのプレートが集まり、そのプレート境界域で起きる地震と陸地の活断層で起きる直下型地震の二通りがある。2011年の東北地方太平洋沖地震はプレート境界域で発生した境界型地震と言われる。今回の大阪の地震は活断層で起きた直下型地震である。大阪にもたくさんの活断層が走る。今回の震源地近くには東西に走る有馬-高槻断層帯、南北に走る上町断層帯、生駒断層帯があり、気象庁は今朝の地震は有馬-高槻断層帯で起きた地震と考えているようだ。この断層帯では1596年にM7.5の慶長伏見地震が発生している。東北大学災害科学国際研究所の遠田晋次教授によれば、上町断層帯では8000年間隔で活断層が動いており、この断層帯での最後の地震が起きてから、すでに9000年が経過していると言う。1596年から1615年までの慶長年間にはいくつもの地震が続けて発生している。1596年9月1日にM7.0の慶長伊予地震、3日後にM7.0〜7.8の慶長豊後地震、その翌日に慶長伏見地震、1605年2月3日には南海トラフ地震とも言われる慶長大地震、 1611年9月27日M6.9の会津地震、12月2日には東日本大震災と同様とも言われる慶長三陸地震、そして1614年11月26日には震源地は不明だが、東北の会津から四国の松山に至る日本各地に被害を出した巨大地震が発生している。2018年に入り日本では小さな地震も含めると、毎日何処かで地震が発生している。昨日から1ヶ月前までの間にもM4以上の地震が6回発生している。昨日は群馬県南部でM4.6の地震があり、一昨日は千葉県南部でM4.5の地震があった。地震や火山噴火などによる自然災害は時には社会の経済活動に大きく影響する。そのため、日本でも米国でもこうした地震や噴火の周期性を調べ、得られた結果を経済投資に活かしている人がいる。中でも米国の投資分析家で、CNBC、フォーブス、ウォールストリートジャーナルなどの著名な金融系メディアにも登場するエリック・ハディクEric Hadik氏は、2009年に公表した金融レポートで、2010年から 2011年の地震の集中を予測し、そこには2010年1月のM7.0のハイチ地震、2010年2月のM8.8のチリ地震、2011年3月の東北地方太平洋沖地震が含まれていた。そのハディク氏が今月8日、米国のLinked Inのインタビューを受けている。氏によれば、太陽黒点や太陽嵐、そして気候変動などの自然事象がすべて人間の行動や集団によって支配される市場の研究と分析にとって重要な背景を提供するのだ言う。2009年のレポートでは、7年間のサイクルと 17年間のサイクルを見出しており、特に、7年ごとに地震活動の集中とその威力が急増していて、劇的な地震の事象の多くは、7年の倍数の14年と28年のサイクルが最も重要なものとなっていることを明らかにしている。そして、そのサイクルの、ある段階で火山活動が急激に増加し、火山噴火の最も重要な例は、1991年の3つの大きな火山噴火、フィリピンのピナトゥボ山、米国のハドソン山、日本の雲仙普賢岳である、と述べている。このレポートでは、地震と火山の連鎖は、2018年〜2019年に再び起きると予想している。28年間のサイクルと、40年のサイクル、そして、さらに最長のサイクルである100年と200年のサイクルなどが相乗するため、最も重要なのだと言う。平安や江戸初期の慶長年間では巨大地震や火山噴火がまさに連鎖していた。現在、世界の景気後退が今年の後半から来年にかけて起きる可能性を指摘するエコノミストが増えて来ている。まさに地震や火山噴火の自然事象の連鎖と重なることが不気味だ。
庭の睡蓮

インフレとデフレ

2018-06-16 19:18:51 | 経済
2008年のリーマン・ショックによる金融危機が世界恐慌につながらないよう各国中央銀行は債券などを購入して、通貨量を増やし、超低金利を導入すると言う異例の金融政策を行った。いずれも2%のインフレを目指すとした。インフレとは一般には物価が上がることとされる。物やサービスの値段が上がることだ。物価が上がるのは売る人より買う人が多い場合である。逆に売る人が買う人より多いと物価は下がる。これをデフレと言う。日本では長く「デフレからの脱却」が言われて来た。しかし、デフレは物やサービスの値段が下がることであるから、個人にとってはいいことのはずである。にもかかわらず、何故、政府はデフレからの脱却を政策とするのだろう。インフレを良しとして、デフレを悪とする考えはあくまでも生産者、企業側の立場から見たものだ。消費者である個人はデフレの方がいい。物の値段が安い方がいいのだから。資本主義とはまさに資本を中心に考えた経済制度である。お金がお金をさらに生み出す。1億円の資本を出して、生産することで、新たな利潤と言うマネーが入って来る。つまりお金の量が増える。インフレとはもう一つの意味があり、通貨膨張と言われる。物やサービスが変わらなくとも通貨量が増えれば、インフレになる。つまり、資本である企業経営の立場ではインフレが好ましい。ところが、通貨膨張は実際にはお金の価値を下げている。それまで100円で買えていたものが110円になれば、100円と言うお金の価値は下がる。逆にデフレでは100円で買っていたものが90円になり、10円のお釣りが来る。100円の価値が上がったことになる。個人ではインフレで持っているお金の価値が下がるため、これをインフレ税とも言われるくらいだ。実は、インフレは企業だけでなく、債務を抱える個人や企業、国家にも都合がいい。インフレにより借金の実質的な価値を下げられるからだ。デフレでは借金をする人は負担が大きくなる。経済成長が横ばいで、税収が増えない政府にとって、デフレは政府の借金を実質的にさらに増加させている。バブル崩壊後、経済成長が低下し、デフレに落ち込んでしまった。一番困ったのが、膨大な借金を抱える政府である。以前のような経済成長の見込めない中で、少しでも借金負担を軽減するにはインフレが最も考えやすい。そこで、政府は強引に中央銀行の総裁を入れ替えて、インフレを導くために、通貨量を極端に増やさせた。もちろん、同時に超低金利にして、政府の金利負担をも軽減させようとした。超低金利の方は国債購入を通じて、直接に日本銀行がコントロール出来た。しかし、インフレの方は、残念ながら政府の思惑通りになっていない。通貨量は確かに日本銀行が増やしたが、その増えた通貨は市中に流れず、日本銀行の当座預金と言うダムに貯まり、川下には流れていない。これが流れると、市中に実際に通貨量が増えるため、インフレになる。現在のアルゼンチンやベネズエラなどがこの状態だ。何故、日本銀行の当座預金に貯まってしまったのか。当座預金は市中銀行が日本銀行に預金する口座である。日本銀行は市中銀行などが持っていた国債を積極的に買取り、その代金を市中銀行の当座預金に支払う。しかし、市中銀行ではそのお金を借りてくれる人や企業、儲けの大きい投資などが見つからない。実態経済が決していいわけではないからだ。実態経済がほんとうによければ、人生に2度とないこれほどの超低金利であるから、借り手はたくさんいるはずだ。仕方なく、ごくわずかでも金利の付く当座預金においておくしかないのだ。先で、もしも、何かがきっかけで、ダムが決壊すると、市中に巨額のマネーが流れ出る。そうなると、2%どころではない、ひどいインフレになる。それもあって、米国の中央銀行FRBは購入した債券を売ることで、発行した通貨を回収しようとしている。日本銀行は今はその気配を密かに見せている程度である(ステルステーパリングと呼ばれている)。普通に暮らす人には所得が増えて、物価は下がるのが理想だ。物価は生産コストの低下、つまり生産力の増加でも下げることが出来る。技術開発や競争などは物価を下げて来た。
草原と菖蒲

癌と運動

2018-06-15 19:16:00 | 科学
現在日本では2人に1人が癌になり、3人に1人が癌で亡くなっている。1981年に癌が脳卒中を超えて死因の1位になってからも癌になる人、癌で亡くなる人が増え続けている。癌で亡くなる人の割合は1995年では米国と同程度であったが、以後は日本だけが増加が続いている。欧米では毎年5%ずつ癌による死亡数が減少していると言う統計もある。違いの大きな要因の一つに癌検診がある。検診の受診率が米国の方が高い。もちろん、長寿であることも関係してくる。国立がん研究センターのデータによれば、男女とも60代から年齢とともに急速に癌になる人が増えている。同センターは、科学的根拠に基づいた癌予防に6つの項目を上げている。禁酒、禁煙、食生活、運動、適正体重、感染の防止である。野生動物の調査はなかなか難しいところがあるが、動物研究者は野生動物は癌が少ないと言う。家庭で飼われた動物では癌が発生しやすい。人間の社会でも環境が変わって、初めて癌の発生やそれによる死亡が増加している。岩手の豊かな自然に接すれば接するほど、人が本来の動物としての姿から遠ざかっていると感じる。その中でも顕著なのが運動である。動物は動く物でなければならない。運動の不足はいくつかの病気になりやすくなるが、癌もその一つだ。何十兆個もある人の体の細胞では毎日5000個もの癌細胞が発生すると言われる。遺伝子をコピーして新たな細胞が生まれる時にコピーミスが起きるためだ。コピーミスされた細胞を排除することが免疫細胞の働きの一つで、運動はその免疫力を高めてくれる。また、体内で糖分を下げる働きをするインシュリンは、細胞増殖、成長促進など、さまざまな働きをするIGF(インスリン様成長因子)という物質の働きを活発にし、「サイトカイン」と呼ばれるタンパク質による慢性炎症を引き起こし、癌細胞を発生させる。コピーミスが起きやすくなるのだ。運動によって筋肉などでのインシュリンの効きが良くなるために、不必要なインシュリンの分泌を避けることが出来るようになる。インシュリンの過剰は高血圧や動脈硬化ももたらす。多くの糖尿病もインシュリンの効きが悪くなり、インシュリンが過剰に出る状態になるため、やはり糖尿病の人も癌になる人が多くなる。国立がん研究センターでは、癌予防のための運動として、厚生労働省の基準を推奨している。18歳から64歳の人は、「歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分」と「息がはずみ、汗をかく程度の運動を毎週60分程度」としている。65歳以上の人は、「強度を問わず、身体活動を毎日40分行う」とする。また、年齢を問わず、「現在の運動量を増やし、運動を習慣づける」ことを勧めている。体重は痩せすぎても肥満であっても癌は発生しやすいと言うデータが出ている。男性ではBMIが25~26.9の間が最も少なく、女性では少し幅があり21~25となっている。体重もやはりインシュリンの分泌量と関係して来るのだろう。米国立がん研究所(NCI)、米国立衛生研究所(NIH)、米国がん学会(ACS)などの研究チームは、144万人の19~98歳の男女を11年間調査した。その間に18万6932件の癌が見つかった。解析の結果、ウォーキングなどの活発な運動を週に5日以上行っている人は、ほとんど運動しない人に比べ、癌の発症リスクが20%低下していた。運動は女性では女性ホルモンのエストロジェンを低下させ、男性では男性ホルモンのテストステロンを増加させる。従って、女性の乳癌を減らせるようだが、男性では前立腺癌を増加させる場合があるようだ。運動の継続は活性酸素やフリーラジカルを減らし、細胞の老化も抑えてくれる。
黄菖蒲

米国大統領

2018-06-14 19:14:36 | 社会
12日シンガポールで米朝首脳会談が行われた。両首脳の思惑通りの結果であった。米国大統領は就任以来国内メディアからは常に批判されて来た。支持率も低迷している。そんな中で、今年の秋には中間選挙が行われる。ここで点数稼ぎをしておく必要がある。一方、北朝鮮の労働党委員長は自らの体制の温存を図りたい。そのためには核廃絶を米国の希望通り行ったために斬首作戦を実行されたリビアのカダフィー大佐のようにはなりたくない。この両者の思惑の結果が会談の要旨である。米国は先制攻撃はせず、北朝鮮は段階的に核廃絶に向かう。北朝鮮のその段階的な廃絶の動きに合わせて米国は朝鮮半島をめぐる軍備を考慮しようとするのだろう。米国の金融の中心であるウォール街や軍産複合体はこの結果を好ましく思っていないので、それらに迎合するメディアもやはり結果に批判的だ。北朝鮮は韓国と違い地下資源が豊富である。しかし、その開発には多くの資金を要する。北朝鮮としては体制維持のためにも経済開発資金を集めるため、国外からの投資を呼び込みたい。米国大統領は不動産屋であり、商売人である。北朝鮮の資源開発による米国の利益も当然思惑のうちだろう。北朝鮮のインフラ開発など、直接の利益にはならない「援助」は韓国と日本に任せようとしている。おそらくいずれ米国大統領は日本の首相にその資金を出すように指示するだろう。当然、米国に盲従する日本の首相はそれに従うことになる。米国大統領は昨年末、10年間で1.5兆ドル(170兆円)の減税を決めた。これは米国の財政赤字をさらに膨らませることになる。米国はメディアやエコノミストは米国経済は良好だと言って来ている中での減税である。米国の失業率は現在3.8%とされるが、これは過去50年間でも最も低い水準である。にもかかわらず、米国政府の数字で見ても、現在働いていない就労年齢の米国人は1億200万人もいる。shadowstats.comのエコノミスト、ジョン・ウィリアムズJohn Williams氏によると、正しい統計を使えば失業率は実際には21.5%になるだろうと言う。米国の5年国債の金利は2.83%で、30年国債の金利は3.08%であり、その差は0.25%しかない。リーマン・ショック後の2010年にはその差は3%もあった。景気が拡大している時にはその差は大きくなり、景気が後退している時には差が小さくなり、景気がどん底に落ちるとマイナスにもなる。現在の金利差は2000年のハイテクバブル崩壊前や2008年のリーマン・ショック前の金利差に酷似している。米国大統領は、こうした米国の経済実態を知っている。しかし、大統領である以上は自分の政策運営がうまく行っているとアピールせざるを得ない。大統領になる前には、いずれドルは暴落すると言って来た人だ。他国に「援助」する余裕は米国にはない。日本はそれ以上に余裕はない。しかし、米国がそれを求めれば、「NO、とは言えない」のが日本である。米国大統領は「米国、ファースト」「孤立主義」「保護貿易」を掲げる。以前の民主党政権や共和党政権のような他国への軍事介入そのものを基本的には否定している。ウォール街と軍産複合体の圧力を何とかかわして自分の意志を貫きたいのだろう。暴言を吐くことで、目くらましをやりながら苦闘しているようだ。
朴の葉

崖っぷちに近づく日本銀行と政府

2018-06-13 19:17:22 | 経済
6月10日現在の日本銀行営業毎旬報告によると、国債の保有額は462.2兆円で、昨年の国民総生産GDPが546.5兆円であり、GDPの84.5%にもあたる国債を中央銀行が保有すると言う異常な状態になっている。アベノミックスによる異次元の金融緩和が開始された2013年4月4日前の3月31日現在の日本銀行営業毎旬報告では国債の保有は125.4兆円であった。5年間で3.68倍まで膨れ上がっている。太平洋戦争で政府債務がGDP比で200%(現在は240%)となった時でさえ、日本銀行は政府から買い取った国債をすぐに市中銀行などに売って、国債の保有をGDPの50%以下に抑えていた。現在の短期金利の指標である2年国債の金利(利回り)は-0.14% 、長期金利の指標である10年国債の金利(利回り)は0.04%、さらに超長期の30年国債でも0.72%と言う超低金利の異常さが続いている。2年国債のマイナス金利は金利を政府から国債を買った形の日本銀行側が政府に払うと言うことだ。買う側が金利を払わねばならないような国債は本来であれば買い手が付かず、金利を上げざるを得なくなる。それでも金利が上がらないで済んでいるのは、日本銀行が不利になることを承知で買い取っているからだ。5年に及ぶ超低金利は市中の金融機関の利益を圧迫している。金融機関は金利差で収益を得るが、超低金利は金利差を縮めて、収益を少なくしてしまっている。市中の金融機関を苦しめてでも、中央銀行の国債買い取り、超低金利を続ける理由は何か。表向きはこれまで日本銀行は物価を2%に上げるためとして来た。しかし、5年経っても一向にそれは達成出来ていない。2%の物価目標を掲げて来た日本銀行はその目的を5年経っても実現出来ないため、ついにその目標を掲げることをやめた。それでも異常な国債保有と超低金利は維持し続けている。こうした日本銀行や政府財政の異常さを指摘するエコノミストは、日本では数少ない。同じくこの異常さを報じるメディアもごく限られている。国民がまともにこの異常さを受け取れば、預金引き出し、いわゆる取り付け騒ぎとなる危険性があるためだ。日本銀行の異常さを指摘し続けて来ているフランスのグローバル金融企業BNPパリバの河野龍太郎氏は今月7日のロイター通信の記事で、2015年に政府が策定した「財政健全化プラン」が達成時期の2020年を待たずに破綻した理由をあまりにも甘い経済成長率を想定していることにあると指摘している。経済成長率が高ければ、税収も多くなり、財政に少しでも余裕が出来る。そこを考慮して、実態以上に高い経済成長率でプランを策定している。政府は改めて財政健全化を2025年とするプランを発表したが、そこでも同じく実態以上の経済成長率を想定しており、河野氏はこのプランもその意味で、すでに破綻しているとする。すなわち実現不可能な財政健全化プランを策定することで、逆に2025年までは政府は緊縮財政を敷かなくてもいいとするのである。もはやこうなると政府は確信犯と言えるだろう。政権も財務省も日本銀行も政府債務の返済は不可能だと分かっているのだ。一般に中央銀行は景気が良くなると金利を上げ、景気が悪くなると金利を下げて、経済をコントロールしようとする。現在の世界経済は米国次第と言うところがあるが、その米国の経済はここ1〜2年で後退すると見る人が米国では増えている。早ければこの秋という人もいる。本格的に景気後退がやって来れば、日本銀行はもう金利を下げる余地がない。中央銀行の金融政策が限定されれば、政府の財政出動しかない。果たして、そんな時にさらに財政赤字を膨らませることなど出来るのか。そこで新たに発行する国債を買ってくれる金融機関はやはり日本銀行以外にはないだろう。これが「円」への信頼の喪失にならなければいいが。
桔梗

縄文の神々

2018-06-12 19:12:32 | 歴史
現生人類、ホモ・サピエンスは何万年かの間ネアンデルタール人、ホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシスと共存していた。しかし、氷河期が訪れた中で、体格が大きく筋骨たくましいネアンデルタール人は家族単位で生活をしていたために滅び、体格が小さく、筋力も弱かった現生人類は集団になることで生き抜いた。その集団を維持出来たのは共通の信仰であった。つまり宗教が集団を維持させた。日本の古代史は古事記・日本書紀が正書とされるが、いずれも時の権力者のための史書である。先に古事記が書かれたが、後にその存在を伏せ、日本書紀が新たに書かれた。いずれの書も倭国、九州王朝の事績を盗用した書であることを亡くなられた古田武彦氏が見出した。古事記や日本書紀には多くの神々が登場する。そして古来、日本の神事では大祓詞(おほはらひのことば)が唱われて来た。そこにも古事記や日本書紀に登場しない神の名が登場する。祓戸四柱神と称される神々だ。瀬織津姫(せおりつひめ)、速開津姫(はやあきつひめ)、気吹戸主(いぶきどぬし)、速佐須良姫(はやさすらひめ)である。瀬織津姫は岩手の霊峰である早池峰山に祀られる女神でもある。人々の罪穢れを海へ流してくれる女神だ。ところで、古事記や日本書紀は日本の天皇家の歴史を天照まで遡るとしている。古田氏は天照は弥生時代初頭に対馬海峡に中国から流れ着いた人で、北部九州の豊かな稲作地帯を孫のニニギに天降(あまふ)らせたー侵略させた人であるとした。天照の末裔が倭国、九州王朝に繋がり、そこではうだつが上がらないとして、後に神武が大和へ侵略して行った。古事記や日本書記には縄文の神と弥生の神が混在する。祓戸四柱神も縄文の神々だ。縄文の人々を弥生の侵略者である天照たちが支配するために縄文の人々の神を利用した。木花開耶姫(このはなさくやひめ)は富士山の浅間神社に祀られる女神だが、古事記や日本書紀では天照の孫のニニギに嫁いでいる。これも古田氏は縄文の人々に崇められていた木花開耶姫が嫁いだ相手であることで、ニニギを縄文の人々にそれほどの人であると周知させるためであったと考えられている。大祓詞は弥生の侵略者の罪を洗い流すための神事で使われたもので、そこに登場する瀬織津姫たちも縄文の神々であった。出雲も縄文の王国であったが、天照に「国譲り」と言う形で降伏している。日本では712年成立の古事記が最古の史書である。しかし、文字はそれ以前から存在した。万葉集に載る歌も600年代後半からのものがある。700年以前の倭国、九州王朝にも史書があったはずであるが、それらは大和で始まった日本国により抹殺されてしまった。現代の歴史家のほとんどが古事記や日本書紀の記述を疑わず、ただ神々が登場する部分を単に「神話」だとして片付ける。その意味するところを深く掘り下げようとしない。それを試みて隠れた歴史を見出した古田氏が亡くなられたのがとても残念だ。
遠野郷の早池峰山

転落が近づく世界経済

2018-06-11 19:11:08 | 経済
先週末から釜石では小雨がちの日が続き、今日は台風5号の影響もあって、小雨が一日降っている。そんな小雨の降る中でも朝にはウグイスが近くで鳴いていた。週末の土曜日に、周辺の山々に霧がかかり、小雨が降る中を車で隣の遠野に移動すると、自動車道の最後のトンネルを抜けると、遠野は青空の見える晴れで、路面も全く濡れていない。沿岸部の釜石と内陸の遠野ではしばしば天候や気温が異なる。この時期は沿岸部ではもう山背も関係してくるのだろう。先日、大阪にいる娘から電話があり、釜石ではまだ長袖が多いと言う話をすると、さすが釜石と言われた。 現在、世界の経済は概ね安定しているように見え、特にGDP国民総生産が世界一である米国は失業率も低く、景気は拡大していると見る人が多い。実際、米国の株式市場は2008年のリーマン・ショック直前の対GDP比180.79%を上回り、181.59%まで上昇している。その一方で、世界の総債務はさらに増えて、現在では237兆ドルにもなってしまった。米国の経済にしても、ベン・バーナンキBen Bernanke元米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、トランプ大統領の1兆5000億ドル(165兆円)の個人・法人減税と3000億ドルの歳出拡大は「今年と来年に米経済に多大な影響を及ぼすが、2020年には『ワイリー・コヨーテ』が崖から落ちるような状況になる」と語ったと経済情報のブルームバーグが伝えている。(『ワイリー・コヨーテ』は執念深いが、臆病でもある漫画に登場する動物のコヨーテで、獲物を捕らえようとして、しばしば崖から転落してしまう。)また、英国のIG Gruopのインタビューで、Legendary investor伝説の投資家として紹介されたジム・ロジャーズ氏が「たくさんの人が破産してインドの銀行の中には破綻したところもある。アルゼンチンも破綻したから、もう始まっているのかもしれない。私が知る限りのことから言えば(人生最悪の危機は)来年ぐらいに起こるだろう。」と語っている。氏は以前から、2008年のリーマン・ショックはアイスランドなどから表面化し始めたと言って来た。今回はアイスランドがアルゼンチンに代わったかも知れないと考えているようだ。1990年代以後、世界の先進国では金融危機のたびに、巨大金融機関を救済し、その代償として、巨大な政府債務を抱えることになった。2008年の経済危機の煽りをまともに受けて破綻したアイスランドは、もともと英国やオランダの支配を受けた小さな島国で、現在人口はわずか33万人ほどだ。漁業中心の貧しい国であったが、戦後、恵まれた温泉を利用した観光で栄えるようになり、1990年代には金融の自由化に積極的に取り組み、3大銀行を中心に、高金利預金で英国やオランダの企業や個人を取り込み、その資金で南欧や東欧の不動産、高利回りの米国の債券などに投資した。しかし、リーマン・ショックで、それらの大銀行は巨大な負債を抱えてしまい、英国やオランダは返済を強く主張した。アイスランドが他の国と違ったところは、国民投票を行い、大銀行の責任を追及し、政府が大銀行を救済しなかったことだ。むしろ経済を主導した政治家や銀行関係者多数を刑事告発して、責任を追求した。このことが後にアイスランドの早期の回復をもたらした。今ではアイスランドの国民一人当たりの所得は世界6位に回復している。いずれ世界は大恐慌を迎えるが、その時、政府にも中央銀行にももはやなす術は残されていないだろうが、仮にあったにしろ、今回はアイスランドに倣って、しっかりと責任を追求し、金融機関の政府救済はやめるべきだ。
雪の下

怪物化したマネー

2018-06-09 19:18:37 | 経済
2008年の米国でのリーマン・ショックは日本円で1000兆円が失われたと言われる。この時発生した不良債権を中央銀行であるFRBが買い取ることで、世界恐慌への発展を防いだ。世界恐慌とは実体経済の極端な低迷状態だ。FRBは金融経済の世界で起きたことが実体経済に波及することを防いだわけである。それで、その当時、一般の人々の生活はとりあえず維持された。もちろん、金融経済の世界で仕事をしていた人たちは大きなダメージを受けており、失業した人も多かった。100年に一度などとも言われる経済危機であった。それだけの大きな危機であったにもかかわらず、その後10年経って、そのことを忘れて、今ではその当時以上の金融経済規模に膨らんでしまった。2017年の世界の国民総生産GDPの合計は80兆ドルであった。現在、世界の株式の時価総額は88兆ドルになっている。世界の総債務は233兆ドルで、先物取引、オプション取引、およびスワップ取引など、いわゆるデリバティブと言われる金融派生商品の総額は1200兆ドルに達している。ドイツ銀行だけのデリバティブが75兆ドルと言われている。米欧に加え日本、中国の主要国中央銀行は20兆ドルを超える通貨発行と超低金利により、安易な債務と、株式、債券、不動産などの資産価格の高騰を再び招いた。金融経済危機で最も危惧しなければならないのは総額がとてつもなく巨大なデリバティブである。現在、欧州ではイタリアやギリシャの財政赤字が問題とされているが、それらよりはるかに問題が大きいのはドイツ銀行のデリバティブである。(ちなみに日本の政府債務は12兆ドルに迫っているが、イタリアの政府債務は2950億ドルであり、イタリアの債務など可愛いく見えてしまう。)デリバティブには金融機関同士の取引が絡み、一銀行の破綻は必ず複数の銀行に連鎖する。2008年のリーマン・ショックでは潰れたリーマン・ブラザーズやAIGなどより救済されたシティバンクやメリルリンチなどの方が負債額が大きく、潰せないとして政府やFRBが手を差し伸べた。ドイツ銀行も同じである。しかし、これらの救済は、真の「救済」ではなく、単なる問題の先延ばしでしかない。結局、金融経済は2008年当時以上の負債とバブルを現在生み出している。膨らんだバブルは大きければ大きいほど、破裂した時の衝撃は大きくなる。しかも、中央銀行の行える金融政策はすでに使い尽くして来た。いざと言う時に出動出来る財政も大きな赤字を抱えている。政府や中央銀行が打てる手が限られている中で、一層巨大に膨らんだ金融経済が崩壊すると、もはや実体経済への波及は避けられない。つまりは世界恐慌は避けようがない。こうした世界の状況を見抜いている何人かの著名投資家は、一般の人への警告として、食料の備蓄を促している。これまでの米国での経済危機は、金利上昇局面で起きている。その金利を中央銀行であるFRBは2015年からわずかずつ上げて来ている。今月も来週に0.25%だけ上げる可能性がある。それを行うと、中央銀行から一般金融機関への貸出短期金利は1.75~2%の範囲になる可能性がある。市中の予想では、今年さらにFRBは1〜2回金利を上げるだろうと考えられている。長期金利の指標である米国10 年国債の金利は一度3%を超えてからすぐにまた3%以下に下がったが、今また再び3%に向かって上がって来た。金利上昇は、債務者の負担を増大する。それが過去の経済危機で大きく影響して来た。FRB自身もそのことを承知している。そのため、金利引き上げには慎重な姿勢をとってはいる。しかし、FRBは何としても次の金融危機に講じられる金融政策を確保しておくために、少しでも金利を上げておきたい。ゼロ金利に近ければ、金融危機時に金利を下げる幅が限られる。かと言って、金利を早く上げ過ぎると、バブル化した金融経済の崩壊の引き金を引きかねない。現在、中央銀行はいずれも舵取りの難しい局面に立たされている。ただ、もう現在の状況まで来てしまうと、金融崩壊、世界恐慌は避けようがない。
玉紗参(たましゃじん)

東アジアの最貧国

2018-06-08 19:13:33 | 社会
2013年に内閣府の中央防災会議作業部会は、首都直下型地震での被害予想額を95兆円、南海トラフ地震での被害予想額を220兆円として発表した。地震の規模はそれぞれM7とM9.1とした。日本土木学会は2011年の東日本大震災後、仙台市周辺の盛土の変形に伴う甚大な被害や、東京湾岸や利根川沿いなど広域の液状化被害、15度以上の傾斜地の人口密集地域が我が国最大である横浜の地滑りの懸念などから、独自の調査を行った。政府の被害想定額はあくまでも地震直後の短期的な被害額であるが、土木学会は一昨日20年に及ぶ長期的な被害額を発表している。それによると首都直下型地震では778兆円、南海トラフ地震では1410兆円にもなる。地震の揺れや火災、津波などで道路や港など交通インフラが寸断され、工場などの生産施設が損害を受けるためだ。このため土木学会は、長期的に国民生活の水準を低迷させる「国難」になると指摘している。しかし、道路や港、堤防の耐震化を施すことで、被害を3〜4割軽減出来るとする。土木学会の大石久和会長は「いまのまま巨大災害が起きたら想像もつかないようなことになる。日本が東アジアにおける小国、最貧国の一つになりかねないと考えている」とインタビューで話している。大石会長はもともと国土交通省の官僚であるので、省益を利するところが多少はあるだろうが、長期的な被害額は巨大災害であるだけに考慮する必要がある。世界一の政府債務を抱えている上に、もしもこうした地震が現実となれば、「日本が東アジアにおける小国、最貧国の一つ」と言うのも「なりかねない」どころかまさにそのものになるだろう。これまで日本人は「赤信号、みんなで渡れば怖くない」を地で行って来た。東京一極集中や、東海地域での産業中枢の集積など、以前から言われ続けながら、何も手を打たずにやって来た。南海トラフ地震では間違いなく中部電力の浜岡原発も事故を誘発するだろう。東日本大震災は、多くの犠牲で日本をあらためて見直す機会を得た。にもかかわらず、結局は何の反省もなく、再びこれまで通りとなっている。仮に首都直下型地震や南海トラフ地震がなくとも、国民預金ではまかないきれなくなり、日本銀行が国債を買い取らねばならなくなっている政府債務は、いずれ5年以内には破綻する。それだけでも国民の生活は厳しいものになる。特に年金に頼る高齢者は悲惨だろう。その上、こうしたさらなる甚大な被害が加われば、果たして日本は国家として再起出来るだろうか。インドのように人口の半分が若者ならば可能だろうが。最貧国となってしまってからは移民すら来なくなる。政治家は自分の任期の短期的な見方しかしない。本来は長期的な視点に立つはずの官僚も、今やその政治家に隷従する。せめて現状がいつまでも続いて欲しいが、人の世はそれほど甘くはないだろう。
庭で咲く連鷺草(つれさぎそう) クリオネに似た不思議な山野草