九、おばあさんいつまでも幸せに
スケール号は緑の海を飛び立った。眼下にはピンクの川が流れている。その途中に、紫色に変色した淀みが見える。するとそこから白い光が放射状に飛び出して来た。紫色の淀みは見る見るピンク色に戻って行った。 緑の海の中に、ピンクの川が一本の流れとなって、ゆったりと流れ始めた。エネルギーの海は七色の光が点滅してこの世とも思われぬ世界が現れた。
「これが健康な心の世界なのだ」博士がしみじみとした口調で言った。 「きれいですね。」
「すばらしいでヤす。」
「最高だス。」
「ピピはやっと幸福になれたんですね。」
「そうだ。よくやった。」艦長がぴょんたの肩に手をかけて言った。 スケール号は夢のように美しいエネルギーの海を後にして帰路についた。
スケール号は光速で移動しながら、少しずつ体の大きさを変え始めた。豆粒の何億倍も小さくなっていた体が、おばあさんの体の宇宙空間を飛びながら大きくなっていくのだ。
スケール号の窓からは、無数の星が一つにかたまって銀河のように見えたかと思うと、その銀河も無数に広がっているのが知れるのだった。
スケール号の乗組員達は一様にそんな風景の変化に魅せられていた。
スケール号が大きくなるにつれて、逆に銀河は小さな点のようになり、無数の銀河が一つの塊となって見えてくる。それは自ら動くウイルスだった。
ウイルスも目に見えなくなると、今度は細菌の世界が見えてくる。繊毛を動かして細胞の中を動き回っている、その細菌と同じ大きさになったスケール号は、いくつもの細胞を通過しておばあさんの血液の流れの中に入って行った。
血液は心臓を通って肺に向かう。スケール号は肺から呼吸の流れをつかまえ、やがておばあさんの体から脱出した。
やって来た道を反対にたどってきただけなのに、この帰りに見た風景は、まるでおばあさんのくれたご褒美のように思えた。
おばあさんはスヤスヤと、気持ちよさそうに眠っている。
「よかったね、ピピおばあちゃん。」ぴょんたがつぶやいた。
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