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【原発事故賠償金】東電は早期に支払え(5月22日) より転載
東京電力が福島第一原発事故に関する賠償金支払いを滞らせている。経営改革を担う新会長の下河辺和彦氏、新社長の広瀬直己氏は早期支払いに努めるべきだ。東電は実質国有化を柱とする総合特別事業計画の政府認定を受けた。国は、東電に速やかな支払いを徹底指導する責任がある。
経済産業省によると4月19日現在、東電の賠償支払総額は仮払金を含め約7621億円。政府が賠償資金として東電に支払いを決めた約1兆7000億円の半分以下で、東電が総合特別事業計画で示した要賠償額2兆5462億7100万円の3割に満たない。
損害賠償の完全実施を求めた県原子力損害対策協議会の要求に対し、東電が18日にした回答は「検討している」「適切に対応する」など具体性に乏しく、誠意がない。
賠償金が届かず苦しい被災者を横目に、「役所以上に役所的」といわれる東電は甘えの体質のままだ。事故以降も今年3月末まで、元財務事務次官ら中央省庁からの天下りを含む顧問に総額1億5600万円の報酬を支払った。
職員の給与は平成23年6月以降、24年度末まで管理職の年収25%削減と一般社員の20%を削減するが、25年度以降は未定だ。賞与は昨年夏分と冬分は支払われ、今年夏分から支給見送りを検討している。遅過ぎる。
不動産売却の目標は23年度から原則3年以内に2472億円というが、達成額は目標の一割未満だ。
意識改革が急務だ。広瀬氏は社長内定会見で「(本県に)できるだけ早く伺いたい」とした。訪問の際には、迅速な賠償とリストラを県民に約束し、断行してほしい。
賠償金が支払われても、風評被害などの営業損害分は所得税が課せられ、事業所の経営を圧迫している。
昨年8月末まで、警戒区域の今村病院(富岡)西病院(浪江)小高赤坂病院(南相馬)双葉病院(大熊)の4病院に東電から賠償金約8億3076万円が支払われた。しかし14%の約1億1600万円は税金支払いに消えた。職員の退職金や借金返済とともに、税負担が重荷となる。
農家や農業生産法人への賠償金にも課税されるため「将来的な投資ができない」との悲鳴が上がっている。
県や農業団体は賠償金の所得税免除に関する特別措置法を求めているが、実現していない。賠償金への課税は復興の足かせとなる。政府や国会は、県などの要望を受け入れ、特措法を成立させなくてはならない。(小池公祐)
福島民報