釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

「マタギ」の伝統

2018-11-22 19:14:48 | 自然
昨日頃から体調が回復して来た。夕方もいつもよりはペースを落としてウォーキングにも出かけられた。先週末、体調を崩す直前に、職場の匠の方の奥様たちが娘とともに隣の住田町の骨董品店へ出かけた。娘が帰宅した後に、奥様から連絡があり、匠の方達が親子グマを仕留めて、解体を始めるので、いかがかとのお誘いであった。とても好奇心の強い娘は一つ返事で、出かけることになった。匠の方の薪ストーブのある「小屋」のそばにはすでに親子グマが横たわっていた。「マタギ」が捕えた獲物は、二度の儀礼を経て解体される。解体されたクマは全てが利用される。捨てられるものはない。初めての解体に、娘はむしろ感動していた。「マタギ」の手際の良さにも惹きつけられていた。1週間前に同じクルミの木のあるところで、2匹の子グマを連れた親子グマ3頭を仕留めていた。クマは雑食だが、鹿の肉を食べているクマの脂肪は黄色を帯びているそうで、脂肪としては質が落ちるのだと言う。やはりクルミのような植物性のものを食べたクマの方がずっといい脂肪が得られるのだそうだ。「熊の胆」と言われるが、実際、クマの胆のうは貴重で、親グマのものだと30万円近くにもなると言う。それを知らずに、知人に頼まれて、つい子グマの胆のうを分けて欲しいとねだってしまった。知っていたら、とても頼めなかった。皮も脂肪も肉も内臓も全てが、特にクマは貴重なのだ。来ていた巨匠は、もう今年はこれ以上は獲らないように、忠告していた。例年だと獲りたくとも、せいぜい1年に1頭しか獲れないそうだ。岩手に来て早々、伝統の「マタギ」が生き付いていることを知った。山を敬い、そこで育まれる動植物を尊ぶ文化が根付いている。かっては、山には狼もいて、動物の繁殖に自然界の調整があった。しかし、その大事な役割を果たしていた狼を人が駆逐してしまった。今では「マタギ」がその役割を担っているが、「マタギ」も高齢化が進み、東北では「マタギ」の不足がむしろ問題となっている。鹿の過剰な繁殖や、イノシシの北進が農作物の被害を広げている。野生動物と人間の共存が理想であり、基本的には自然界の動物の殺傷には反対だが、被害を及ぼす過剰繁殖には、一定のルールでの駆除は止むを得ないだろうと考えている。「マタギ」はそれを最も重視しているようにも見える。銃で撃つことでも、腕を磨き、1発で苦痛を与えず、適所を狙って撃つ。この小屋に集まっていた3人の「マタギ」はいずれも抜きん出た人たちである。
巨匠の手で、子グマの解体から始まった

台に載せられた親グマ

解体の手際に魅入る娘

使われた猟銃の1つ

「熊の胆」

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3 コメント

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Unknown (tgk)
2018-11-23 10:46:41
いつも拝見しています。狼絶滅は、人の乱獲と記されていますが、母が言っていたことでは、犬のデスペンサー?の流行がもとだったようです。
イノシシもトンコレラで絶滅したと言ってました。近頃県南で見られるようですね。
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Unknown (tgk)
2018-11-23 10:56:36
デスペンサー→ディステンパーでした。
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tgkさんへ (管理人)
2018-11-24 15:53:21
狼は確かにジステンパーの影響が大きいのかも知れませんね。それに恐らくは人による駆逐が輪をかけた形になったのかも知れませんが。どちらにしろ、今は自然界の野生動物のバランスが崩れて来ているようですね。あまり、人の影響を与えることなく、バンランスを回復出来ると良いのですが。いつも貴重なコメントありがとうございます。
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