日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

短刀 肥前國忠吉 Tadayoshi Tanto

2011-02-19 | 短刀
短刀 肥前國忠吉


短刀 銘 肥前國忠吉



 表に巌上火炎不動の地肉彫と梵字、裏には護摩箸と梵字を陰刻した、江戸初期らしい頑丈な印象のある短刀。寸法伸びて身幅広く、先反り付いて張りのある姿格好。小板目鍛えの地鉄は良く詰んで地沸が付き、その中に淡く現われた板目流れの鍛え肌に沿って地景が網状に浮かび上がって見える。浅く湾れごころの互の目乱の焼刃は、小沸の粒が綺麗に揃って冴え、沸の粒も刃境に明るく輝く。刃中に淡く広がる匂を切るように細い金線砂流しが掛かる。刀身彫刻の多くは、刀の所持者の守護を目的として彫られたもの。装飾的色合いの濃い彫刻は、江戸時代中ごろ以降にまで降り、戦国時代の余香の残るこの頃には、まだまだ死生観に通じる意識があった。