
四、不思議なおばあさん
ぴょんたの耳が地べたまで垂れて、すっかりしょげている。
「ぴょんたのせいじゃないよ。」
艦長と仲間が、さっきからなぐさめているが、ぴょんたには通じないらしい。
「あの時、いやがるピピちゃんを無理やりメリーゴーランドに乗せなかったら、こんなことにならなかったんです。」
ぴょんたはもう、泣き出しそうになっている。
「それにしても奇妙な話だな。」博士が言った。艦長の報告を聞きながら、どうも博士はふに落ちないらしい。
「それで、そのピピと言う子の両親は現れなかったのだね。」
「そうなんです。結局ピピちゃんが本当にいたのかどうかも分からないということになって、すっきりしないまま、帰って来たのです。」
「フーム、それでメリーゴーランドには特に変わった所はなかったんだね。」
「そうです。よく調べたんですが、おかしいところはどこにもありませんでした。ピピちゃんがどこに消えたのかまったく分からないのです。」
「確かに、ピピちゃんはわたしの腕の中にいたんです。こう抱えてメリーゴーランドに乗っていました。それが、突然煙のように消えたのです。夢じゃないですよ。」
ぴょんたはまだ、ピピの感触が残っていると言うように両腕を抱えるようにして、博士に見せた。
「これは何かがあるな。」博士は何かを決心するように自分でうなずいて、そして話を続けた。
「もう一度、その遊園地に行ってみようじゃないか。」
「これからでヤすか。」
「もちろん。」
「でも、もう遊園地はしまっているだスが。」
「ひょっとして、誰もいない遊園地で何か起こっているかもしれん。ちょっと気になるのだ。」
「気になるって、どんなことです。」艦長が聞いた。
「今はうまく説明がつかないんだが、ピピがいなくなったのは、きっとぴょんたのせいではないだろう。それを調べに行くのだ。行ってくれるかね。」
「もちろんです、博士。」艦長がすぐに応えた。
「絶対行きます。ピピちゃんを探したいんです。」
「行きヤす。」
「行くだス。」
「しかし危険があるかも知れない。充分気をつけてもらいたい。」
「分かりました。」
博士と四人の乗組員はスケール号に乗り込んだ。スケール号は本物の猫の大きさになって、部屋の窓から外に飛び出した。


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