のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

初体験 10

2009-05-30 | 小説 忍路(おしょろ)

25番ゲートは一番奥まったところで、改札を通って随分時間を要したように思えた。自分の肩に力が入っているのを意識しながら、カウンターで搭乗手続きを済ませた。それは今までの苦労を考えればあまりにも簡素であっけないもので、私はチィケットの代わりに渡された搭乗券を拍子抜けしたように受け取った。

 私は搭乗開始までの間、ベンチに腰を下ろして待つことに決めたが、次第に浮き立ってくる気持ちを抑えるように手に持ったスケッチブックを開いた。しかしスケッチを楽しむことなど出来る余裕もなく、目前の初体験に対する不安が頭の中に様々な形で浮かんできた。
 そのうちに再び手荷物のことが気にかかり始めた。荷物はどこにいったのだろう。どうやって受け取ればいいのだろうか。荷物はこの待合のロビーのどこかに届いているはずだったが、そんな所がありそうな場所はなかった。するとすでに飛行機の中に運びこまれていて、目的地の千歳空港の到着ロビー受け取るのかも知れない。いくら考えても経験のない頭の中からは答えが出るはずもなかった。
 にもかかわらず私はそれを誰かに聞くのが恥ずかしいことのように思い最後まで自分で解決しようとキョロキョロ頭を動かすのだ。


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