釜石の日々

台風21号

先週から今日も曇天続きで、スッキリとした秋空が見られない。もう日中から虫たちが鳴き、その虫たちに競うように、ミンミンゼミが最後の歌を歌っている。日本列島には台風がまた近付いているので、しばらくは晴れ間が見られそうにない。ニュースでは、「非常に強い台風」とか、「今年最強の台風」などと報じられている。先には西日本の集中豪雨で大きな被害が出た。岩手県の西隣りの秋田県は、1600年の関ヶ原の戦いで、積極的に徳川の支援に回らなかった常陸の佐竹氏が家康の命で1602年に国替えをされて、佐竹氏の久保田藩が始まった。その佐竹氏による秋田支配の始まりを支えたのが、若干33歳で家老に抜擢された渋江政光である。渋江は久保田城の築城や農政、財政にことごとく手腕を発揮し、中でも農政は渋江田法と呼ばれ、幕府までも参考にしたとされる。その渋江は農政の一環としての林政をも重視し、「国の宝は山也。然れ共伐り尽くす時は用に立たず。尽さざる以前に備えを立つるべし。山の衰えは則ち国の衰えなり。」と唱え、江戸時代に全国に広がって行く植林事業の草分けとなった。太平洋戦争後、国は戦中に伐採されて荒廃した山林を立て直すために、復旧造林を大々的に全国に拡大した。この造林は戦後の20年間に度々発生した自然災害を防止する目的でもあった。毎年のように甚大な風水害が発生していた。しかし、1975年以後は、急速に造林面積が減少して行った。次第に海外の安い木材が輸入され、国内の山林の整備は損なわれて行く。そして、それと並行するように宅地開発が全国で展開され、土砂災害の危険性を無視した開発が行われて来た。自然災害から守られるための造林はすっかり忘れられ、今年5月には「森林経営管理法」が注目されることもなく成立してしまった。林産大企業が安易に短い樹齢の木材を伐採し、大量需要と木材の回転を早めようとするもので、木材の持つ本来の特質や防災の観点は全く無視されている。多くの山野で植林されて来た杉は、伐採後に、昔ながらに時間をかけて乾燥させて初めて、殺菌や発酵促進効果が生まれる。しかし、現在は、回転を早めるために、短時間で高温乾燥され、その過程で、それらの効果が失われ、乾燥後に、防腐剤プールに漬けられ、殺虫剤まで散布されている。輸入木材と同じ処理をされている。日本の伝統の酒や醤油、お酢などの発酵を要するものは、本来、樹齢何百年と言う木材を使って作られた桶で初めて良質のものが生まれる。秋田杉で作られる大館市の伝統の「曲げわっぱ」などは樹齢が200年以上のものを使わなければ、折れてしまうと言う。バブル崩壊後は、規模の大きい生産者の立場での法改正が次々に登場して来た。しかし、山林の伐採は大きな自然災害の発生に繋がる。今回の台風21号は、米国ワシトン・ポストThe Washington Post紙によれば、「Category 5 Super Typhoon Jebi is the planet’s strongest storm of 2018 so far」と報じられている。Jebiと名付けられた最大カテゴリー5のスーパー台風(台風21号)は2018年の地球上で最も強い暴風雨だと言う。また、世界の気象関係者の情報交換サイトであるWeatherMatrix には、「Jebi approaches Japan as a life-threatening typhoon」と題する記事が載せられている。21号は日本に人命の脅威をもたらす台風だとして警告している。上陸時の最高の瞬間風速は約175-195 km / hにも達して、大きな被害をもたらす可能性があるとする。さらに本州中部の山々では400mmの雨が降る可能性があり、洪水や突発的な土砂崩れに注意する必要を訴えている。首都圏でも豪雨を免れても、突風被害は起こりうるだろうとしている。
山裾の鹿
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