日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

脇差 大慶直胤 Naotane Wakizashi

2016-08-30 | 脇差
脇差 大慶直胤


脇差 大慶直胤

 おそらく造と呼ばれる、横手筋が刀身中ほどにある特殊な造り込み。本歌のおそらくは短刀だが、江戸時代後期には脇差なども同様の造り込みとされており、この迫力ある姿から大いに人気を得た。直胤の他、清麿にもあることで良く知られている。ところで、江戸時代後期の信濃国には清麿の兄真雄がおり、地元では真雄の刀の威力を宣伝する目的で、同時代の先輩で江戸では超の付くほど人気であった直胤を引き合いに出して性能の比較調査をしたという。その結果、直胤は折れやすく、真雄は頗る折れにくく頑丈であったと結論し、真雄を大いに褒めたたえている。現代の広告ではこのような比較は禁止されているし、その比較そのものが正当なものか根拠を示さねば、消費者は納得しないだろう。いくら地元の刀工を高く評価したいとはいえ、根拠のない比較では、あまりにも見苦しい。近代において真雄を研究しているという自称研究家も、そのような昔の説明をそのまま利用して真雄の評価を高めようとしているようだが、果たして、現代の多くの数奇者が、この点を冷静に判断するとなると、どうしたものか・・・。昔から刀剣の評価において、「AはBより劣る」、あるいは「Aに比較してBは品位がない」などという評価のされ方がある。決して作品の出来について述べているわけではないのだが、それを踏襲して作品の評価のように使っている方が現在でもいる。本質的な違いを述べるべきであろうと思う。さて、直胤の生きていた時代、直胤はやはり格別の存在であった。刃味が良く頑強な刀を遺している。時には古備前に紛れるような古風な地鉄と焼刃を生み出している。相州伝においては、独特の激しく沸付いた渦巻き肌があり、大和伝柾目鍛えにも迫力がある。一地方で何と言われようとも、各伝に通じた一格上の刀工といわざるを得ない。
工といわざるを得ない。

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2 コメント

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Unknown (刀装具ファン)
2016-08-31 01:40:30
刀工はどのように評価するのが望ましいのでしょうか?華やかで豊富な働きを見せても、切るたびに刃毀れしては刀の本来の目的を果たせませんし、かといって全ての刀で試し切りを行うのは現実的でありません。刃縁がしまり匂い切れ、焼き邑の無いものが名刀の条件の一つと認識しておりますが、ZENZAI様のお考えをぜひ聞かせてください。
刀工の評価について (善財)
2016-09-02 08:08:56
簡単なようで、実はとても難しい問題です。時代背景にも依りますからね。少し考えてみます。

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