釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

いにしえの東北

2008-08-31 10:12:37 | 歴史
今朝もまた雨。ただひとつうれしいのは庭に植えた彼岸花の一輪が咲いた。釜石は和名だと思っていたがアイヌ語の可能性もあるようだ。遠野はアイヌ語。東北には各地にアイヌ語地名があることは先にも触れたが仙台あたりが境界で仙台より南になるとずっとアイヌ語地名が減ってくるそうだ。アイヌの人たちのDNAは縄文人のDNAに似ているそうだ。しかもその縄文人のいた地域はやはり東日本が多い。青森市郊外の三内丸山遺跡は縄文時代に対する考古学の定説を覆してしまった。それほど衝撃的な高度な技術を持った大集落であった。当時の一つの都市であったとしたらそうした都市がいくつもあってそれらを統一する国家があった可能性も出ててくる。これは何を意味するか。万世一系の天皇家という日本の歴史が覆される可能性を含んでいるということになる。縄文人の末裔であるアイヌの人たちと弥生人の末裔である和人。東北にはまだまだ埋もれた壮大な歴史があった可能性があるのではないだろうか。


庭に咲いた彼岸花(曼珠沙華)

岩手の言葉

2008-08-30 09:11:42 | 文化
夜には庭でコオロギやスズムシが鳴くようになった。彼岸花の伸びるのも早い。釜石で生まれた人の話だと青森の言葉は全く分からないという。他所から来たものにはどの県の言葉も東北弁という一つの同じ言葉のようにしか聞こえない。かって南部氏が山梨から移り住み、南部氏の同族争いで弘前藩ができ、南部藩が今の岩手の大半と青森、秋田のそれぞれ一部を領有する形になった。弘前藩、南部藩いずれも山梨からの人たちで同じくアイヌの言葉の影響もあったはずだが現代ではかなり言葉が違って来ているようだ。岩手県内でさえ内陸部、沿岸部の違いは無論、内陸部と沿岸部それぞれでも違いがあるそうだ。沿岸部の釜石と隣接する内陸部にあたる遠野でも違いがあるようだ。釜石は魚業と鉄、遠野は農業という生活の違いがあり、山によって隔てられていることで個々に独自の言葉が発展したのではないか。岩手北部の一部には京都弁も影響しているとか。確かに岩手の言葉は柔らかい。発音は寒さの影響もあったのだろう。東北が北海道の守りに当たっていたので北海道弁にも影響したと思われる。


紅い夾竹桃

岩手県の地勢

2008-08-29 07:08:46 | 文化
岩手県の人口は140万人を切る。面積は北海道に次ぐ広さだが可住地面積が狭いため可住地面積では全国5位だそうだ。人口密度の低さもやはり北海道に次いで2位。100万の人たちが北から南へ流れる北上川に沿った北上盆地に住み、沿岸部に40万の人たちが住むという。沿岸部は特に高速の鉄道や自動車道がまだ整備されていないためやや孤立した感がある。森林面積も全国2位で赤松が多く、松茸が沢山採れることにもなる。木炭と生漆の生産が全国一だとか。気温は内陸部で冬は-20度になることもあるそうだが沿岸部は-6~7度程度で南ほど高くなり釜石では低くて-5度位だそうだ。愛知県で-2~3度を経験していると-5度はほとんど差を感じない。沿岸部は雪も先ず積もることがない。野生動物も多く、月の輪熊やニホンジカ、エゾジカ、ニホンリス、ニホンカモシカ、サル、数は減少したと見られているイノシシ。岩手マタギ犬という犬種があるようにかっては秋田、山形と同様岩手にもマタギがいた。縄文時代からの人の痕跡があり、アイヌの人たちが住み、次第にアイヌが滅亡し、一時アイヌの血筋の奥州藤原氏が治め、徐々に南部氏や伊達氏が治めて行った地だ。

甲子川堤に咲く向日葵

釜石の物価

2008-08-28 07:16:31 | 経済
夜中に雨が少し降ったようだ。今朝も曇り。昨日の最高気温が24度。風は秋風。晴れた夜には満天の星が見える。釜石は物価が遠野と比べると高い。ガソリンは遠野は盛岡より安い。遠野のガソリンは多分今まで行ったことのある岩手の都市の中では一番安い。釜石とはリッター当たり10円違う。食品も遠野の方がずっと安く、しかも野菜は新鮮。遠野は農業主体の町だから。面白いのは同じ魚が遠野では釜石産が売られ、釜石では静岡産が売られていたりすることがある。多分仕入れ業者の関係だと思うが。釜石の物価が高いのはその一因としてやはり新日鉄城下町だったことがあると思う。競争の必要がなかったのだろう。その体質がそのまま残り、みんなもそれを大半が受け入れているいるんだと思う。遠野へ買い物に行く人もしかし結構いるようだ。遠野までの自動車道ができたのでガソリン代を考えても遠野で買ったほうが安くなるからだ。

凌霄花 (のうぜんかずら)

新日鉄の名残

2008-08-27 09:20:01 | 文化
今朝は久しぶりに日射しが見られた。と言ってもまだまだ雲が多い。庭の赤の彼岸花の芽が伸びて来て、先に赤い花のつぼみが見えて来た。釜石は江戸時代から製鉄が行われていたらしいが製鉄中心に発展してきた街。新日鉄あっての釜石だった。今や新日鉄は火力発電所となり、街は支えを失った。しかし、甲子川上流には新日鉄時代のもう使われていない住宅地や工場跡がそのまま残っているところがある。南北を山に挟まれた狭い場所なのにもったいないものだ。街中にはのんべい横町があり、製鉄時代に工員たちが仕事帰りに安く飲み歩いたところだったようだ。今の釜石からは想像もできないりっぱな料亭も残っている。最盛期には人口も現在の倍以上だったようだから中心街を歩くにも他人の肩に触れながら歩く状態だったとか。今はまばらに歩く人を見かけるだけ。産業的には駄目なのかもしれないが下手に開発などしてもらいたくない街だ。他所ものの勝手な言い分か。


甲子川上流(内陸方向)と下流(太平洋側) 左右(南北)に山が迫る


近所の木槿の花

釜石の水の流れ

2008-08-26 13:02:56 | 自然
8月は雨や曇りがほとんどで気温も例年より低く、最高気温21~22度という日もあった。雨が降り続くとそれらの雨が山々の多くの落葉樹を潤し、秋には見事な景観に変わり、増水した川は瀬音高く、太平洋へ繋がる。隣接地遠野の川はさらに内陸へ向かい、北上川にそそぐ。釜石の川とは流れの方向が逆になる。太平洋側は三陸のリアス式海岸として知られるが、三陸沖では三つの海流が出会っている。北からの親潮(寒流)と南からの黒潮(暖流)、北上した対馬海流が津軽海峡へ入り込み、太平洋へ出て南下した津軽海流(暖流)の三つで、そのため暖流と寒流のそれぞれの魚が豊富に獲れる結果になっている。海岸部はリアス式ということで鋸の歯のように入り組んだ岩場のイメージが強いが、実際には岩場の間の大きな湾にはすばらしい多くの砂浜がある。こうした砂浜もチリ地震の津波の影響で護岸工事をされているところも多いが、中には自然のままの砂浜もあり、しかも砂浜として規模も大きい。海に山が迫っているいるので風も安定してあるため山には国内最大規模の風力発電の羽根が50機近くある。景観的には残念だ。


夏の花たち(朝顔・くちなしの花・百日紅・オニユリ)

山の幸

2008-08-25 07:46:02 | 自然
5~6月頃にはどの山でも高原に沿った道路端で多くの車が止められているのが見られる。山菜採りの人たちだ。熊避けの鈴やラジオを携帯し草木を分けて山に入り込み、人の姿は見えない。ウドや蕗、行者ニンニク、タラの芽、タケノコなどを採っている。ウドや蕗も人からもらうだけで自分で採りに行くことはないがもらったものでも新鮮なものはやはりうまい。採ったばかりのタケノコを使ったタケノコ尽くしの料理を人の家で食べさせてもらったがこれも本当にうまかった。これから秋にはキノコ類が採れ、シメジ、舞茸、なら茸、松茸の他、名前も聞いたことのないキノコが沢山採れるそうだ。前にも触れたが高原地帯には牛や馬が放牧されていて山の植物はこれらの栄養源になっている。岩手は畜産にも力を入れていて牛は良質の肉牛として育てられており、前沢牛をはじめ各地の名称の付いた牛肉が売られている。前沢牛も神戸牛や松阪牛に劣らずいい味をしている。馬は食用や競馬用に使われるようだ。岩手の競馬も北海道のバンエイ競馬と同じでソリに荷重をかけてそれを馬に引かせるものだ。滝沢町のチャグチャグ馬っこではいろんな種類の馬がいたがどうも道産子ではないかと思われる馬が多かった。


遠野の荒川高原(たくさんの馬や牛が放牧されている)


釜石は今日も雨(松葉の背後に離れた霧さぶる山が控える。まるで梅雨)

海の幸、川の幸

2008-08-24 11:07:08 | 自然
昨日から雨がずっと降り続く。南北にそれぞれすぐそばにある高さ100mもない山々にはいつものように上半分には霧が掛かる。釜石は漁師の街でもあり、市内にはいくつか漁港がある。魚市場や一般客用の以前は橋上市場と言われたサン・フィッシュ釜石がある。サン・フィッシュでは土産用を含めた新鮮な海産物が売られ、生ウニやホタテ、各種の魚、タコやイカが並べられている。採れたてのウニなど本当にうまく、これがウニだったのかとウニをはじめて食べた思いだった。地元の人の話だと北海道とは種類が違うそうだ。この時期のイカ刺しも実にうまい。アニサキスがいるのでちょっと心配だが獲れたてのイカを刺身にして何度かもらったが店で買っても地元なのでうまいが、やはり獲れたては二味違う。隣の大槌町にはさる宮様もこられる寿司屋があり、店自体は普通の店だが、ここの寿司は人に勧められて行ってみたが新鮮なネタを使って絶品の味を堪能させてくれた。値段も味わえば決して高くない。川魚も甲子川のどこででも糸をたれればイワナやヤマメは必ず釣れる。釣った魚を塩焼きして食べるとこれもうまい。都会の高級レストランでは味わうことのできない高級な食べ物。


釜石湾の隣の両石湾での船釣り ナメタガレイ

釜石市

2008-08-23 09:33:07 | 自然
釜石市は人口4万。新日鉄の最盛期には10万人だったそうだ。今でも鉄の町と称するが面影しかない。鉄の歴史は江戸時代に遡る。地勢は山間を縫って東西に走る甲子川(かっしがわ)に沿ったわずかな平地に人が住む極めて土地の狭い街。ただ甲子川はこの地域の他の川同様アユ、ヤマメ、イワナをはじめ秋には鮭も遡上する。周囲の山には以前にも触れたが月の輪熊やニホンジカやエゾジカ、リスなど野生動物が住み、山の高原地帯にはいくつか馬や牛の牧場が散在する。山には海岸近くの風を利用した風力発電の白い羽根が立ち並ぶところがある。個人的には景観を害して好ましくない。山菜に恵まれ、秋には松茸まで獲れるそうだ。三陸沿岸部は松茸の産地だということをこちら来てはじめて知った。気候は春が非常に長いという感じ。なにしろウグイスが4月から8月まで鳴いている。そのため花は豊かに咲き、暑くならないで害虫が少ないためか花や葉っぱが非常にきれいだ。雨上がりには周囲の山々から水蒸気が立ち上り所によっては幻想的ですらある。アイヌ語の影響を受けていると言われる気仙語に近い言葉で、人柄は良く、優しい人たちが多い。岩手県は四国4県の広さがあり、その大半が山で北上川に沿った南北の内陸部と太平洋側の沿岸部は互いに孤立した感じでそれだけ特に沿岸部は交通が不便な分街の個性が良くも悪くも引き継がれている。冬など隣の遠野は雪が積もるが釜石は全くと言っていいほど雪が積もることがなく通勤が楽だ。トンネルを抜けるとそこは雪だったことが何度もあった。


太平洋に流れ込む甲子川沿いの街


釜石の市の花 海岸の岩場に咲くハマユリ(根浜海岸にて)

気仙川のめがね橋

2008-08-22 08:49:58 | 自然
今朝は釜石は気温が17度。涼しいと言うより、半袖だと寒い。釜石でも異常らしい。釜石に隣接する遠野には宮沢賢治の銀河鉄道の夜の元風景となった宮守川に架かる5連アーチのめがね橋があるが、同じく、釜石に隣接する人口6500人の林業の町、住田町にもめがね橋がある。アユやヤマメ、イワナが釣れる気仙川の上流に葉山のめがね橋として知られる。お盆の時期には毎年ライトアップされるそうだ。この橋の下には弁慶の足跡がある。義経の北行伝説のルートにあたる。平泉から水沢江刺を抜け、この住田町のめがね橋から赤羽峠を越え、遠野に至る。峠越えで義経の愛馬小黒号が倒れる。当時気仙川に沿って追手を逃れ、このめがね橋付近で清流の水を飲み、峠越えに備え、生気を回復させたのだろうか。車の通りが多い遠野のめがね橋より普段人の訪れない住田のめがね橋の方が好きだ。川岸は白い花崗岩のような岩が占め、一時の憩いの場所となる。


めがね橋上流(中央やや右の岩肌を滝水が流れる)


めがね橋とその奥が気仙川下流