大川原有重 春夏秋冬

人は泣きながら生まれ幸せになる為に人間関係の修行をする。様々な思い出、経験、感動をスーツケースに入れ旅立つんだね

復興に政治安定の機生かせ (福島民報・日曜論壇)

2013-03-19 18:00:00 | 原子力関係
 神戸の友人たちと東日本大震災の被災地を回った。昨年秋のことだった。阪神淡路大震災の体験者である。各地を歩いた感想として「震災直後とあまり変わらないじゃないか」と異口同音に言う。復旧・復興の遅れに驚いていた。「神戸の1年半後はこんなじゃなかった。もっと進んでいた」

 悲劇をもたらしたということでは同じだが、神戸市中心の直下型被害と、記録的な大地震に巨大津波、それに東京電力福島第一原発事故が重なった今回の被害とは、規模や広がりがケタ外れに違う。単純に比較はできないことは分かっていても「この遅れはひどい」と何度も語っていた。

 あれから丸2年。古里をときどき訪ねる。再建に向け、立ち向かう動きは頼もしい。しかし、原発事故から避難している人が15万人以上という現実一つ見ても、事態はまだまだ深刻である。家を失い異郷の地の仮設住宅で過ごす人、家があっても戻れない人。離れ離れで暮らす家族。仕事を失った人々。その上に放射能による健康不安、風評被害-。

 長いデフレ不況下にあるとはいえ、経済力とさまざまな技術力もある日本である。大震災以来「がんばろう」が被災地はもとより日本全体の合言葉となり、復旧・復興の支援の大きな国民的な輪ができた。なのに、なぜ対応がこうも遅々としているのだろうか。

 基本は政治の問題、特に未曽有の危機の認識、対応が後手後手に回っていたことにあると思う。発生時から政権を担ってきたのは菅直人、野田佳彦首相の両民主党政権だが、いずれも党内抗争や党分裂などを繰り返す。当時の野党・自民党は政権打倒のチャンスと動いた。

 政治が「政局」中心になり、スピードが求められる復旧・復興関係の予算や法律上の手当てが遅れに遅れた。自公政権の復帰によって政治がようやく落ち着きを戻した感がある。安倍晋三体制は参院の「ねじれ」という弱点は抱えているものの、衆院では圧倒的な勢力を持つ。

 政権が民主党であれ自公であれ、こと震災については取り組むべき課題ははっきりしている。安倍政権を見ていると、民主時代の政策の延長であり、その拡大・拡充である。与野党に共通の基盤があるということである。安倍政権はこの政治状況を生かし一段と加速してもらいたい。

 最優先事項は仮設住宅へ避難している人たちである。とりわけ原発事故で避難している人たちは、生まれ育った地から引き離され理不尽な生活を強いられている。国と東京電力である。除染のピッチを挙げ、できるだけ元の暮らしに戻れるようにするのが最低の責任である。住まいがあって、仕事がある。家族が健康で一緒に暮らす。そんな当たり前の生活が送れるようにするのが、政治の緊急課題であることは論をまたない。(国分俊英・元共同通信社編集局長、本宮市出身)

2013/03/10 09:09 福島民報・日曜論壇

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