釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

現実的な経済力

2017-08-31 19:18:17 | 経済
昨夜から今朝まで雨が続いた。朝にようやく雨が止むと、午前中から青空が広がって来た。高い空にはもうすじ雲やうろこ雲が広がり、すっかり秋の空になっている。つい数日前の晴れ間には夏の入道雲が出ていた。日射しを浴びた職場の裏山では久しぶりにミンミンゼミが鳴き、メジロやシジュウカラの群れがやって来た。残念ながら午後には再び雨雲が空を覆い、雨が落ちて来た。 各国の経済規模は国内総生産GDP(Gross Domestic Product)で比較されるが、一般に、そのGDPは米国が世界一で、昨年度で見ると、18.6兆ドルである。続いて中国の11.2兆ドル、日本の4.9兆ドルで、ドイツ3.5兆ドル、英国2.6兆ドル、フランス2.5兆ドル、インド2.3兆ドル、イタリア1.9兆ドル、ブラジル 1.8兆ドル、カナダ1.5兆ドルと続く。しかし、経済力はその国の物価とも関係し、その物価を考慮した各国通貨の為替を基にした購買力平価でのGDPを見ると、中国はすでに米国を超え、世界一となっている。購買力平価でのGDPは中国21.3兆ドル、米国18.6兆ドル、インド8.7兆ドル、日本5.2兆ドル、ドイツ4.0 兆ドル、ロシア3.8兆ドル、ブラジル3.1兆ドル、インドネシア3.0兆ドル、英国2.9兆ドル、フランス2.7兆ドルの順となる。2000年以後経済発展して来た国々をBRICsと呼ぶが、ブラジル、ロシア、インド、中国を指す。このBRICsだけで、購買力平価で見たGDPは世界のほぼ半分を占める。米国、日本、ドイツを合わせても購買力平価ではBRICsの76%しか満たさない。要するにより現実的な経済力で見ると、一般に考えられている以上に新興諸国の経済力は大きくなっている。2013年以来の日本の円安政策は対外的には日本の経済力を貶めて来た。日本が従属し続ける当の米国自体は通貨であるドルが実質的には低下し続けているにもかかわらず、必死に見かけ上は強いドルを維持しようとして来た。これまで世界はエネルギーを抑える国が強い国とされて来た。そのため米国は1971年に金本位制を離脱したドルの価値を維持するため、産油国と協定し、世界の石油取引をドルで行うことを決めた。しかし、近年、中国やロシア、イランなどはドル以外で石油を取引し始めた。各国の中央銀行は外貨建て債務や為替の調整のための資金として、外貨準備を持つが、これまではそのほとんどを各国ともドルを使って来た。この外貨準備についても中国やロシアはドルに替えて金(きん)を増やしている。過去は経済規模が最大の国の通貨が基軸通貨であった。現在の基軸通貨であるドルは1995年頃を境に実質的な実効レートは下がり続けている。裏付けのないただの紙切れでしかないドルを増刷し続けて来たためだ。ドルで外貨準備を持つ限り、その価値は失われて行く。ロシアや中国は金が本来の通貨の裏付けと考えている。保有する金の量に合わせた通貨の発行が経済をこれまでよりは安定させると考えている。
早くも紅葉して来た楓

世界の大学ランキング

2017-08-30 19:12:41 | 文化
世界の大学の評価は英国の高等教育専門週刊誌『タイムズ・ハイアー・エデュケーションThe Times Higher Education』と同じく英国のクアクアレリ・シモンズ社Quacquarelli Symonds (QS)のものが著名だが、今年6月に後者が『世界大学ランキング2017-2018』を発表している。ノーベル賞受賞者なども評価基準に含まれている。全世界965校が対象となっている。上位10校には米国が5校、英国が4校、スイスが1校で、上位4校は全て米国である。アジアではシンガポールの南洋理工大学(NTU)が11位で最上位である。アジアで2位もやはりシンガポールでシンガポール国立大学(NUS)の15位だ。アジアでは3位が中国の清華大学で25位で、香港の香港大学が26位と続き、日本の東京大学は28位となっている。ドイツやフランスの大学は43位のフランスのENS(高等師範学校)、ドイツのミュンヘン工科大学が63位がそれぞれの国の最上位となっている。フランスも日本と同じく官僚統制の強い国だ。大学にも影響が強く出ている。最も欧州は優秀な人は簡単に米国へ移ることも大いに影響しているのだろう。こうした大学の評価を見る限り、経済や社会が陰りを見せているとは言え、まだまだ米国の米国の教育・研究の強さは失われていない。かっては世界に君臨した英国も同じだ。教育や研究は一朝一夕に実るものではない。長い年月を要する。その意味では英米には長い教育と研究の歴史がある上、米国はまさに世界中から優秀な人材が集まって来る。集まって来た人材をまた大切に受け入れる環境も提供出来るシステムが整っている。現在の英国のように米国もいずれ国としては斜陽化して行くだろう。しかし、大学としての評価はこれからもまだ長く高い状態を維持して行くのだろう。多くの国際機関も予想しているように、これからは中国やインドが経済大国として頭角を表すだろうが、その時にも英米の大学の高い評価は変わらないのかも知れない。今、中国は世界で最も多く米国に留学生を送り込んでいる。世界第2位の経済大国として、教育や研究の重要性を十分理解しているのだろう。明治の文明開化期の日本がそうであったように。
大きい百日紅の木

食料自給率

2017-08-29 19:15:23 | 社会
岩手県は本州では面積が最も広いが、奥羽山脈と北上山地があるため、その間にある平野部はさほど広くは感じない。隣接する秋田県は面積では本州では5番目となるが、平野部は岩手県よりも広く、田園地帯が岩手よりも広大に感じる。少なくとも稲作の収量は岩手よりも多いだろう。人口が岩手よりさらに少ない分、余計に広く感じさせられるのかも知れない。遠野の田園風景も好きだが、たまに訪れる秋田の広々とした田園風景も好きだ。岩手同様に山の麓を走る道には「熊に注意」の標識を見かける。山野の豊かさは変わりないのだろう。今月9日、農林水産省は昨年の食料自給率を38%と発表した。いつもながら、自給率の低さを強調するためにカロリーベースでの自給率となっている。国連や他の先進国はカロリーベースではなく、生産額や重量で自給率を算出している。日本も生産額での自給率では60%を超える。実際、米国デュポンDuPont社や国連の世界食料安全保障指数(The Global Food Security Index)では、昨年の日本の自給率は109カ国中21位で、決して低くはない。日本は現在、50カ国以上の国から食料を輸入している。豚肉、とうもろこし、生鮮野菜・果物、タバコ、アルコール飲料などが多くなっている。先月6日、ベルギーの首都ブリュッセルで、日本と欧州連合(EU)は首脳会談を開き、経済連携協定(EPA)について大枠合意している。EUとの貿易で関税を撤廃し、自由貿易を促進すると言うものだ。EUにはたくさんの農業国がある。特にフランスは農業大国でもある。今後はますます農産物の輸入が増えて行くだろう。自給率と言う点では、低下して行く。さらに食料問題では自給率だけでなく、安全性も重要だ。海外畜産物の抗生剤やホルモン剤の多用、南米チリの抗生剤を多量に使った鮭の養殖など、また、カナダや米国のように多国籍企業のモンサントMonsantoによる遺伝子組み換え食品の問題もある。米国やEUでは遺伝子組み換え原料の含有比率が0.9%以上で表示義務があるのに対して、日本は5%である。欧米よりずっとずさんな基準になっている。こうした問題を持ちながら食料輸入はますます増加して行く。それは国内農業の衰退にもなる。少子高齢化が進む日本では若年者はすでに楽な生活に慣れており、農業のようなある意味での重労働には背を向ける。農業従事者はすでに高齢化や副業化している。自給率の問題はこうした農業従事者の問題とも関係し、簡単ではないが、今後の日本にはとても重要な問題でもある。農林水産省は省益を優先するためにのみ自給率を問題にしており、日本の将来の農林業や水産業を真に見据えてビジョンを策定してはいない。他の産業も同様で、これからの日本の産業は全て衰退に向かうしかないのかも知れない。
白い小さな花が咲く蕎麦畑

クルミ

2017-08-28 19:20:35 | 文化
先週金曜と土曜は今夏としては珍しく、気温が30度を超えた。久しぶりの快晴であった昨日は30度を切った。今日は昼の26度が最高だ。最近は朝晩は20度を切ることが多く、裏の空き家の庭では夜になるとお盆前からコオロギが鳴いている。朝晩の風はもうすっかり秋の風になっている。ススキの穂も風に揺れるようになった。夏らしい夏はほとんどなく過ぎてしまった。街路樹のナナカマドも赤い実が目立つようになっている。職場の裏山では花の盛りの百日紅が緑の中で目立つ。木々の中に5〜6本のクルミの木があり、その1本にはリスが巣を作っている。よく見ると、クルミがたくさん実を付けている。職場の駐車場でも風か雨で落ちたクルミの実を見つけた。日本で自生するクルミはほとんどがオニグルミで、その変種であるヒメグルミの2種になる。クルミは野生動物ではリスとネズミだけが食べるそうだが、以前、裏山で子グマがクルミの木に登っているのを見つけたことがある。クマもやはりクルミを食べるようだ。縄文人もクルミは食用として活用しており、三内丸山遺跡からはクルミを栽培していたことが明らかになっている。現在、一般に食用に使われているクルミは別種で、シナノグルミとかテウチグルミと呼ばれるクルミが使われている。オニグルミは殻が非常に固く、表面に凸凹があり、鬼の面にたとえて付けられた名だと言う。クルミは重量の半分が多価不飽和脂肪酸でリノール酸とαリノレン酸を多く含む。αリノレン酸はオメガ3脂肪酸の一種で、ナッツ類ではずば抜けている。αリノレン酸の一部はEPAやDHAに変換され、脂質異常や血圧、血糖を改善し、血管を健康に保ち、老化を予防する。最近では認知症や乳癌、肺癌、大腸癌などの癌の予防にも効果が報告されている。さらにクルミにはビタミンE、カロテノイド(βカロチンなど)、メラトニン、ポリフェノールのような抗酸化成分がたくさん含まれており、やはり体の老化を抑えてくれる。人の病は9割は毎日の生活から来るものだろう。食事、運動、睡眠、入浴、ストレスなどが問題となって、何らかの病を生み出してしまう。老化と言う体の現象は止めることは出来ないが、遅らせることは可能だろう。かって日本人は身近に得られるものを食べて、健康を維持していた。身近な自然界には人の体に有用なものがたくさんあった。
オニグルミ

4地域の持続する地震

2017-08-26 19:18:47 | 自然
今年1月4日、南太平洋のフィジー諸島南方でM7.2の地震が発生し、同じ1月22日にはやはり南太平洋のソロモン諸島でM8.4の地震が起きた。6月14日にメキシコの太平洋沿岸でM7.0の地震があった。7月18日にはアリューシャン列島でM7.8の地震が発生している。今月8日には中国四川省の九寨溝でM7.0の地震があり、湖水が枯れてしまっている。今年に入り、一時は収まっていた釜石での地震が多くなって来ている。今月のM4以上の地震を見て見ると、31回あり、東北ではそのうちの14回を占めており、北海道の十勝地方南部でも1度発生している。次いで、関東が7回で父島で1度発生している。後は鹿児島と沖縄がそれぞれ4回となっている。ただ全ての地震を見ると、気象協会の5月17日からのデータでは、長野県と九州南部、東北がそれぞれ100回以上で多くなっており、伊豆諸島を含めると関東もそれに近い。太平洋周縁の地震は何らかの形で、周縁の地域に影響する。過去のデータでは中国で地震が頻発する四川省の地震とも日本の地震が関連している可能性が指摘されている。太平洋の海底で生まれ出る太平洋プレートは日本列島に向けて動いている。広大なそのプレートは日本海溝で北の北米プレートと南のフィリピン海プレートの下に潜り込む。そして北米プレートとフィリピン海プレートはさらに駿河湾や富士山の麓でユーラシアプレートと互いに接する。駿河湾付近は本来極めて不安定な状態にある。日本列島はその形成過程から、フォッサマグナと呼ばれる中央地溝帯により東北日本と西南日本に分離されている。その上、中央構造線で関東から西は南北に分断される。中央地溝帯も中央構造線も巨大な断層である。プレート境界に生まれた歪みが解消されようとすることが地震となる。先の4つの地域で地震が群発しているが、それらがまた他の地域へも新たな歪みを作っている可能性もある。1923年に関東大震災があったが、地震や噴火の現状がその1923年当時に似ていると指摘する人もいるようだ。首都直下型や南海トラフの地震や富士山の噴火を考えると、極端な東京一極集中が心配になる。東京の陸上交通の非効率さは、指摘されて久しいが、天災時には全く機能しなくなるだろう。
オクラの花

河川敷の鹿

2017-08-25 19:21:52 | 文化
冬は山には餌が少なくなるため、鹿たちは住宅街まで入り込んで来る。新居の裏の空き家の庭で何度か鹿を見かけた。夏になっても甲子川の河川敷だけはよく鹿を見かける。夏草が茂り、楽に餌を摂ることが出来るからだろう。日本には北海道から沖縄までニホンジカが生息するが、日本に固有の種ではない。中国、ロシア、北朝鮮などの鹿と基本的には同じである。しかし、日本では北から南までの地域により7つの亜種がいる。北の鹿ほど大きく、北海道のエゾジカが最大で、最も南の沖縄県の慶良間諸島に生息する亜種、ケラマジカの5倍の体重がある。釜石で見る鹿よりもエゾジカはずっと大きい。鹿はおそらく大陸から分離し、日本列島が形成された初期から列島に生息していたのだろう。列島を次第に南下して分布するようになり、南下するに従い小さくなって行ったと思われる。沖縄の鹿は江戸時代に移入されたようだ。縄文人は食用動物として、鹿と猪を狩っていた。しかし、猪の方は霊的な存在と見ていたようで、猪の土製像が発掘されている。鹿はもっぱら生活の糧であり、肉だけでなく、内臓や骨、皮全てが利用されている。鹿が霊的な存在となったのは弥生時代以後のようだ。アイヌ語では鹿はユクYukと呼ばれるが、本来は肉食の対象となる動物全てを表していたようだ。肉はカムkamと言う。日本では鹿を「シシ」とも言う。「ししおどし」「ししおどり」など。この「しし」は本来肉を表す。鹿肉は「かのしし」、猪の肉は「いのしし」と呼んでいたそうだ。従って、鹿は「か」であり、猪は「い」である。縄文時代は肉は主に鹿の肉が多く、アイヌ語の肉を表すカムkamが「か」の語源ではないだろうか。和田家文書では、かって日本列島へ最初に阿蘇部族がやって来たが、後に少し文化の進んだ津保化族がやって来て、支配を広げている。この津保化族の言葉がアイヌ語に残されているのだと思う。東北に残るアイヌ語名とされるものもやはり津保化族の言葉であるように思う。四国と九州の鹿は亜種のキュウシュウジカである。万葉集には68首の鹿を詠んだ歌がある。この万葉集は本来九州王朝の歌集である。柿本人麻呂も万葉集で鹿を詠った歌がある。「夏野行く、牡鹿の角の、束の間も、妹が心を忘れて思へや」。人麻呂は「柿本朝臣人麻呂」であり、「朝臣」は臣下では最高位である。『古今和歌集』では正三位とされる。にもかかわらず、人麻呂は古事記や日本書紀の正史には登場しない。人麻呂は九州王朝の臣下であった。夏の雄鹿の角はまだ短く、短いわずかの間も妻の気持ちを忘れてはいない。当時は釜石のように全国どこでも身近に鹿が見られていたのだろう。
河川敷に3頭の鹿がいた

1930年代に酷似する現代

2017-08-24 19:19:19 | 社会
戦後、日本は外務省を中心に対米従属を維持して来た。その米国は現在、地政的、政治的、経済的な三つの不安定要素を抱えている。北朝鮮や中東との武力的な衝突、政権や国民の分裂、異常な金融政策による市場の歪みである。現大統領は民主党政権時代とは異なり、他国への干渉を行わない立場であったが、次第に周囲からの圧力で方針を転換せざるを得なくなって、従来通りの軍事介入の方向へ舵を切ろうとしている。国内では格差が拡大し、国民が二分化する中で、ポピュリズムが蔓延している。2008年のリーマンショックで、大きなダメージを受けた金融機関を救済するために米国中央銀行FRBは低金利とドルの増刷を開始し、そうした行き過ぎた金融政策により、金融市場にリーマンショック以上のバブルを生み出した。その一方で、国民は実質賃金が低下し、住宅、自動車、学生のローン、国民の負債がやはりリーマンショック直前を凌ぐ状態になった。こうした米国の不安定性がドルを弱くしており、安全資産と錯覚された円と金が買われている。米国の何人かの投資家は、2007年以降から現在の米国の状態が1929年に始まった世界大恐慌後の1930年代に酷似していると見ている。1933年に金本位制が停止され、金利は低下し、金融政策は量的緩和を開始し、株式やリスク資産が上昇した。社会的にはやはりポピュリズムが拡大していた。国民の不満が高じると、政治家はしばしば国民の目を外に向けさせるために、戦争を利用して来た。その政治家の姿勢に乗じて、軍人や武器商人が独自に活動したりもしている。歴史上かってない日欧米の中央銀行による通貨増刷が金融資産のバブルを生み出し、実質賃金の低下した一般国民との格差を広げた。歴史的な巨大バブルはいずれ崩壊する。その時、中央銀行には重傷を負った金融機関を救済する余力はもはや残されていない。バブルの規模は米国が最大であるが、その米国の債券や株式のバブルの崩壊は、日本の債券、株式も崩壊させる。日本の金融機関や年金、郵貯には巨大なダメージを与えるだろう。中心的金融機関が不良債権を抱える欧州、民間負債が膨大な中国もダメージから逃れることは出来ない。果たして、世界の政治家はそんな国状をどう解決するだろう。
アメリカ芙蓉

東北の鬼

2017-08-23 19:12:46 | 歴史
本ブログの2013年12月1日、「西アジアから東北へやって来た鬼」の記事で、「鬼」は西アジアからやって来て、東北に移り住んだ白人であることを書いた。特に秋田県の仙北市に住む人が多かった。和田家資料4の『北斗抄十八』にある[飽田鬼道伝]は文化二年五月一日に仙北の住人である山理權太夫による。文化二年は1805年である。奥州安倍氏は広く大陸とも交易を行なっており、西アジアからも東北へ異文化や技術、知識がもたらされていた。特に、採鉱技術や製鉄技術などは西アジアから「紅毛人」により伝えられた。体が大きく、彫りの深い顔立ちは、製鉄で赤銅色になると、まさに「鬼」と見られたのだろう。彼らへの畏怖が「鬼」と呼ばせたのかも知れない。秋田県の男鹿に伝わる「なまはげ」や津軽の鬼神社、岩手の鬼剣舞などはその「鬼」に始まる伝承だ。秋田の「なまはげ」と同様のものは山形県や岩手県にもあり、釜石ではナナミタクリと呼ばれていた。柳田國男の『遠野物語』にも鬼が登場する。山に隠れ住んで、時には村の女性をさらったりもしたようだ。江戸時代以前の日本は現在よりずっと人の気質がおおらかで、異国の人を容易に受け入れていたのだろう。奥州安倍氏や藤原氏は盛んに大陸の遠くとも交易をしていたので、なおさら、異国の人を寛大に受け入れていたのだろう。釜石にも近代には異人館があったと言う。三陸の沿岸部も大陸からの船がかっては出入りしていたと思われる。「鬼」は製鉄技術を伝承した白人由来であることは確かだ。その由来の部分が薄らぎ、「鬼」だけが伝わり続けている。『東日流外三郡誌』をはじめとした和田家の古文書を残した秋田孝季は「歴史は足にて知るべきものなり」と言っている。実際にその土地へ行って、そこに残されている物や言い伝え、それらを全てありのままに後世に残すことがいかに大事か、よく知っていた。日本では歴史学者に限らないが、得てして、文献だけの学問が大手を振っている。紅毛人の渡来と定住などが遺伝子レベルで解明されると面白いだろう。
赤色を帯びて来たアキアカネ

ドル切り下げ

2017-08-22 19:12:56 | 経済
世界最大の外国に対する債権国であった米国は、1980年代のレーガン政権で、債務国に転落し、以後、対外債務は雪だるま式に増えて行った。外国との物やサービスの取引や投資の状況を表す経常収支は、IMFの推計で2017年度は4812億ドルのマイナスとなっており、経常収支では世界の189位と言うとんでもない状況になっている。同じくIMFの推計では、2017年の米国の政府債務は21兆ドルである。その6割は国債購入を通じて、中国と日本が貸している形になる。経常収支の赤字と政府財政の赤字を合わせて、双子の赤字と呼ばれる。日本も政府債務は増え続けており、そのGDPに対する比率では世界一であるが、金額としては米国の方がはるかに多い。特に問題なのは、米国の場合、外国への借金が多過ぎる上に、毎年増え続けていることだ。米国は過去75年間で、3度のドル切り下げを行なっている。最後のドル切り下げは1971年のいわゆるニクソンショックで、金本位制から離脱した時だ。ベトナム戦争で戦費がかさみ、米国政府は借金を積み重ねた。そのため、諸外国は米国ドルに不安を持ち、手元のドルを「金(きん)」と交換するよう米国に求めた。米国から「金」が流出し、それを食い止める必要があった。この時、戦後急速に経済成長したドイツと日本が米国に借金の半分を踏み倒された。両国は成長期にあったため、それを飲んでも持ちこたえ、さらに成長を続けられた。日本は財政的にもこの時は余裕があった。現在の米国の対外的に巨額となった借金はニクソンショック時以上となっており、とても今後返済出来る見込みはない。その点は日本の政府債務も同じである。米国はいずれ数年内に再びドルの切り下げをやって、借金を踏み倒すしかない。その時、日本はその衝撃に耐えられないだろう。米国の国債や社債、株式を買っている年金基金も崩壊するだろう。あまりにも日本自体の政府の借金が大き過ぎる上、もはや国民の預貯金で国債を支え切れずに日本銀行が買い取らなければならない状況まで追い込まれているため、とてもその衝撃を受け止める余裕が政府にはない。米国の株式や債券、その他の金融商品はリーマンショックを超えて、バブル化しており、そのバブルが弾ければ、米国政府もリーマンショックの時のように金融機関に資金を注いで助ける余裕はない。世界は「金」の裏付けを持たないために自国通貨を際限なく印刷出来るようになった。それが政府に財政規律を失わせ、バブルを繰り返し生み出した。今、中国やロシアは米国ドルの崩壊を見込んで、「金」の収集に努めている。この点でも日本は全くの無防備である。わずかしかない政府の「金」ですら米国に預けたままだ。ドイツはすでに米国に預けた「金」の返還を求めている。
庭の睡蓮鉢のメダカ

7つもある超巨大火山

2017-08-21 19:17:03 | 科学
火山の爆発規模の大きさを示すVEI(Volcanic Explosive Index火山爆発指数)は0から8までの段階で区分されている。これは火山噴火から噴出されるものの量で決まる。1707年の富士山の宝永大噴火はVEIが5である。9万年前の阿蘇山の噴火、2万4000年前の姶良カルデラ噴火、7300年前の鬼界カルデラ噴火が日本では知られている最大の噴火で、VEIは7だ。現在、科学者の間で、スーパーボルケーノ、超巨大火山と呼ばれる火山が世界には7つある。米国のイエローストーン、イタリアのセージア渓谷、インドネシアのトバ火山、ニュージーランドのタウポ、南太平洋のメラネシアにあるソロモン諸島の北のオトンジャワ海台(火山噴火で隆起した海底の台地) 、日本の東1600kmにある北西太平洋の地球上最大の火山であるタム山塊を擁するシャツキー海台の6つがVEI8で、もう一つが日本の鬼界カルデラである。これらの中で、近年、米国のイエローストーンに研究者の注目が集まって来ている。1999年から地盤の隆起や、いくつかの川の「沸騰」が観測され、2014年3月には観測史上初めてのM4.8の地震が発生し、本年6月15日に再びM4.5の地震が発生した。群発地震も続いている。イエローストーンでは60- 70万年前後の周期で巨大噴火が発生しており、すでに最後の噴火から60万年が経過している。英国の研究者のシュミレーションでは、超巨大噴火が起きた場合、「3-4日内に大量の火山灰がヨーロッパ大陸に着き、米国の75%の土地の環境が変わり、火山から半径1000km以内に住む90%の人が火山灰で窒息死し、地球の年平均気温は最大10度下がり、その寒冷気候は 6年から10年間続く」とされる。成層圏を満たす火山灰がきれいに晴れるのは、およそ200年後になる。しかも今年4月米国フォーブス誌は英国ロンドン大学のロイヤル・ホロウェイRoyal Hollowayの地質学者の調査結果を伝え、イエローストーンを含む米国西部の地下350Kmにメキシコの面積に匹敵する融解した炭素の貯留層がある。それらが放出されると、「劇的かつ即座に地球の環境を 10年間以上変化させる可能性」があると言う。イエローストーンについては米国のNASA航空宇宙局も「超爆発」噴火を止める計画を研究しているようだ。超火山の噴火は地球を寒冷期に突入させ、大部分の食糧を破壊するため、飢餓が蔓延する可能性がある。国連によると、イエローストーンのようなスーパー火山の噴火の後では、食糧は約74日間しか残らないだろうとする。
百日紅