釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

最長の景気

2019-07-06 19:18:31 | 経済
日本政府は今年1月29日の月例経済報告で、2012年12月から始まった景気回復の期間について「戦後最長となった可能性がある」とした。また、米国も今月1日の独立記念日に2010年以来121ヶ月に及ぶ過去最長の景気拡大となったと報じられた。こうした表現はいかにも経済が順調であるかのように思わせてしまう。日本では景気「回復」と称し、米国では「拡大」と称する。いずれも基本的にはGDPをもとに景気を判断している。GDPが横ばい状態の日本は、さすがに「拡大」とは言えないのだろう。経済成長率が過去10年で年平均2.5%とされる米国は、「拡大」としている。しかし、今月1日のロイター通信は「America’s record recovery runs on borrowed time(アメリカの記録的な回復は借りた時間の上を走っている)」と題する記事を載せ、「回復」としている。世界は今や官民合わせて250兆ドルもの債務が積み上がっており、日本や欧州などのマイナス金利の国債が13兆ドルに達している。巨大な債務で支えられて来た「回復」なのだ。債務は将来の先取りであり、まさに「借りた時間」だ。米国の戦後4回の「景気回復」のうち3回は1990年代以後だが、金融バブルの崩壊の先陣を切ったのは日本である。1980年代後半に金融バブルとなり、1991年にそのバブルが弾けた。金融バブルは低金利により生み出される。その低金利のきっかけは、景気悪化であり、従って、景気悪化が低金利を導き、その低金利が金融バブルを醸成し、バブルが弾けると、当然、景気は悪化するため、低金利が繰り返される。こうして、先進国は低金利の地獄から抜け出せなくなっている。この状況を海外では「Japanize(日本化)」と表現する。特に日本は景気悪化から抜け出すために、膨大な国費を費やした。現在、何とかGDPの横ばい状態を維持出来ているのは、この国の借金で支えて来たからだ。政治は自己の政策の妥当性を維持するために、株価の維持を必要とするため、ゆうちょや年金積立金、日本銀行にまで株式に資金を投入させている。国債残高の半分まで日本銀行が購入することで、超低金利を維持している。膨れ上がった政府債務を持たせるには、この超低金利をいつまでも続けなければならない。資本主義では本来、国債をはじめとする債券市場や株式市場は民間の資金による売買で、金利や株価が決まるが、日本ではもはやそうした「自由市場」は存在せず、政府系金融や日本銀行により決まる異常な世界となってしまった。問題はこれがいつまでもは続けられないことだ。2008年の「100年に一度」と言われる金融危機後、米国も日本ほどでないが、やはり低金利状態が続き、そのため、今や2008年直前をはるかに超える金融バブル状態となっている。つい先ごろも米国の株式市場は、最高値を更新した。米国債も低金利となり、国債価格が高騰したバブル状態であり、企業が発行する社債はさらにそのバブルが大きい。史上最高のバブル状態でありながら、このバブルが弾けた際に、どの政府も中央銀行も対処する手段が極めて限られている。金利を今以上に下げるための余地はほとんど残されていない。しかも、政府が国費を投じようとしても、日本などはその国費さえもが、債務として、すでに返済不可能な高みにまで上っている。現在、世界は景気後退の影が見えて来ている。すでにどこかでブラック・スワンが飛び立っているかも知れない。米国の投資家の何人かは、今年の秋から年末にかけて、株式の暴落が起きると見ている。これが1〜2年かけて、本格的な金融危機に発展して行くだろう。ジム・ロジャースの言う「誰も経験したことのない」世界が現れるだろう。
雨の中で咲く桔梗

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