パリタクシー

94歳のリーヌ・ルノーが　92歳のマドレーヌを演じたと評判の映画
この女優さん、観たことがあったかしらと思いながら
まさか、実際の年齢の方が上だなんて・・・

お金も休暇もなく、働きづめで家族ともゆっくり会えない。
おまけに免許も停止寸前という人生がけっぷちの不機嫌なタクシー運転手が、どんどん蘇ってゆく。

パリの反対側まで行く道すがら、老婦人の頼みであちこち立ち寄る街並みはとっても素敵。
まるで観光でもしてみたいにゆったりと時間が過ぎてゆく・・・

それでいて、この老婦人の想像もつかないような壮絶な人生体験を折り込みながら
タクシーは走ります。

話の流れもだいたい見当がついていて、終始安心して観ていられる
穏やかで優しい映画でした。

時々に挟まれるマドレーヌの言葉が胸に沁みるのです。
『笑うたびに若返る。怒るたびにふける』
「微笑むたびに人は若返るのよ」

実際のルノーもシャンソン歌手で女優で、エイズの撲滅運動や患者支援の先頭に立ったり
尊厳死法制化にも尽力したりなど
フランスで勲章を受章するほどの女傑らしいから
この役柄にぴったりで彼女以外にはおそらくいなかったでしょう。

バタバタと気ぜわしい奇天烈な映画の多くなった昨今
わたしにはつかの間、久しぶりにほっとできるような作品でした。
こんな風に年を取れたらいいのにと思うのですが・・・