若生のり子=誰でもポエットでアーティスト

文字さえ書ければ、ポエット
感覚次第で、何でもアート
日日を豊かに遊び心

おくりびと

2009-03-03 | 映画
アカデミー賞を取ってなんだかブームになっているようです。
その国民的?騒ぎ方に少々違和感を持ちますが、、、。
Aさんのお勧めで昨年の9月に観ました。その感想を述べなければと思いつつも時日を重ねてしまいました。
丁度良い機会ですので、感じたことではなくてその後考えたことと言うより思ったことをを書いてみます。(何なのー笑)既に多くの事が語られていると思いますので少し。

「生と死」を考えさせられる映画と言うことですが。それほど深く「死」を「生」を問題にしているとも思えませんでした。
「おくりびと」は「納棺の儀式」を執り行う納棺師の物語で、思わぬことから納棺師になってしまった人間の葛藤と言うよりも、戸惑いながらもポジチーブに故郷の山形の自然を背景として、さまざまな死に向き合いその儀式をつかさどることに誇りと生きがいを見出していくと言う筋運びでした。

「納棺の儀式」と言うのは、死者を最終的にあの世に旅立たせる「儀式」ということであり、納棺師は、死者を彼らの愛と技量で、生前よりも一層のおごそかな美しさに造り上げ、まるでショウのごとくに演出し、遺族親類縁者に、慈しむ敬虔な別れの最後の場を創り出すことだと解釈しました。
遺族親類縁者にとっては、納棺の儀式によって、走馬灯のごとく故人の生前が偲ばれそのかけがえの無さと悲哀がいや増し、そして、その場は深く畏敬の念に満たされます。

死者が生前どういう人間だったかや如何に生きたかは、ひとたび死者となったからには、今までの日常をすべて越えてしまう位相が現出します。すなわちソコには、どんな人間でも生前の事は反古にされ、「死者」というモノに変わり等価に畏敬の念を抱かれる存在になります。それを形として見せるのがこの映画のタイトルである「おくりびと」が演出する 「儀式」であるのだと思いました。
「儀式」は誰も敬虔あらたかにさせる日常を超えた特別な美を伴う作法なのですから。

最後に、わたくしの母のお葬式の時のことを思い出します。
特に母は色白の美形でしたので、死化粧を施されて棺に収められたその顔の口紅の色がなんとも鮮やかで艶めかしく、まだその口から声がほとばしり出てくるのではないかと思わせ、ハッとしてぎくりとしたことを今でも一抹の哀しさをもって思い起こします。
33回忌も過ぎていますのに。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿