釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

産業転換に遅れをとる日本

2017-08-01 19:16:31 | 社会
米国の経済・金融情報の大手であるブルームバーグBloombergが昨日、『アジアに負ける日本株、ハイテク比率の低さ弱み-円高、安倍リスクも』と題する記事を載せた。「日本株の年初来パフォーマンスがアジア株に対し劣勢」だと指摘している。その原因は「世界的に高成長のテクノロジー株が買われる流れに追随できていない」ことと、「為替変動や保護主義政策が直撃する自動車株比率の高さ」にあるとしている。アジアでは情報技術セクターの株が3割を占めているのに対して、日本は12%でしかない。その一方で、円安や補助金で守られた自動車産業の比率が高い。そのため、成長力のある情報技術分野が相対的に少なく、成長力の失われて来ている自動車分野が大きいために他のアジアほど株が伸びていない。要するに産業の構造改革が遅れていることを指摘している。英国は先月26日、ガソリン車とディーゼル車の新規販売を2040年から禁止すると発表した。フランスもすでに同じような発表をしており、ドイツの一部都市でもディーゼル車の一部を禁止することを検討中だ。近年、一方で、電気自動車を推進する動きが、フランス、ノルウェー、インド、オランダなどで進められている。英国は特に排ガスによる大気汚染が深刻になっている。今後、電気自動車への流れは加速して行くだろうが、何よりもむしろ自動車の保有離れが広がって行く可能性がある。米国のスタンフォード大学、トニー・セバTony Seba教授が今年5月に発表した研究結果では、2030年までに、米国のマイカー所有者は80%減少し、全米を走る乗用車の台数は、2億4700万台(2020年)から、4400万台(2030年)に減る。2021年までに、電気自動車のライドシェアサービスを利用した場合の1マイル(約1.6km)あたりの費用は、新車を購入した場合の4分の1~10分の1になり、各世帯の年間コストも、マイカーを購入・維持するのに比べ約5600ドル(約63万円)安くなると言うものだ。人工知能AIによる電気自動車の配車システムが広がり、スマフォなどで、連絡すれば、必要な時に無人自動車が配車されて来る。実際、すでに米国ではこうした自動車のシェアリングはすでに始まっている。2009年に米国で設立されたウーバー・テクノロジーズ社Uber Technologies Inc.は今や世界の632都市で自動車のシェアリング事業を展開している。2012年にはリフト社Lyft Inc.もこの分野に参入した。このため、昨年、サンフランシスコ最大のタクシー会社であるイエローキャブ社Yellow Cab Cooperative Inc.が、連邦破産法の申請に追い込まれている。個人が自動車を保有しなくなる時代がもう目の前に迫っている。そんな時代を読み切れていない日本は巨大な自動車産業の存在故に、今後は経済衰退へ向かわざるを得ないだろう。
桔梗