イタリア、ギリシャ、スペインなど地中海沿岸の国々の伝統ある食文化のことを「地中海食」といい、いわゆる「健康・長寿のための食事」と話題になることがあります。今まで本要約してきた「新谷食事健康法」が「地中海食」と類似していることがわかります。
地中海食とは;ー
- 糖質は全粒穀物、パスタなど食後血糖値の上昇度が低い食品でとる。
- 動物性たんぱく質が少なく、魚介類が多い。
- 適量のナチュラルチーズ、ヨーグルトをとる。
- 緑黄色野菜、豆類が多く、食物繊維が豊富にとれる。
- 油脂としてオリーブオイルを用い、バランスのよい脂質のとり方となっている。
- 食材は自然食品が多く、また、丸ごと使う全体食である。
- 調理法が簡潔であり、調理に時間がかからない。
- 香り高いハーブとオリーブオイルを使用しそのため塩分が控えられる。
南イタリアの田舎で生活をした経験を持つ米国ミネソタ大学の免疫学者のアンセル・キース教授が、1975年、南イタリア料理の素晴らしさをまとめた本を出版したことによります。肉や動物性脂肪を多量に摂取する危険性を説き、健康食としての南イタリア料理を賛美したこの本は栄養学者の間でも注目を集めました。また、教授は日本、米国、フィンランド、オランダ、イタリア、旧ユーゴスラビア、ギリシャの7カ国で行った調査で、高脂肪食を食べているにもかかわらず、動物性脂肪の摂取量が少なく、オリーブ油の摂取量が多い地中海沿岸諸国では、米国や北欧に比べ、血中コレステロール値が低く、動脈硬化による狭心症や心筋梗塞などが少ないことを報告。
地中海食が健康によいといわれる理由
地中海食が健康によい理由は、豊富に使用するオリーブオイルや魚介類がLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)値を下げる効果がある不飽和脂肪酸を多く含んでいること、飽和脂肪酸を多く含む肉の摂取量が少ないこと。野菜や果物などの植物性の食品を多く摂取するために抗酸化作用が強いこと。
また、地中海食では、主食として全粒穀物やパスタなどがよく食べられます。これらは、他の穀物に比べて食後の血糖値の上昇が穏やかなため、糖尿病の予防や改善にも適していること。
オリーブオイルには、緑黄色野菜や豆類、全粒穀物と相性がよいという性質があること。一般的に、植物油の多くは種子に化学的な処理を加えて抽出するが、オリーブオイルは、オリーブの実を皮や種ごと搾るため、ビタミンEやポリフェノールだけでなく自然の風味がそのまま残っている。このオリーブオイルとハーブをうまく使うことで、食べにくいといわれる玄米などの全粒穀物や豆類も、砂糖や食塩などをあまり使わずにおいしく食べることができること。
乳製品をナチュラルチーズやヨーグルトといった発酵食品で取ることも地中海食の特徴。これらには乳酸菌やビフィズス菌が多く含まれ、腸内細菌のバランスを整える作用があること。
近年の研究では、アルツハイマー病の予防にも地中海食が優れているという。実際に、伝統的な地中海食をとっている地域はアルツハイマー病が少ないことがわかっています。
次回予告
“「空腹」こそ最強のクスリ” (青木厚著)
~「何を食べるか」でなく、「食べない時間を増やす」
~睡眠時間をあわせて「1日16時間食べない」