若い世代の歌より(覚書)
(1)
俵万智の『サラダ記念日』は、読んだことがあり、短歌もこんな現在のファッションや風俗の現在性を掬い取る自由度を持つのかと驚いたことがあるが、短歌にはあまり近づいたことがない。彼女以降の次の大きな波が来ているのだろうか。最近、穂村弘や山田航の存在を知る。
りすんみい 齧りついたきりそのままの青林檎まだきらきらの歯型
(山田航「自選十首より」)
いい歌と思う。上の句≒下の句だろうか、上の句だけでは指示表出が微少だ。つまり、意味の自由度が最大であり、なんとでも解釈できる。
(2)
ネットで集めた山田航の作品より。よくわからない作品も多いけど、次のはいいなと思う作品。
放課後の窓の茜の中にゐてとろいめらいとまどろむきみは
ためらひがフォルティッシモで鳴るときに吊り革少しだけ揺れてゐた
二作品は、「とろいめらい」「フォルティッシモ」によって、言語の自己表出性から見た価値(『言語にとって美とはなにか』 吉本隆明)が高められていると言ってみたいが、私もまだそのすぐれた概念を自在に使いこなせないし(吉本さんがマルクスから学んだ、マルクス―吉本隆明の〈疎外論〉が駆使されていて難しい)、ましてや批評の世界で十分に受け入れられていないから、取りあえず次のように言っておこう。
二作品は、「とろいめらい」「フォルティッシモ」によって、音楽的な意味という音楽性と普通の言葉の意味という二重化によって、励起された言葉の表現になっている。したがって、言葉から来る重畳した波によって私たちの感動もいっそう高められることになる。
(以上、ツイッターのツイートより)
(註.)
(1)の引用歌中の「青林檎」について
以下に引用するように、「青林檎」には、二種類があるようである。品種としての青リンゴでわたしの知っているのは、玉林やトキがあり、トキは好きである。この歌の場合の「青林檎」は、上の句の「りすんみい」の語感が酸っぱい感じを与えるように思うから、たぶん完熟していない未熟な状態のリンゴだと思う。しかも、それは生命力あふれ出す青春の喩にもなっている。作者のHPのプロフィールによると、「札幌市東区丘珠生まれ、北区あいの里育ち。」とあり、ネット検索してみたら、札幌でもリンゴが栽培されている。なぜそんなことに触れるかと言えば、身近でリンゴに触れていないとこんな実感が込められたような歌は難しいと思うからだ。
青りんごとは、りんごがまだ未熟な状態で収穫するため、青(緑)色をしている りんごです。
基本的にはりんごと同じですが、熟していない分、甘みが少なく酸味が強いです。
熟したりんご味とは別の「青りんご味」として親しまれています。
また、未成熟果実ということとは別に、ふじ、つがるなどの赤い品種と、王林などの黄色・黄緑などの青りんごがあります。
こちらは成熟果実ですが、りんごの赤色色素のアントシアニンが、青りんごは生成されず、地色の葉緑素が見えているのです
(「野菜の知識」高松青果物商業協同組合 http://www.t0831.net/blog/2012/08/post-177.html )
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