釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

ヒヨドリ

2013-09-22 19:17:43 | 自然
今日は昼過ぎまで雲の多い日であった。気温は23度まで上がって、昨日より低い。昨夜、家の外へ出てみると、空がまだ丸い月に明るく照らし出されていた。地上は近代以後は特に急速に変化したが、空の月はいつの時代も変わらず同じように地上に光を投げかけていた。日本にいた旧石器時代の人たちも、万葉の歌人たちも、同じような月を見ていたのだ。形を変える月を見て、不思議に思えただろう。神秘的な月に「神」の意志を見出し、満月の日に儀式を行ったりもしていた。丸い月を見ていると、浪漫をかき立ててくれる。 家の庭には毎日スズメとセキレイ、ヒヨドリがやって来る。いずれも日本には太古からいた鳥たちだ。この中でヒヨドリだけは渡りをやる。それも日本の中でだ。主に北海道から冬になると本州方面へ渡って来る。1年を通して暖かい地域では渡りをやらないで留鳥として過ごす。関門海峡や津軽海峡では春や秋には何千羽ものヒヨドリが海峡を越える。この時期にはこの集まったヒヨドリを狙ってハヤブサなどの猛禽類も集まって来る。この渡りはヒヨドリたちにとって命がけだ。猛禽類を避けて低空飛行することもあるため、波に飲まれるものも出て来る。兵庫県神戸市の一ノ谷は源義経の「ひよどり越え」で知られている。この谷のある山をヒヨドリたちが春と秋に越えて移動する。この一ノ谷に陣取る平家を討ち取るため、山上から義経は鹿が下るのであればと、急斜面を馬で駆け下りて、平家を討った。まさにヒヨドリたちと同じように山を越えて谷へ下った。万葉集や古今集では「呼子鳥」が詠われている。この鳥は一般的にはカッコウだと言われるが、ホトトギス、ツツドリの他にヒヨドリもその候補に上げられており、正確には分かっていないようだ。鏡王女の歌に「神奈備の伊波瀬の社の喚子鳥いたくな鳴きそわが恋益る」があり、志貴皇子の歌に「神名火の磐瀬の社のほととぎす毛無の岳にいつか来鳴かむ」がある。同じ「いわせのもり」であるところから、「呼(喚)子鳥」はホトトギスなのかも知れない。蛇足だが、「いわせのもり」はどこなのか同定されていないが「大和のどこかには違いない」とされている。どこだか分からないが大和は間違いないと決めてかかっている。『謡曲のなかの九州王朝』では古地図で「博多から西へ古代国道ぞいにあり」とされている。ヒヨドリも月と同じく旧石器の時代の人たちにもなじみのものだったろう。ヒヨドリは東アジアでも日本に最も多く分布している。
紫露草

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