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 [A. ギレアデ 1940-]

ユダヤ人で末日聖徒に改宗したアヴラハム・ギレアデがイザヤ書について、Bifid(バイフィド、書物を二分割し交差構成する)と呼ばれる独自の構成分析を行ない、この分野で一家言を発表している。どういうものかと言えば、イザヤ書を1-33章と34-66章に二分割して全体を下図のように七つのまとまりに交差配列してひとつのまとまりを見出しているのである。ここにひとつのまとまった、ヘブライ語聖書に通じた研究者による考え方を参考までに紹介したい。

 廃墟と再生(1-5章 / 34-35章)
  反乱と恭順(6-8章 / 36-40章)
   処罰と救出(9-12章 / 41-46:13b)
    屈辱と高揚(13-23章 / 46:13c-47:15)
   苦難と救い(24-27章 / 48-54章)
  不忠と忠誠(28-31章 / 55-59章)
 剥奪と継承(32-33章 / 60-66章)

同類のテーマの対照的なものが同順位で配列され(但し位置は離れている)、中央に書物全体のカギとなる概念が位置していると言う。別の注解書はこのBifid構成について、「暗誦を助けるもので、預言的な示現が与えられた政治・社会的背景を描くnarrative」であると言う。ギレアデは博士課程の師ブラウンリーから彼自身によるイザヤ書のBifid分析を紹介され、それをさらに改訂し完成させたのであった。1994年に書物に著し、こんにちまでこれに基づいて研究・教育と著述活動を続けている。イザヤ書のBifid構成は、恩師のほか保守的なK.A.キッチンが言及し、BYUマックスウェル研究所の刊行物で優れた分析として積極的な評価を受けている。当然、ギレアデはイザヤ書を統一された一人の著者による文書と見る立場である。

[イザヤ書の巻物]

旧約聖書に重複した記載がしばしば見られるのは、対句的表現が好きな一種の編集者気質のようなものである。著者は、イザヤ書に出てくる「僕」は同一人物を指すのではなく、別々の人物を言っていることを知ったと言う。詳細は本書に譲るとしても、イザヤ書のメシア像はユダヤ教のメシアとキリスト教のメシア概念の橋渡しをするものとなっている。そして、初めから終わりを見通す黙示的要素のあるイザヤ書は、末の日に向けた深淵なメッセージが読み取れるとギレアデは述べる。

聖書を読む時、章や段落別に見出し(テーマ)があればそれを参考に読むと理解が助けられる。その習慣がついているわたしにとってギレアデの分析は大変興味深い。ただ、批判的・歴史的聖書学によればイザヤ書を第一、第二、第三イザヤに分ける解釈が一般的である。そこで、問題の一つはクロスへの言及をどう見るかである。キッチンはクロスという名の人物は複数いて、われわれが知っているのはクロスII世で他にもその祖父クロスIがいたし、646BCにもクロスがいたことを知るべきである、と解説する。

 
なお、Bifid構成は他にもエゼキエル書、ダニエル書などにも見られるヘブライ語聖書に特有な修辞形式である。

また、A. ギレアデはわたしが1970年代半ばBYUに留学していた頃、ヒュー・ニブレーのクラスで最前列に座って受講していた謂わば同窓で、わたしは彼が過越しの祭りについてファイヤ・サイドを開いた時それに出席して彼が高らかに賛美の歌を朗詠するのを聴いたのが記憶に残っている。

参考文献
William H. Brownlee, “The Meaning of the Qumran Scrolls for the Bible.” 1964
Avraham Gileadi, “The Literary Message of Isaiah.” Hebraeus Press, 1994
K.A.Kitchen, “On the Reliability of the Old Testament.” 2003
Mark Mangano, Ed., “Old Testament Introduction: The College Press NIV Commentary.” 2005
David Rolph Seely, “EXPLORING THE ISAIAH CODE:ASCENDING THE SEVEN STEPS ON THE STAIRWAY TO HEAVEN.” FARMS Review 16/2 (2004): 381–94. 


コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
さらっとすごい (オムナイ)
2014-10-31 08:04:46
>ヒュー・ニブレーのクラスで最前列に座って受講していた謂わば同窓で

( ̄O ̄;) ウォッ!

モルモン書についての当該研究の言及はないのでしょうか?
 
 
 
別の本には (NJ)
2014-10-31 16:21:41
今手元にある本 The Literary Message of Isaiahには出てきませんが、1988年に

 "The Book of Isaiah: A New Translation, with Interpretive Keys from the Book of Mormon" Deseret Book

という本を出していまして、それには題名からも分かりますようにモルモン書に解釈のカギがあると書いています。
 
 
 
業務連絡 (NJ)
2014-10-31 16:33:14
今夜から11/4日午後まで同窓会などで関東に出かけます.インターネットの接続、発信、応答ができなくなります。ここにお断りいたします。高齢者でIT装備万端に非ずです。
 
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