大川原有重 春夏秋冬

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規制の在り方と廃炉技術 (福島民報・日曜論壇)

2013-03-19 17:00:00 | 原子力関係
 原子力規制委員会の下で、福島原発の廃炉作業について議論が進められている。他方、原子炉輸出の話が今年に入っただけでベトナム、トルコ、サウジアラビアと国レベルで出ている。東京電力福島第一原発事故の状況から見ると輸出の話などすべきでないだろう。とはいえ、輸出をすると仮定すると、日本の原子力規制の問題が見えてくる。あえて輸出を仮定した話をする。
 日本の原子力規制は、国と電力会社の間で議論され、規制委員会が設立された後でも構図は変わらない。この仕組みは必ずしも国際標準にのっとっていない。米国では規制委員会がプラントメーカーと、ドイツも国に代わって「テュフ」という安全認証機関がメーカーと行う。日本と両国を比較すると大きな差が見えてくる。日本の電力会社は地域立脚の会社なので、国際的な規制動向よりもプラントの建設費を小さくしようとする議論が起きやすい。
 一方、輸出を仮定すると、規制委員会が対象とする機関は輸入国の電力会社ではなく、日本のメーカーになるはずだ。メーカーは国際市場を相手にするので、直接コストを考えるのではなく、国際標準に合致した合理的な安全設備を追求せざるを得ず、おのずと国際基準が導入される。これが、日本の安全審査が、原子炉導入先であった米国が承認をした原子炉型のみを対象とした米国依存の体質に陥り、欧州から学ばなくなった一因ではないか。
 昨年6月に、ベトナム科学技術大臣と会談する機会があり、安全性について議論をした。ハノイ郊外では停電がしばしば起こるが、緊急時には原発は外部からの電源を必要とする。また、北部は地震、南部は洪水と、地域によってリスクが異なり、その実情に配慮すべきと説明した。また、審査対象となる組織はベトナム電力会社でなく、日本メーカーとなる。
 ところで、福島第一原発では昨年末、格納容器の破損箇所を見つけるために、2号機に4足ロボットを入れた。検査予定の8カ所中、最初の箇所に破損がないことをロボット画像で確認したが、次の箇所に移動した時、後ろ足が金属格子板に挟まり、抜く時の反動で倒れてしまった。
 2号機は放射線レベルが低いので人が入ってロボットを搬出できた。しかし、放射線レベルが高い3号機へ投入するには、今後多くの改良が必要だ。
 先進的な4足ロボットとしては、米国高等研究計画局が開発した「ビッグドッグ」というロボットがある。起伏の多い地形を歩け、脇から蹴られても転倒しないような高度な姿勢制御が採用されており、雪の上も走る。軍事用ではあるが、福島の原発も戦場と同じような厳しい環境にあり、人が入れない場所も多い。
 廃炉を工程通り進めるには、遠隔技術が必須だ。今月に入って、3号機で1.5トンの金属棒が使用済み燃料プールに落下した。これも遠隔技術の課題だ。現場で使える実践的で高度な遠隔技術の早い開発が望まれる。(角山茂章・会津大学長)

2013/02/24 08:22 福島民報・日曜論壇

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