釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

資本主義の自壊

2019-12-03 19:13:19 | 社会
財務省が発表している「平成31年(令和元年)度国債発行予定額」を見ると、新規国債発行額が32.7兆円で、借換債、つまり借金返済のための借金が103.1兆円で、その他復興債と財投債合わせて12.1兆円で、今年度の総国債発行額は148.7兆円となっている。今年度の税収見込みは62.5兆円である。財務省が6月末として公表している国債残高は1040兆9806億円である。この残高に毎年30兆円を超える新規国債、借金が積み重なる。10月からの消費税増税も軽減税率やまたも持ち出されている法人税減税などで、焼け石に水でしかない。以前からメディアでは、国債は日本人が保有しているから、安全だとされ、暴落などは起きないと言われて来ている。令和元年6月末(速報)の財務省の「国債等の保有者別内訳」を見ると、1041兆円の国債の海外保有率は7.4%となっている。しかし、やはり政府の借金である95.9兆円の国庫短期証券は71.6%が海外保有である。しかも、国債の現物の流通市場における海外の割合は年々増加し、現在は20~30%程度を占め、これが現物ではなく先物市場となると海外が5割を超えている。国債の金利、利回りは先物と現物で相関係数は0.8~1.0の範囲となっており、先物で金利が上がれば、間違いなく現物も金利、利回りは上昇する。発行済みの国債の保有状況だけを見て、安心などとは言っておれないのだ。バブル崩壊後の30年で、気が付けば、日本の巨大企業は外資、特に米国が実質保有になってしまった。国債の現物の流通市場は、日本銀行の買いで、すでに自由市場ではなくなっており、銀行や保険会社、年金基金などは、国債保有が限られ、超低金利で利益が出ない分、高利益を求めて米国の高リスクの資産に資金を投じている有様だ。市中金融システムを犠牲にしてまで日本銀行が国債を高値で、従って金利(利回り)を低く抑えて保有しようとするのは、政府の金利負担を軽減するためでしかない。今世紀に入り、政府の借金は増大し続けているにもかかわらず、日本銀行の超低金利により、政府の利払い額は毎年ほとんど変わっていない。資本主義の自由市場機能が機能していれば、とてもあり得ない状態である。現在の日本の株式市場も同様だ。本来の自由な株式市場であれば、日本の株式市場は、現在の価格すら維持出来ないだろう。中央銀行が株式を直接購入する異常さと、政府系金融機関の支えで維持された株式市場である。国債市場と株式市場にこれだけ公的介入がなされれば、もはや日本は中国と大差ない。米国、EUも多少の差はあるが、やはり中央銀行が大きく介入しており、資本主義主要国が社会主義化し、共産国中国が資本主義化しつつある。各国とも格差の拡大と政府債務の増大が相関している。資本主義経済が機能するには厚い中間層の存在が必要なのだ。厚い中間層が存在した時に、消費が最も増大する。新自由主義が、この中間層を破壊して来た。戦後の米国の黄金期も、日本の高度成長期やバブル期には中間層が厚かった。米国も日本も成長して大きくなった企業が、自社に有利になるよう政府に働きかけ、本来必要な規制を次々に「規制緩和」の名で取り払い、目先の利益だけを追求するようになった。人材は、単に、利益追求の駒でしかなくなった。バブル崩壊で深刻な痛手を負った巨大企業は、以後、利益を得ても、守りを固め、投資よりも内部の貯蓄、いわゆる内部留保に努めるようになった。企業が適切な投資を行わないために、政府は無理をしてでも景気を浮揚しようと、借金を重ねて来た。9月2日に財務省が発表した法人企業統計によれば、2018年の企業の内部留保は7年連続過去最大を更新し続け、463兆円となった。日本銀行の超低金利と財務省の直接の為替介入による円安で、トヨタは販売台数以上の過去最高の利益を出している。純利益は1兆2749億円である。そして、輸出企業であるトヨタには消費税が還付されており、2017年度は推計で3500億円にもなっている。この上、まだ法人税の減税が今、検討されている。バブル崩壊後、デフレで物価が上がらない中、もはや家庭の必需品とも言える自動車だけは値上げして来た。崩壊した中間層の回復に手が打たれない限り、政府債務の増大と消費縮少による経済低迷は続かざるを得ない。そして、いずれ遠からず、極限を迎えるだろう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿