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昨日に引き続き、西加奈子さんの本の感想文です
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今回は『きいろいゾウ』という、少し不思議なお話
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その昔。少女は、病室できいろいゾウと出会った。
青年は、飛ばない鳥を背中に刻んだ。
月日は流れ、都会に住む一組の若い夫婦が、田舎の村にやってきた。
夫の名は無辜歩(むこ あゆむ)、妻の名は妻利愛子(つまり あいこ)。
お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う、仲のよいふたりだった。
ふたりが九州の片田舎にやってきて、物語がはじまる。
売れない小説家のムコは、周囲の生き物(犬、蜘蛛、百足、花、木など)の声が聞こえてしまうツマをやさしく見守っていた。
ご近所のアレチさんとセイカさん夫婦、都会からやってきた大地くんや、大地くんを好きな洋子ちゃん、
職場の平木さんや、大地くんのおばあちゃんの駒井さんなど、
たくさんの人たちとの触れ合いで、ふたりの世界は広がっていく。
夏から始まったふたりの話は、ゆっくりゆっくりとその年の冬まで進んでいき、
「ある出来事」を機に、ムコがツマを残して東京へ向かう。
それは、背中の大きな鳥に纏わるある出来事に導かれてのものだった。
ひとり残されたツマは、幽霊に出会い、家のそばにある裏山のなかへと進んでいった。
そこで彼女は、あるものに遭遇する。
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登場人物のみんなが、誰かが誰かを一生懸命に愛しているお話でした
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一生懸命に好きだからこそ、時には空回りしたり、間違えたり、痛々しかったりもするけれど、
一生懸命に想っているからこそ、喜びや救いがあったりもするみたい
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人と人との繋がりの中で生まれるもののかけがえのなさを、じんわり感じました
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私たちは、すごい逆三角形の頂点にいるんだ。
お父さんとお母さんの、お父さんとお母さん、そのまたお父さんとお母さんの……、
たくさんのたくさんの歴史を持った逆三角形の、その頂点に。
なんてことだろう。
今私がここでこうやってヨルの寝息を聞いているのは、奇跡みたいなことなんだ。
私の三角形の中の誰かが誰かを愛することをあきらめていたら、
病気になった自分の子供のことをあきらめていたら、私は今ここにはいないんだ。
私がムコさんと出会えたのは、奇跡だ。
僕の世界はツマその人を中心に回っていて、そしてそれは揺るぐことがなかった。
そうだ、揺るぎのない世界だった。
それだけで心底安心して、眠り続けることができるほどの。
それでもそれをとてもあやうい何かだと思い、消えてしまう可能性に怯え、恐ろしい想像に蓋をしていた。
そうではなかった。
ツマがそこにいないことに怯えるのではなく、
ツマがそこにいること、人生のように、日常のように、そこにただいてくれるだけで、
安心して眠りにつけるのだということ、堂々と、幸せだと笑っていられるということ。
どうしてそんな簡単な、だけど途方もなく尊いことに、気づけなかったのか。
ソラで言えるか分からないけど、必要なものは、覚えているのだ。
それはきっといつも、そこにあるのだから。
≪ムコさんの“必要なもの”を書き留めた一部分≫
・朝食のトマトと岩塩
・そば殻の枕
・コーヒーを煎る臭い
・ほうじ茶を沸かす儀式
・明け方の空の色
・欠け始めた月
・ぼくのつま
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