釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

セミの夏

2017-08-05 19:13:03 | 自然
先日庭でセミの抜け殻を見つけた。セミは幼虫として何年も土の中で過ごす。アブラゼミの場合は木の幹や枝に卵を産み、卵のまま冬を越して、翌年の6月頃に孵化して幼虫となり、土のところまで降りて来て、土の中に入り、木の根から養分を吸って成長し、卵から7年経った頃に地上に出て、木を上り、枝や葉の裏で羽化して成虫となる。成虫となったセミは寿命が1〜2週間しかない。その間に雄は日中にしきりに鳴いて、雌を求める。子孫を残すにはとても短い期間しかない。日本には30種ほどしかいないそうだが、世界では1600種もいる。日本で一番小さいセミは沖縄県の石垣島のイワサキクサゼミで、体長は1~2cmしかない。一番大きいのはクマゼミだ。7cmくらいになるものもいる。クマゼミは最近はかなり北上して来ているようで、体も大きいが声も大きい。体長が4cmほどのエゾハルゼミはエゾと名が付きながら、実際には北海道から九州まで分布している。ひょっとすると、このエゾは「えみし」を意味していたのかもしれない。ヒグラシも全国に分布するが、関西以南では山間部に生息している。郷里の愛媛県では南の高知県との境近くの面河渓と言われる渓谷へ行った時にヒグラシの声を聴いた。標高が650m以上である。平地ではヒグラシの声を聴くことが出来ない。万葉集ではセミを詠んだ歌は10首あるが、ほとんがヒグラシを詠んでいる。「かなかな」とか「クツワゼミ」とも呼ばれる。万葉集の原文ではヒグラシを「日倉足」と書いている。やはり耳にうるさく聴こえて来る声よりも、どこか物悲しさを感じさせるヒグラシの声の方が万葉人たちの心に響いたのだろう。釜石へ来て、初めての夏に、平地でヒグラシの声を聴いた時には驚いた。それまで、ヒグラシの声は山間部でしか聴いたことがなかったからだ。ヒグラシと同じくかなり山奥でしか聴いていなかったカジカガエルの声も釜石では市街地を流れる甲子川で聴いて、やはり驚かされた。それまでカジカガエルの声はかなり山奥の渓流でしか聴いたことがなかった。カジカガエルの声もヒグラシと同じくどこか澄んだ清らかさを感じさせてくれる。以前住んでいた愛知県の岡崎市だとクマゼミの声がやたらと聞こえて来たが、さすがに釜石ではクマゼミの声は聴くことが出来ない。
木槿(むくげ)