昨日までと違って、今日は朝からよく晴れて、釜石ブルーが広がった。職場の裏山の桐の花が青空を背景にとてもきれいだった。職場の窓に近い薬師公園からは毎日のようにウグイスの声が聞こえて来て、今日はメジロたちも鳴いていた。甲子川でもオオヨシキリの甲高い声がいつも聞こえて来るようになった。気温は22度までしか上がらないので、風がさわやかでとても気持ちがいい。昼休みにはまた裏山の旧道を走って、朴の花を見に出かけた。山藤が高いところでも咲くようになった。そのうちニセアカシアの白い花が見られるようになるだろう。緑が溢れ、野鳥たちの声が聞こえて来る中で、こうした山の情景は縄文時代の人たちも同じように見ていたのだろうか、とふと、考えてしまった。 藤の花が咲くと必ずクマバチがやって来る。ミツバチもたくさん集まって来るが、クマバチは大きいので目に付きやすい。住田町の菜の花畑やレンゲの咲くところではミツバチが飛び交っていた。しかし、このミツバチは1990年代から世界的に減少するようになった。ミツバチは蜜を作ることより、果樹や野菜の受粉に大きな役割を果たす。多くの農家がミツバチに助けられて来た。今世紀に入り、ミツバチの大量死が欧米で一層問題となり、様々の原因が考えられるようになった。ミツバチは巣箱を飛び立って、そのまま巣箱に戻らなくなる。女王蜂だけが取り残されてしまう。原因としてダニやウィルス、気候変動、遺伝子組み換え作物、電磁波なども疑われた。岩手県でも2005年に772群ものミツバチの群れが失われた。2006年9月に行なった調査では被害は北海道、岩手、山形など全国16県で合計6615群に達した。ミツバチがいなくなるのであるから、当然、ミツバチの価格自体が高騰した。農林水産省によれば、日本の養蜂家は約5000戸あり、同省所管の畜産草地研究所の試算では施設栽培におけるミツバチの経済効果は2000億円近い。我々が普段口にするリンゴやナシ、モモ、スイカやメロンなどの果樹、トマトやナス、キュウリ、レタスやタマネギなどの野菜、これらすべてがミツバチの助けが必要だ。2009年の農林水産省の調査では花粉交配用のミツバチが不足している県は21都県に及んでいる。昨年、世界的科学誌、サイエンスやネイチャーがそれぞれ「ネオニコチノイド農薬がミツバチの採餌行動を減少させ、生存率を低下させる」、「ネオニコチノイド農薬がマルハナバチコロニーの成長と女王の生産を減少させる」、「ネオニコチノイド農薬とピレスロイド農薬の複合影響でマルハナバチコロニーが弱体化する」と言う論文を載せた。そして、本年4月、欧州連合(EU)はネオニコチノイド系農薬3物質(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)の2年間の使用禁止を議決した。クロチアニジンは日本の農薬のトップメーカーである化学会社が生産している。私の父も勤めていた会社だ。イミダクロプリドはドイツや別の日本の化学会社が製造している。ネオニコチノイド系農薬はニコチン類似の化学構造をもつ神経毒性物質で、農家で殺虫剤として使われているだけではなく、家庭園芸用からシロアリ駆除剤、ペットのノミ取り、コバエなどの害虫駆除剤まで身の回りで広く使われている。殺虫成分は根などから作物に浸透し、作物全体に移行する「浸透性」を有する。また、効果が長続きする「残効性」にも優れている。昆虫は葉や実を食べても、樹液や蜜を吸っても毒が回り、神経が障害される。消えて行くミツバチは一つの警告を我々に与えてくれている。
山の高いところでも咲いて来た山藤