先日、角野光代さんの『Presents』を読みました
この本のテーマは、“女性が一生のうちにもらう贈り物”です
短編が12話入っていて、赤ちゃんからおばあちゃんまでのお話があります。
帯にある言葉“人生には、大切なプレゼントがたくさんある。”
物だけでなく、思い出や気持ちなどもそうですよね
もくじ(プレゼントの中身)
#1 名前
両親が初めての子供に付ける名前
#2 ランドセル
おばあちゃんが贈ってくれたランドセル
#3 初キス
同級生からの突然のキス
#4 鍋セット
一人暮らしをする娘に、母親からの鍋セット
#5 うに煎餅
長く付き合っている恋人からの、ホワイトデーのうに煎餅
#6 合い鍵
振られた恋人の部屋の合い鍵
#7 ヴェール
親友4人が縫ってくれた、ウエディングヴェール
#8 記憶
浮気疑惑の夫から誘われた旅行
初旅行で行った同じ場所で蘇る、その時の記憶
#9 絵
家族というテーマで息子が描いた、玄関の靴の絵
#10 料理
熱を出した時に、夫が作ったおじやと娘がすりおろしたりんご
#11 ぬいぐるみ
結婚する娘が、もうすぐ離婚する両親に贈ったぬいぐるみ
#12 涙
最期の時を迎えるおばあちゃんを囲む、家族の涙
どのお話も、プレゼントにまつわるものですから、心温まるものが多かったです
でも、人生が嬉しい事や楽しい事ばかりではないように、せつないプレゼントもありました。
それぞれの主人公たちはそこから、何を得たのか。
プレゼントそのものだけでなく、贈ってくれた相手の想いを汲み取り、
何を感じ、何を得たのか。
自分の事としても、色々と考えさせられました
個人的に好きなお話は、『名前』と『料理』です
心に残ったところ
#1 名前
あなたにふさわしい名前を今考えているから。
あなたにしか似合わない名前をまだ考えているから。
川みたいな春みたいな、光みたいな太陽みたいな、
人を助けるような頼られるような、健康であるような人に好かれるような、
いや、そんな意味など何ひとつなくたっていい、
あなたがあなたであるとだれかが認識してくれる名前であるならば。
#2 ランドセル
そうして私は、二十七歳になりながら、なんにもわかっていないことに気がつくのである。
人が死ぬことがどんなことなのか、幸福のかたちが違うことがどんなことなのか、
恋が何を私にもたらしたのか、失恋が何を私から奪っていったのか、まるでわからない。
失ってばかりのような気がするけれど、
それでも私の手にしているものは、ランドセルに詰めこめないくらいたくさんなのだ。
逃げるわけにはいかない。もう少し、ここでなんとかふんばらなくては。
#8 記憶
「なっちゃんと結婚して、それでずっといっしょにいられるようにって祈ったんだよね。
なんかいろんなことがあっても、それでもいっしょにいて、最後は笑っていられるようにっていうか」
それでもいっしょにいて、最後は笑っていられるように。
この先いったいどのくらいの時間を、私たちはともに過ごすんだろう。
食い違った記憶と、隅まで同じ記憶とを持って。
許したり許されたり、退屈したり無神経になったり、たった二人でくりかえしながら。
私たちが出会ったときに在ったものを取り戻すのは、たぶん不可能なんだろう。
私たちふたりきりのちいさな世界に、それはもう二度とあらわれないんだろう。
思うというよりは知るように私は考えた。
けれどそれは、以前感じたほどかなしいことではないように思えた。
私たちはまったくべつのかたちをした何かを、手に入れているはずなのだから。
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