ドイツの研究者たちはナノ耳をアメリカの物理学専門誌Physical Review Lettersに発表した。人間の耳の100万倍の感度を持つという。
ナノ耳の原理を説明する前に、光ピンセットを説明する必要がある。レーザー光を絞り込むとそこに小さな粒子が捕獲される。生体分子を破壊することなく捕獲出来るので、生物学ではしばしば利用されている。粒子がレーザー光に引き寄せられる原因は、粒子の大きさが光の波長より大きいか小さいかによって異なる。光の波長より大きい場合は屈折率の違いが原因で、小さい場合はレーザー光の電場によって引き寄せられる。
ナノ耳を作成するためには、水中に金のナノ粒子を分散させ、レーザー光を通す。レーザー光の焦点を絞りこむと、その場所に金のナノ粒子が捕獲される。水分子は熱振動(11/12参照)しているが、金のナノ粒子は水分子と衝突しエネルギーをもらい、そのためレーザー光ビームの中心のまわりに一定の広がりをもって分布する。著者たちは、音波を発生すると金ナノ粒子の分布が変化することを観測した。音波が水分子を振動させ、その振動が金ナノ粒子に伝わり、金ナノ粒子の振動エネルギーが増加するためであると考えられる。ナノ粒子は小さくて軽いため、またレーザー光が粒子を閉じ込めるエネルギーがそれほど大きくないため、小さい音も検出出来る。
生きているバクテリアやウイルスが発する音の解析に利用出来るだろうという。また、音顕微鏡、すなわち音の発生場所を特定出来る顕微鏡も、著者たちの視野に入っているようだ。
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