釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

「「所得格差」が人の心と社会を破壊する」

2019-12-02 19:18:07 | 社会
フランスを拠点に、フォーチュン・グローバル500企業をはじめ数多くの欧州企業に対し、国際経営・事業・組織コンサルティングを行い、パリ第9大学非常勤講師をも務める永田公彦氏が、Diamond Onlineで、「永田公彦 パリ発・ニッポンに一言!」と題する連載記事を載せている。本日の記事は「日本の劣化が止まらない、「所得格差」が人の心と社会を破壊する」と題されている。英国の経済学・公衆衛生学の研究者であるノッティンガム大学リチャード・ウィルキンソンRichard Gerald Wilkinson名誉教授の2009年に発表した「所得格差」と「人と社会の健康状態」の相関関係を示した調査研究を紹介している。この研究は、所得格差と人と社会の健康状態が相関していることを明らかにしている。2009年当時は、調査対象の中では、日本が最も格差が低く、米国が最も高くなっている。上位20%の富裕層の平均所得を下位20%の貧困層の平均所得で割った所得倍率を、2003~2006年の期間と2010~2017年の期間で比較すると、日本は3.4倍から5.6倍に格差が大きくなっている。この格差の増大と共に、確かに精神疾患や犯罪の増加した具体的なデータが示され、「国語力や数学力の低下を指摘する調査や文献も多くでてきています」として、学力低下にも触れている。「格差の拡大は、人々の倫理観の低下を招き、犯罪、暴力やハラスメント事件を増やし、ストレスと心の病を持つ人を増やし」、「社会全体が他人を信用しない、冷たくギスギスしたものになる」。フランス革命を例に、「格差が、社会の分断、暴動や革命を引き起こすことを示す歴史上の事実は多く」あることを述べ、さらに「所得格差が異なる宗教、民族、地域アイデンティティ、政治的イデオロギーと重なるとさらに厄介」だとして、現在の香港の混乱を挙げている。所得格差を示す指標の一つにジニー係数Gini Coefficientがある。ジニー係数は、所得が完全に均等に分配されている場合が0で、1に近付くほど不平等度が高いことを意味する。香港は現在、過去45年間で最もこの係数が高くなっていて、0.539である。米国が0.411で、中国が0.468である。厚生労働省の調査結果による2017年の日本の係数は0.5594である。9月2日のNewsWeek日本版は、香港大学アジア・グローバル研究所特別研究員シエン・リエンタオ氏と香港国際金融学会議長シアオ・ケン氏共著の「Hong Kong's Real Problem Is Inequality(香港の本当の問題は不平等)」と題する記事を載せている。「住環境のひどさは特に顕著だ。1人当たりの居住空間は上海の24平方メートルに対し、香港はわずか16平方メートル。さらに、香港市民の45%近くは公営住宅や補助金が支給される住宅に住んでいるが、中国では90%の世帯が1軒以上の住宅を所有している。」こうした住環境を改善しようとしても、「立法会は中国政府と違って、既得権益を黙らせるような厳しい改革を断行できない。さらに、公的住宅の建設に土地を割り当てるなど、不動産価格を下げるような政策を実行しようにも、反対する不動産業者は立法会に強い影響力を持っている。 香港で抗議を続ける人々は、自分たちの声が届いていないと思っている。しかし、彼らを見捨てているのは、中国政府ではなく香港のエリート層だ。」と書いている。格差が拡大すると、どこの国でも富裕層が政治に大きく影響するようになる。ある意味では、資本主義国ほど、それが強まる。日本で格差が広がったのは、実質賃金が伸びていないためである。超低金利の恩恵は米国同様に富裕層だけが受けている。10月31日の東洋経済の「日本経済はどんな病気にかかっているのか」と題する論考で慶應義塾大学商学部権丈善一教授は、「1 人当たり生産性は伸びているのに賃金が伸びない。問題は、労働分配率の低下傾向、さらには、所得分配の格差のあり方にあることは言うまでもない。つまり、この国の経済が抱えているのは、「成長」問題よりも、「分配」問題なのである。」と論じている。

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2 コメント

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ナガタキミヒコ (永田公彦 )
2019-12-04 14:38:40
明解にまとめていただいてたのでシェアしました。有難うございました。
他の記事も拝見させていただきましたが、視点が鋭く素晴らしいです。今後も読ませていただきますので、よろしくお願いします。
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永田さんへ ( 管理人)
2019-12-04 23:20:12
過分なコメント、とても恐縮します。いつもただ思いつくままに書き綴っているだけのもので、少しでも参考になれば幸いです。自然や歴史なども大いに興味があるのですが、経済関係の記事に関心を持たれる方が多いようで、自然や歴史を書いている時より、訪問数が多いので、つい、最近は経済関係を書くことがほとんどになってしまいました。今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
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