ナノテクノロジーニュース

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科学技術とリスク:ナノテクノロジーと原子力テクノロジー

2012-03-26 | 報道/ニュース

福島原子力発電所の事故以来、科学技術はリスクを伴うもので、これを避けることが出来ないというような風潮が広まっているように思える。しかしながら、リスクを避けることも科学技術の重要課題で、リスクをもたらさないようにすることも科学者・技術者の責任であろう。

ナノテクノロジーに関するアメリカ科学アカデミーの勧告にについてすでに述べた(1/27参照)。最近、ドイツの専門家グループが「ナノ材料の危険性評価、人類および環境に対する毒性に関する10年間の研究成果」と題するリポートを発表した。

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レポートによると、ナノテクノロジーの各製造過程でどの程度のナノ粒子が放出されるかを把握すること、さらにそれらの粒子と生態との相互作用を把握し、かつ人類ならびに環境への影響を明らかにすることを強調している。それぞれのナノ粒子について、その安全評価には生物にどのような影響を与えるかを明らかにし、かつナノ粒子の照射量と照射の道筋を明らかにすることが必要であるとしている。

レポートはまた、安全性に関する研究結果を一般に公表することを要求している。技術者はこれらの研究成果をもとに、製品の製造過程で製造に携わる人々はもちろん公衆に危害を与えないようにする義務がある。

原子炉テクノロジーでの放射線の人類に与える影響については、前世紀後半以降多くの研究がなされている。アメリカの原子力規制委員会(NRC)が出した一般向き解説書によると、遺伝的効果、身体的効果、子宮内効果を挙げている。遺伝的効果は人類では発生しないという。しかしながら万が一のことを考えて、大衆に対する許容量が年間1ミリシーベルトに設定されているとしている。身体的効果に対する許容量は年間100ミリシーベルトであることは周知の通りである。

福島原子力発電所の事故以来、日本の原子力技術者が、地震国日本で放射性物質を撒き散らさないためには原子力発電所をどのように改善すべきかといった討論をしたという報告がない。テレビに出てくる専門家は、太陽光発電などは不安定だから、総発電量が不足するから、チェルノブイリで原子力発電所を停めたため経済が疲弊したからといった理由で、我が国の原子力発電所を再開するべきであるという。震災後の応急的措置(8/15参照)によって安全になったとという専門家の発言も聞いたことがない。

アメリカエネルギー省は、将来の方針を決めるときなどしばしばワークショップを開催する。世界中から専門家をシーズンオフの避暑地に集め、1週間ほど討論しレポートを作成する。日本政府は、次の二つのテーマで至急ワークショップを開催するべきである。「地震国での原子力発電所はどうあるべきか」および「今後の対策:避難、除染、被災者の健康管理、食品等の含有放射性物質」

先日の記事で(3/12参照)、IAEAのスポークスマンの大飯原子炉に関する発言を「危険性と安全性とを天秤にかけて再稼働するかどうかを決めるのは日本政府である」と記した。経済性と書くべきところを安全性と書いてしまった。私にはこの発言が次のように聞こえる。「大飯原子炉の安全性は必ずしも確保されているとはいえない。しかし、日本政府が経済性を重視するなら再稼働すればよい。再び福島原子力発電所と同様の事故が起こっても、それは私の関与するところではない。」


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