釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

「社会主義米国、国家資本主義中国」

2024-07-04 19:13:05 | 社会
今日のオーストラリア、PEARLS AND IRRITATIONSに「Socialist America, state capitalist China(社会主義米国、国家資本主義中国)」が載った。執筆は、米国テネシー州メンフィスにあるローズ・カレッジのスタンリー・J・バックマン国際問題特別教授であるジョン・F・コッパーJohn F. Copper名誉教授だ。アジアと国際情勢に関する40冊以上の著書があり、100本以上の政策論文を学術誌や雑誌に発表している。


百聞は一見にしかずという。グラフやチャートも同様だ。
国別フォーチュン・グローバル500社数

これらすべてが疑問と新しいアイデアを喚起する。

上のグラフは、米国と競合する一流企業を獲得し、受け入れている中国の経済的台頭を端的に表している。

また、いくつかの興味深い疑問も浮かんでくる...。

その1。米国と中国の関係について、一般的な言い回しでは、米国を「資本主義・民主主義」と呼び、中国を「共産主義・中国」と呼ぶ。このグラフを見ると、それが正しいのかどうか疑問に思うかもしれない。

さらに、マルクスは資本主義と社会主義・共産主義の違いを、それぞれの国における「生産力」の所在(経済の公的部門か私的部門か)と定義した。また、雇用である。米国の場合、最大の部門は軍、政府、医療サービス、法執行機関、刑事施設である。これらはすべて公共と定義されている。中国では、これらははるかに小さい。また、公共部門を養う税金は、米国の方がはるかに高い。

歴史もまた、いくつかのヒントを与えてくれる。資本主義国は、原則として社会主義国や共産主義国よりも経済的に成長する。中国は住宅バブルの崩壊、中所得国危機、そして米国による中国への経済制裁に苦しんでいるにもかかわらず、中国の国民総生産(GDP)成長率は米国の2倍以上である。

最後に、中国は貿易、重工業、対外援助と投資、鉄鋼生産、特許、その他資本主義国の専売特許である数多くの指標で1位を獲得し、米国を圧倒している。

それならば、新しい物語を考えてみてもいいのではないだろうか。社会主義米国と国家資本主義中国。

その2。学識経験者、政治家、メディア関係者の大多数が、世界システムは多極化に向かっていると語っている。そして、彼らはその未来を支持している。MAD(相互確証破壊)、イデオロギーの支配、核による第三次世界大戦への絶え間ない恐怖を抱かせた二極化をもたらした冷戦はもう終わりだ。

冷戦は1990年代にソ連の崩壊とともに終わりを告げ、米国が指揮を執る一極体制が幕を開けた。しかし、それは長くは続かなかった。

いずれにせよ、上のグラフが示唆するように、世界は多極化していない。二極である。

多くの事実と多くのデータが、これが事実であることを示している。

米国と中国だけが超大国である。ロシア、日本、ドイツ、英国はいずれも、経済規模、金融力、軍事力(ロシアは膨大な核兵器を保有しているにもかかわらず、その防衛予算は米国の10分の1程度である)、外交力、科学技術、その他のパワーの要素においてはるかに弱い。さらに、ほとんどの点で衰退の一途をたどっている。

インド、インドネシア、ブラジル、そしてあと数カ国は、米国や中国にあまりにも遅れをとっており、真剣に受け止められることはない。おそらく数十年後だろう。そうではないかも知れない。

二極体制を見直すと、結局のところ、二極体制はそれほど悪いシステムではなかったことがわかる。超兵器の急速な拡大、急速な経済成長、グローバリズムを管理することが出来た。考えられないような戦争は起こらなかった。戦争への絶え間ない恐怖に対処するための協力と結託によって、二極体制はうまく機能していたのだ。

そのシステムは、ソ連に代わって中国が再構築した。

二極化を受け入れることの難しさは、歴史的に見れば、二極化はほとんど未経験のシステムであり、理論的には戦争を起こしやすいゼロサム・システムであるということだ。多極化は、第一次世界大戦前の西洋史では勢力均衡システムとして優勢だったが、今日では勢力均衡はあまりにも複雑で難しく、再構築は不可能だ。

その3。上のようなグラフは、未来を予測したり推定したりするためによく使われる。手元にあるものを見ると、世界的な大企業を抱えるようになった中国が、数少ないものから米国と同程度の数にまで成長した一方で、中国を除く他の国々は意味のある成長を遂げなかったと予想出来るかもしれない。中国はこの指標で成長を続け、次の20年には米国を追い越すかも知れない?

確かに、中国の成功や、他の指標で測定された米国を上回っていることは、そのような傾向を示している。

なぜか?1976年に毛沢東が死去し、少し遅れて鄧小平が中国の指導者になった。彼は中国の極端な平等主義的共産主義に終止符を打ち、基本的に資本主義である自由市場、自由貿易システムを採用した。中国はかつてないほど経済的に繁栄し、GDPは米国の何倍も速く成長した。もちろん、中国には貧しい国という利点もあった。しかし、どの大国よりも長く急速に成長したのである。

2008年、米国は景気後退に陥り、その後史上最悪の回復を見せた。中国は急成長を続けた。その結果、中国は工業生産、貿易、対外投資、経済援助、そして購買力平価で測ればGDPでも米国を抜いて世界一になった。

近年、中国は科学論文の発表数と特許の数で米国を抜いて世界一になった。人工知能、量子コンピューター、ロボット工学では米国を圧倒している(産業界では世界全体の半数以上が働いている)。材料科学、化学、工学、環境科学、農学、物理学、数学の分野でも大きくリードしている。ネイチャー・インデックスによると、研究分野のトップ10大学のうち7校が中国にある。

中国は研究を産業基盤と結びつけているため、米国よりも優位に立っている。一方、超高速ミサイルをはじめとする兵器の大躍進は、エンジニアリングにおける中国の優位性が物語っている。

これを説明すると、2000年以降、中国の研究費は17倍に増加した。そして、今もなお増え続けている。数兆ドルの赤字を抱える米国は、膨大な借金の利子を支払わなければならないため、研究や軍事への支出を増やすことが出来ない。

『エコノミスト』誌などは、アメリカを民主主義国家としてではなく、欠陥のある民主主義国家として評価している。外国の歴史家の中には、米国は暗黒の時代にあると言う人もいる。中国はルネッサンスを経験している。

結論として、上記の分析には受け入れがたいデータや結論が含まれている。しかし、少なくとも考える材料にはなるだろう。

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