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民意は原発推進を求めたのではない---放射線公害を再度起こしてはならない

2013-01-04 | 報道/ニュース

産経新聞電子版に掲載された京都大学原子炉実験所教授山名元氏の "[正論]年頭にあたり(http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/619367/)" を読んで背筋が寒くなる思いをした。内容は、今回の選挙での自民党の勝利は、民意が脱原発政策を否定することを意味するというもので、原発を含めたエネルギー政策について持論を展開している。民主党政権下の彼らにとっての厳寒の時代から春の兆しが見えてきたという書きっぷりである。今回の選挙の争点が原発ではなかったことも問題であるが、私が最も不安を感じるのは、この筆者が原子炉工学に携わる専門家であるからだ。

そもそもそもそも科学者ならびに技術者は真理を探求しその結果得られた新技術を世の中に送り出すのが使命だ。しかも送り出すされた新技術は公害を伴うものであってはならない。福島原発事故以来日本の原子炉専門家のとった態度は不可解だった。もし彼らが、今回の事故の結果放射性物質のまき散らしすなわち放射線公害を引き起こしてしまったのは非常用発電機が地下室にあるなど地震・津波国日本に不適切であったことを謝罪し、放射線公害が起こる確率を極度に小さくする手法を立案し政府に提言していたとしよう。人々の原発に対する不安はこれほど大きくならなかったであろう。残念ながら、原子力保安院と電力会社が現存のすべての原発が再稼働可能となるよう決めた応急的安全対策を専門家たちはそのまま承認し、原発は安定な電力源であるから継続すべきであると主張した。人々が原発に対する信頼を失ったのは、専門家のこのような態度によるところが大きい。

原発安全神話の崩壊した後人々が求めるのは、同様の事故が起こってもこのような放射線公害を起こさないことである。安全神話が崩壊したことが "再びこのような放射線公害が起こるかもしれない" を意味するのであってはならない。

原発に最も詳しいのは専門家たちである。民意や政治家は専門家たちの意見にしたがって方針を決めるもので、たまたま民意がそちらに傾いたと思えることで喜んでいる場合ではない。放射線公害を起こさないよう原発を運転し続けること、これが専門家たちの責務であろう。

ちなみに専門家たちは高速増殖炉もんじゅを即刻廃炉にするよう提言すべきである。制御が可能になったとき水冷が危険で、放射線公害が起こる確率を小さく出来ないからである。

原子炉専門家たちは視野を広くすることが必要であろう。海外ではより安全な現存型の原子炉や高速増殖炉が開発されようとしている。現在我が国が原子炉工学を放棄し原子炉廃炉工学に専念することは好ましくない。そのためには、どのような事故があっても放射線公害を起こさないことが先決である。その責務は専門家にある。専門家の集まりである原子力学会が原子力規制庁に支配されるのはあまり好ましい姿ではなかろう。


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