ぽぉぽぉたんのお部屋

季節の移ろい、道ばたの草花、美味しい食べ物、映画や友人のこと、想いがいっぱいの毎日をお話します

「夏の夜のできごと」

2015-07-18 | きょうのできごと
「きゃぁ~きゃぁ~きゃぁ~ 
  助けて、助けて、誰か助けて~
    きゃぁ~きゃぁ~きゃぁ~」

突然若い女性の悲鳴が響いた。長い長い悲鳴だった。
遠くなってゆくように途切れたような気がするから
車で連れ去られたのかしら…
それとも・・・と思って時計を見ると
午前2時20分

どうしたんだろう、何があったのかしら?

それにしても長すぎる・・・
恐怖の中、あんなにも長く悲鳴って出せるものだろうか?
尋常でないことは確かだが・・・
(聞いたのだから、確認して通報しないと)
と起き上がり、窓を開けた。

もやもやした室内よりは少しはましな外気が入り込む

見ると、タクシーが止まっていて
歩道には人だかりがあるようだった。

間もなく向こうの方から警官らしい姿が
3人小走りにやってきた。

人だかりの中にいた女がさっきとは別人のように
威嚇するようなドスの利いた声を張り上げては
3人を抗う
逃げる女を3人が追いかけ、とり囲むようにすると
今度は「サワラナイデヨ」と騒ぎ始めた。

それでも足がふらついているのか
転んだり、座り込んだりするのを
3人がしゃがみこんでただ囲むようにしている。

離れたタクシーのそばに呆然と立っているのは
運転手だろうか・・・

とりまきの数人の男性達がすぐ前のアパートに
戻っていく
他の数人も帰り始めた。

やがてもう一台黒っぽい車がやってきた。
そこに女はのりこんだようだ。

運転手が何度も頭を下げるとタクシーに乗り込み去ってゆく。
警官も戻っていく。
二人しかいないようだ。

暗くてよくわからないけれど
少し置いてから、ゆっくりと後からの車も何とか動き出して
騒ぎは収まったようだ。

でも私はそれから朝までずっと眠れなかった。

6時頃新聞をとりに行くと
向かいのマンションにもう布団が干してあった。
(私と同じような被害者かしら・・・)

出かける時にそのあたりを通った。

もう随分と経っていたが
ところどころに香水のにおいが残っていた。

夢ではなく、身体にこたえた夏の夜のできごとだった。


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「あん」

2015-07-11 | 映画のお話
樹木希林の主演映画
監督・脚本は河瀬直美
カンヌ映画祭「ある視点部門」に出品された最新作だという。

駆けつけて、お扇子をばたばたはいつものパターン
席には熟年のご夫婦や男女が多かった。
若い人にも見てほしいんだけどなあ~


「ゆうきちほ」が「きききりん」になって
その語感でふざけた名前のような気がしていたが
よく見ると木々と樹木と林との構成で希望の希まで入っている。

話題に事欠かない女優だが
魅力のある個性的な素敵なひとだと思う。

ハンセン病の施設のある緑濃い山の中
亡くなると墓はなく代わりに木を植えたという

桜が咲き始めた風景から
満開になって新緑、紅葉の時季まで

鳥のさえずりや風と共に
木漏れ日や葉ずれの音が聞こえてくるようだ

そうして、どら焼きの生地を静かに落としてまあるく焼く毎日
あんこが煮える湯気、音と香りが漂ってきそうだ

桜の花の香り、若葉の青葉のみずみずしさ
紅葉した葉っぱのかぐわしさを想う


「おいしそうだったね。つぶあん」と翌日顔を見合わせた。
仙台空襲70周年の朗読会の後のランチで
彼女も「あん」を観たと言う

「子どもの頃、家のずっと奥の方に施設があったみたい」と言葉が続いた。

私は砂の器で「らい病」を知ったけど

やり残したことはありませんか?って
聞かれたらどうしよう。

丁寧に生きなくては
これからは もっと

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