若生のり子=誰でもポエットでアーティスト

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「告発のとき」を観てその1

2008-07-19 | 映画
今アメリカが直面している非常に重い問題を、真正面に据え、観るものに問い返される。

「人間とは何か」   「戦争とは何か」  を

この映画は、2003年に実際にアメリカで起こった事件を基にしている。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)
ベトナム戦争の時にも問題なった帰還兵を蝕む精神の計り知れない深い沼の問題である。

戦場においては、民間人も兵士もなく無防備な民間人は、いとも簡単に虫けら同様に殺される。
ソコには人間の尊厳や、命の尊さなんていうものはこれっぽっちもない。
戦場においては、敵国の誰であれ(子供・女・老人)見境なく、殺せば殺すほど勲章がもらえる。
破壊すれば破壊するほど栄誉を与えられる。
この様に、戦場は殺戮することが勲章になる「人間のなす最悪の出来事」である。

この主人公の息子も,イラクで、道端で遊んでいる子供を平気でひき殺し置き去りにする軍用車に彼自身が乗っていた。そして、帰還後いつものおふざけのプレイのようにその戦友仲間の一人に42回ものめった突きにされ、他の仲間に切断され、焼かれて、まったく人間の形態を留めない焼け焦げた数個の肉片と化したこれ以上のむごたらしさがないほどの惨殺をされる。ソコには。当然のこと良心の呵責や痛みは微塵もない。ただ在るのは、悪魔の仕業としか思えない猟奇である。

その殺人者でもあり戦友でもある仲間の兵士が言う無表情に言う“Complicated”

主人公は、元軍警察官で、自分も戦死した長男もこの息子も国に貢献したことで誇りに思っている実直勤勉な愛国退役軍人である。

ポール・ハギス監督インタビューから
「イラク戦争が始まって1年後の03年頃から、心を悩ます物語を耳にするようになった。
その後、ネットでイラクの兵士たちが作っているビデオクリップを見たんだけど、いずれも心を掻きむしられるような内容ばかりだった。そこで、“今、何が起きているんだ”と自分に問いかけてみたんだ。それから、帰国した退役兵数人に取材し、彼らの生の声を聞いているうちに、この話の基になっているマイク・ウォールズの物語に出会ったんだよ」
「この映画で言いたいのは、この戦争に正当性があるにせよないにせよ、争点はそこじゃない。こういうことが起きているということなんだ。これが、僕らが直面しなくてはならない厳しい現実だ。皆で直面しなければならない。僕も他の人と同罪だ。開戦前に僕が反対したかどうかは問題じゃなくて、今これが起こっているという現実がある。この状況に目を見開き、それに対処しなければならないんだよ」

ベトナム退役軍人として、いままで誇りとしてきた自国アメリカが直面している思いもよらない非情な現実を、かけがえのない息子の死の捜査を通して否応無く知っていく過程は気の詰まることである。なぜなら、自分の今まで信じてきた「誇り」を見つめ直さなければならないからである。息子をこの様にした責任の一端は、「一人くらいは残してほしかった」と母親が主人公・父親をなじったように、この父親にもあるといわねばならないからである。
この父親も加害の一人として、今までの自分のありようを、生き方を問わねばならないということなのである。

そしてこの映画を観る側の我々にもそのことは問われる。

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