のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

スケールマシン(スケール号の冒険)

2019-08-25 | 5次元宇宙に生きる(一人旅通信)

  一六、チュウスケの秘密

 

 スケール号は念のためにエネルギーのシールドを張った。船体が青い膜で覆われた。突然攻撃されても、シールドを張っておけば、スケール号の中は大丈夫なのだ。 

  いつしかスケール号は黒い海の上にやって来た。黒い海は静かで、様々な色が不気味にうごめき、ゆっくりと混ざり合っていた。

 黒と思っていたのは実は無数の色が混ざり合っていたのだ。すべての色がここにあって、しかもその色同士がまとまらないまま、ばらばらに動いている。

  「カオスだ。」博士が言った。

  「カオスって何だスか。」

  「カオスと言うのはね、この宇宙が生まれる前の世界の事なんだ。」

  「宇宙が生まれる前の世界ですって。」

 「それは、どういう意味なんでヤすか。」

 「私達のいる宇宙には、いろんなものがあるだろう。地球があり、太陽があり、山や川や、海がある。それらは皆、形を持っている。この宇宙にあるものはみんな、何らかの目的をもって生まれて来ているんだ。」

 「はあ、」みんなはポカンとしている。分からないのだ。

 「クリームソーダーの世界に行った時の事を思い出してごらん。グラスは何で出来ていたかね、ぐうすか。」

 「えーっと、原子だス。」

 「そうだ。この世のものはみな、原子から出来ているんだ。もこりんの体だって原子と言う小さな粒が集まって出来ているんだよ。」

 「この手も足も、原子の粒で出来ているでヤすね。」

 「そうだよ。何億、何兆もの原子が集まってもこりんの手が出来ている。でも、もしこの何億、何兆もの原子が、てんでばらばらで、もこりんの手を作るという目的を無くしてしまったらどうなるかな。」

 「みんなが好き勝手に動いていたら、何にも出来ないですね。」

 「そうなんだ。目的を持たない原子は、何億、何兆集まっても、形あるものは生まれて来ないと言うことが分かるだろう。いいかね、それがカオスなんだよ。」

 「だから、宇宙が生まれる前の世界と言う訳なんですね。」

 「この黒い海はカオスの海なんだよ。」

  「でも、そのカオスの海が、チュウスケとどんな関係があるのでヤすか。」

  「メルシアはそれを見てくるように言ったのだろう。」博士が黒い海を見つめながら言った。

 「海が動いています。」ぴょんたが声を押さえながら叫んだ。

 「あっ、本当だス。もこもこと盛り上がってくるだス。」

  みなは緊張した。ピピを助けるために行った、おばあちゃんの中の黒い海を思い出したからだ。あの時、海から湧き上がった黒い雲が大きな手になって、次々とスケール号に襲いかかってきた。チュウスケもそこから現れた。その記憶が頭をよぎったのだ。

 黒い海面が雲のように動き空に立ちのぼり始めた、大きな黒雲がもやもやと空中で動き、それがネズミの形になって行った。

 「あっ、チュウスケでヤす。」

 もこりんが大声を上げた。

 しかしネズミの形はすぐに崩れて、黒雲は再び海面に消えて行った。黒い海の変化に一度気づくと、同じような動きがあちこちで起こっているのが目に入って来た。

 「あっ、あそこにも!」

 「あの向こうにも、チュウスケが生まれています。」

 「あれは崩れて行く所でやス。」

 静かだと思っていた黒い海は、まるで形を生み出そうともがいているように次々と空中に雲を吐き出していたのだった。

 「博士、あの中に入ってみます。」艦長が言った。

 「危険だぞ。」

 「でもあの中で何が起こっているのか見てみたいのです。スケール号のシールドは完璧です。大丈夫でしょう。」

 「それはそうだが、」

 「心の声に従うのが勇気だと、メルシアも言ってました。心がそう命じているのです。」

 「よし、十分気をつけて、行って見るか。」博士がしばらく考えてから言った。

 「はい。」艦長が元気に答えた。

 「行ってみるだス。」

 「行ってみましょう。」

 「行ってみるでヤす。」

 「ゴロニャーン」

 スケール号はそのまま黒い海の中に飛び込んで行った。

 黒い海は水よりもさらさらした、つかみ所のない物質で出来ていた。液体なのか気体なのか分からない不思議な海だった。まるでドライアイスの煙のようにつかむ事も出来ないのだ。

 「何も感じませんね。」ぴょんたが耳を立てて言った。耳を立てるのはぴょんたが自分の感覚に集中している時の癖だった。

 「ここは一体どう言う世界なんでしょうね。何かが違います。」艦長も意識を集中させて言った。

 「何か、この世界から完全に無視されているって感じだス。」

 「何も無いという感じ。」

 スケール号が黒い海に潜ったその海面に黒い雲が立ちのぼり、もこもこと動いてスケール号の形になった。しかしすぐに崩れて海面に落ちて行った。スケール号のシールドが黒い海に影響を与えたためだ。

 そこに天空から色とりどりの雨が降って来た。赤や黄色や緑、まるでパステルの箱をひっくり返したような雨が降って来たのだ。

 

 つづく

 

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宇宙の小径 2019.8.25

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己に行き着く

 

絵を描き続けるのは何のためなのか

己に聞いてみる

何も知らないところから

絵筆を執って

絵を描き始めた頃

それはただ虚しい自分から

何かを見つけることだった

 

感動する絵に出会うたびに

そこに自分にとっての

大切なものが

あるように

思えたのだった。

 

それが自分にないものを追い求める

迷いの道だったと気付くには

長い時間が必要だった

 

ないものを追い求める

それは

出来ないことが出来るようになるという

人にとっての最高の美点に隠された

人生の落とし穴でもあった。

 

人が

出来ないことが出来るようになるのは

出来る本当の自分に

ようやく出会えたということなのに

それが、スミレがバラになれると

思い込むきっかけとなる。

 

スミレがバラになれるのではない

バラが自分はスミレと思い込んでいた

その思い込みが破れたという

ただそれだけのことなのだ

 

出来ないことが出来るようになるということは

他人になることではない

それは

自分自身に出逢うということなのだ

 

そう理解するには

時間が必要だった

 

ただ

自分に行き着けばいい

そう思えるように

なるまで

 

 

 

 


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