釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

世界経済の移行期

2018-06-20 19:14:42 | 経済
米国の大統領は自国の製造業とその雇用を守るために、貿易の一部に関税を引き上げようとしている。輸入品に税をかけることで、国内製品の競争力を回復させようとしている。自由の国で、自由貿易を推進て来た国が保護貿易に転換している。第二次大戦の敗戦国である日本やドイツがどん底の経済状態から経済成長して、経済大国となったのは、米国が関西と言う貿易品への課税を緩やかにする自由貿易を推進して、安い日本やドイツの製品を輸入してくれたおかげだ。しかし、そのために米国の日本やドイツと競合する製造業は賃金コストで太刀打ち出来ず、敗れてしまった。1990年代後半からは、中国がそれまでの日本やドイツに代わり、安い賃金で製品を作るようになり、米国、日本、ドイツも中国に工場を移したり、外注することで、安い製品を作るようになった。この過程で、当然、技術も中国に伝わる。かって、日本やドイツが経験したことを、今中国がやっている。一度経済大国となり、賃金の高さを経験すると、中国と同じ産業で競争は出来なくなる。同じ産業で競争する限りは、自国の賃金を低めるしかない。それが現在の先進国の状態だ。製造業ではすでに日本やドイツに太刀打ち出来なくなった米国は1980年代から金融経済に主軸をおくようになり、ドイツもそれに追随した。しかし、日本は財務官僚の規制が強く、米国やドイツほど金融経済に移行出来ていない。これには旧来の製造業の政治献金を通じた政治への圧力も関係しているだろうが。現在の先進国の基本的なジレンマは、中国を含めた新興国とは異なる新たな産業を生み出せていないことにある。米国のような金融経済は、所詮は株式・債券・不動産などの金融資産のバブルを生み出し、その頂点で崩壊しする、そのサイクルの繰り返しでしかなく、繰り返すたびに債務がさらに膨らんで行く。新たな産業は教育・研究の中で生み出される。現在注目されているのは人工知能AIやロボットだ。それらの研究では米国が先端を走っていたが、それさえも今では中国が迫っている。中国にはドイツと同様に日本の大学を超える大学が数校あり、米国への留学生数も日本をはるかに超える。先進国に今共通することは失業率が低いにもかかわらず、賃金が伸びないことだ。新興国と同じ産業で競合しようとして、生産コストを下げるために、安易に非正規雇用を拡大させた。賃金が伸びなければ消費も増えない。米国は現在、好景気とされている。日本もうわべは景気がいいとされる。かっての経済であれば、景気が良ければ、インフレで金利も上がっていなければならない。好景気と言われる米国でさえ、預金金利は1%にも届かない微々たるものだ。戦後、何度も下落を繰り返しながらもたゆまず上がり続けているのは株価だけである。先進国の「景気」の指標は株価である。政治家も政権維持に株価の維持を求める。日本は中でも極端で、直接中央銀行に株価の維持を行わせている。今や先進国は金融市場に中央銀行が介入し、本来、市場が決めるべき価値を歪めてしまっている。自由市場であるはずのものが、社会主義国のようになっている。そして、本来共産主義国であるはずの中国が市場の自由化を段階的に進め、自由貿易を求めている。20〜30年後には経済の中心は西から東のアジアに移行しているだろう。実際、2000年の歴史の中では中国が世界の大国であった期間はかなり長い。教育水準が上がれば、インドもいずれ大国となるだろう。
山紫陽花

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