釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

着々と進められている中国の第4次産業革命

2023-09-05 19:12:04 | 社会
先月5日、日本経済新聞は、「中国の自動車輸出、日本抜き世界首位 1~6月EVけん引」を載せた。トヨタが主導して来た日本の自動車産業の衰退が明確になって来た。日本はかって半導体でも世界のトップの座にいたが、今では見る影もない。1988年、日本は半導体のシェアで世界の50.3%を占め、首位に立っていた。この時、米国は36.8%であった。アジアはわずか3.3%でしかなかった。現在では日本の半導体シェアは10%にも満たない。何故そこまで落ちぶれたか。自動車と同じで、半導体も米国にとって脅威となった日本を抑えるために、米国は1986年と1991年の二度にわたって半導体協定を求め、結果的に日本の半導体はシェアを失い、間隙を狙った韓国、台湾に追い越されてしまった。台湾の半導体世界最大手TSMCが熊本県に進出するニュースが報じられたが、これは日本からTSMCに頼んで来てもらったものだ。費用の半分をソニーとデンソーが負担し、残り半分を政府が負担する。この熊本の工場は先端の半導体を生産するものではない。2021年10月18日、Impress Watchは、「日本に「最新でない半導体工場」を作る理由。TSMC新工場」を載せている。「現在、TSMCが作っている最新の半導体は5nmプロセス。iPhoneやMacBookに使われるAppleシリコンのうち、最新のM1やA15 Bionicはこのプロセス技術で製造されている。その次の7nmは、PlayStation 5やXbox Series Xで使われていることで有名だ。 」、「この工場で作るのが「22~28nmプロセス」半導体である、ということだ。 」、「「半導体不足」というといかにも最新の半導体が足りない、というイメージを持つが、実際にはそうではない。最新プロセス技術のものも供給に限りはあるが、むしろそれ以外の、既に枯れた技術で作られている半導体の多くもまた、足りないのだ。特に自動車産業で不足していると言われているのが、この種の「最新ではないが十分な性能を持つロジック半導体」である。 」。要は、日本では最先端半導体は無論だが、自動車産業が必要とする汎用半導体をも生産出来る工場がなかったと言うことだ。半導体は久しく「産業の米」と言われて来た。その「米」を日本はすでに必要分さえ生産出来なくなっている。2011年に世界で「インダストリー4.0」とか「第4次産業革命」言われる産業改革の推進が打ち出された。製造業においてオートメーション化およびデータ化・コンピュータ化を目指すと言うものだ。しかし、日本も米国もサービス業、第3次産業が7割を超えており、製造業は3割を切っている。今月2日、米国The Washington Postは、「New phone sparks worry China has found a way around U.S. tech limits(中国が米国の技術制限を回避する方法を見つけたとの懸念が広がる新型携帯電話)」を載せ、米国による中国への半導体規制を中国企業が技術的に回避出来たことを報じた。中国は製造業など第2次産業が3割を超え、サービス業など第3次産業は4割ほどだ。中国の第2次産業の就業者数は世界一で、2億1000万人を超えている。この中国の製造業のあり方が、日本や米国、特に米国とは異なり、デジタル技術のあり方も大きく異なっている。今年7月23日の米国The National Interestは、香港を拠点とするAsia Timesの副編集長デビッド・P・ゴールドマンDavid P. Goldman氏の書いた「Why America Is Losing the Tech War with China
(米国はなぜ中国との技術戦争に負けるのか)」を載せている。かなりの長文だ。「西側メディアは、世界最大の通信インフラ・メーカーであり、米国による世界的な弾圧キャンペーンの標的となっているファーウェイを中心に展開されている、産業オートメーションにおける中国製パイロット製品の驚くべき数々を、ほとんど無視してきた。完全に自動化された工場、鉱山、港湾、倉庫はすでに稼働しており、北京では初の商用自律走行タクシーサービスが始動している。ファーウェイの関係者によると、同社は中国国内で1万件のプライベート5Gネットワーク契約を結んでおり、そのうちの6000件は工場だという。ファーウェイのクラウド部門は、中国企業が自社のデータを使って独自のAIシステムを構築するのを支援するためのソフトウェア・プラットフォームを立ち上げたばかりだ。」、「中国は、AIと高速ブロードバンドのビジネス生産性への応用でリードしている。」、「また、チップにとどまらず、米国はより広範な産業政策を検討するどころか、そのような政策の実施に着手していない。」、「欧米のアナリストは、技術規制が中国に与える影響を過大評価し、中国の技術規制回避能力を過小評価している。」、「純粋なチップの速度よりも重要なのは、適切なデータの入手可能性、それを迅速かつ便利に転送する能力、そして全体的なシステム・アーキテクチャである。」、「中国の5G基地局数は2021年に倍増の143万局、2022年には世界合計300万局のうち231万局に増加した。」、「決定的な問題はビジネスの生産性だ。ファーウェイをはじめとする中国企業は現在、クラウドベースのAIサービスをトレーニングやコンサルティングとともに提供し、何千もの企業に新技術を広めている。」、「ファーウェイの参入は、製造、製薬研究開発、鉱業、鉄道、金融、その他の業界の顧客のためにAIシステムを訓練すると張氏は述べた。」、「米国と中国のAIへのアプローチは異なる。米国の偉大なテクノロジー企業の1兆ドル規模の評価は、主にコンシューマー・エンターテインメントから生まれている。ファーウェイのチャンが言うように、中国には詩を読んでいる暇はない。機械がいつ感覚を持つようになるのか、AIがいつ人間に取って代わるのかを推測するよりも、中国は雑務の自動化に重点を置いている。」、「米国の5Gネットワークは中国の半分の速度だ。また、米国の5Gネットワークの中には、それ以前の4Gネットワークよりも待ち時間が長く、自律走行車のようなアプリケーションには使いにくいものもある。」、「中国は5Gを産業技術として捉えており、5G2B(5G to ビジネス)が売上を牽引すると予想している。」、「中国は先月、6GHZ帯の周波数を5Gおよび6Gサービスに割り当てた最初の国となった。」、「米国の周波数割り当ては、モバイル・ブロードバンドよりも無線LANを優遇しており、6GHz帯のほぼすべてを「免許不要の利用」、つまりWi-Fiに割り当てている。」、「ブロードバンドは、非正規雇用の割合が高い国々に変革をもたらす。決済システムをスマートフォンに搭載し、これまで社会から疎外されていた人々に銀行業務と信用供与を開放し、起業家に情報と販売機会を提供する。ブロードバンドは、教育や医療などのサービス提供にかかるコストを削減し、新たな産業を育成する。」、「5G2Bと人工知能がもたらす恩恵は、このように具体的で目に見えるものだ: より安価な工業製品、より効率的な港湾、自動運転車の配備などである。」、「中国への技術輸出に対する米国の制限は、戦略的に最も大きな影響を与えるAIアプリケーションの展開を止めたり、遅らせたりはしていないようだ。同時に、中国への販売制限は米国半導体企業の収益を減らし、研究開発予算を危険にさらす。」、「半導体業界は、その研究開発要件の規模においてユニークである。2021年の売上高6,000億ドルに対し、研究開発予算は2,000億ドルである(市場の軟化により、実際の総額は1,600億ドル以下になるだろう)。売上高の3分の1を研究開発費に充てている産業は他にない。世界最大の産業である自動車は、売上高の約14分の1を研究開発に費やしている。中国で収益の3分の1を稼ぐクアルコムや、収益の5分の1を稼ぐエヌビディアのような企業にとって、CHIPS法で受けられる支援は、連邦政府の規制によって失われる収益を補うものではない。これらの企業はバイデン政権に対し、中国に対する規制を緩和するよう働きかけている。」、「中国への技術輸出規制はせいぜいその場しのぎだ。チップ露光装置の世界的トップメーカーであるASMLが言うように、毎年、世界の他の国々の合計よりも多くのエンジニアを卒業させている中国は、最終的には独自の代替品を開発するだろう。」、「規制はいくつかの点で中国に高いコストを課しているが、第4次産業革命の妨げにはなっていない。」、「1983年、米国はGDPの1.2%、米国予算の5%を連邦政府の研究開発に充てていた。現在では、連邦政府の研究開発費はGDPのわずか0.6%、連邦予算はわずか2%である。  中国に対する技術的優位性を維持するためには、さらに数千億ドルを費やし、高度な技能を持つ労働力を育成し、科学者やエンジニアを教育するか輸入し、製造業に幅広いインセンティブを与える必要がある。中国を抑え込もうとしてももう遅い。それはもはや我々の力には及ばない。私たちに残された力は、米国の優位性を取り戻すことである。」。中国は半導体の障壁を自ら技術的に切り抜けており、世界中どこにも見られない第4次産業革命をも見事に果たしている。その広がりと規模を見ると、もはや中国は米国の手の届かないはるか彼方まで来ている。


百日紅

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