軽自動車の燃費データを偽装した三菱自動車の問題は、単に自動車会社だけの責任ではない。監督官庁である国土交通省が3段階ある燃費の測定検査を全て三菱側のデータをそのまま受け入れて25年間チェックしていなかった。日本の現在の大企業はほとんどが何らかの形で監督官庁からの天下りを受け入れることで、監督官庁と実質的に馴れ合いになっている。それが両者のモラルの低下をもたらす。モラルの低下は精神面から現実の技術の低下へと反映されて行く。この三菱自動車の件は自動車業界の氷山の一角でしかないだろう。以前から日本の自動車産業は既に斜陽化していることを述べて来た。史上空前の利益を「円安」と「消費税の還付金」で得ながら、技術・研究の推進や人材の育成には十分な投資をせず、役員や株主への還元だけを図る姿勢には、もはや斜陽化以外の何ものも見られない。三菱自動車は一次下請け企業だけで1356社もあり、総従業員数は約41万人にもなる。下請けは6割が従業員50人未満の中小企業だ。愛知県に278社あり、最も多い。東京259社、岡山県156社と続く。岩手に来る前は愛知県に住んでいたが、娘の友人のお父さんがやはり三菱自動車の研究者であった。しかし、その方は定年前に早々と三菱自動車を辞め、教授職に就かれたようだ。社風の変化を敏感に感じとられて、嫌気がさしたのかも知れない。日本の産業には戦前からの財閥構造が実質的には残されており、大企業は多くの下請け的な企業の上に君臨することで、利益を得る仕組みが出来上がっている。こうした構造に組み込まれた中小企業は大企業への依存体質が醸成され、そこからは抜け出せなくなる。国からの補助金に依存する地方自治体と同じ状況になる。それらのすべてが国の基盤を弱体化させているのだが。江戸300年で培った幕藩体制は明治になっても国・県体制や企業城下町的な体制としてそのまま遺残し、戦後もそれが長く続いて来た。しかし、そうした構造にも少しずつ亀裂が入り込んで来る。何をきっかけにして、崩れて行くかは予想出来ないが。
庭の碇草(いかりそう)