カーボンナノチューブ(CNT)で強化したプラスチックス(CNRP)は非常に強靭で、自動車や航空機への応用が期待されていることを以前に説明した(9/23参照)。
単一壁(single wall)のカーボンナノチューブ(SWCNT)をつないでファイバーに作り上げることは、今世紀初めから多く試みられている。大量に生産出来るカーボンナノチューブの長さは1mm以下と小さいため、連結してファイバーやシートに変換することが望まれる。通常用いられる方法は、SWCNTの溶液中での自己アセンブリである。SWCNTを溶かす溶媒に工夫が重ねられている。ライス大学の研究グループは、直径10~100ナノメーターのSWCNTの束が結びついて直径数マイクロメーターのファイバーを形成していること観測している(V A Davis et al Nature Nanotechnology 4 (2009) 830)。ファイバーには直線状のものやらせん状のものがあり、前者はCNRPに、またその高い電気伝導度が(10/31参照)、後者はその大きい表面積が(水素貯蔵,10/21参照)、それぞれ利用出来るものと期待されている。
最近、中国の研究グループはグラフェンを用いて数メーターの長さのファイバーが作成出来ることを示した(Z Xu and C Gao Nature Communications 2 (2011) 571およびhttp://www.nature.com/news/graphene-spun-into-metre-long-fibres-1.9549)。同様に高い電気伝導度が有用であろう。グラフェン間の結合が通常それほど強くないため、強靭なファイバーを得ることは困難であろう。
最近のNanowerkのニュースは、帝人と東京工大の研究グループが長さ0.2ミリメーター、直径50~300ナノメーターの電気伝導度の高いカーボンナノファイバーを作成したと報じている。その製法は明確に示されていない。リチウムイオン蓄電池(11/25参照)、キャパシター(11/26参照)、燃料電池(10/31参照)に利用出来るという。
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- 結晶秘密たたらサムライ (プロの魂マルテンサイト)
- 2023-08-27 14:26:25
- ルパン三世のマモーの正体。それはプロテリアル安来工場で開発されたSLD-MAGICという高性能特殊鋼と関係している。ゴエモンが最近グリーン新斬鉄剣と称してハイテン製のボディーの自動車をフルスピードでバッサリ切り刻んで、またつまらぬものを斬ってしまったと定番のセリフ言いまくっているようだ。話をもとにもどそう、ものづくりの人工知能の解析などを通じて得た摩耗の正体は、レジリエンス性も考慮された炭素結晶の競合モデル/CCSCモデルとして各学協会で講演されているようだ。
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