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日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

両刃造短刀 長舩祐定 Sukesada Tanto

2017-04-05 | 短刀
両刃造短刀 長舩祐定

 
両刃造短刀 長舩祐定弘治三年

 両刃造短刀の恐ろしさは、姿格好からも理解できよう。具足の隙間から突き刺し、どちらに力を入れても致命傷を与えることができる。そもそも刺突を目的とした武器は、三寸ほどで充分に効果がある。小型にして具足の腰に備えるに便利であったものが、頑強な具足へと変わるに従い、強固な造りへと変化していったものであろう。刃長七寸強は、両刃造としてはやや大振りの仕立て。刃文は直刃。帽子の下辺りがわずかに乱れている。刃縁盛んにほつれかかり、時に金線となる。地鉄は良く詰んだ小板目肌に見えるが、地沸が付き地中にうっすらと板目肌が立つ。個銘はないが良くできた作である。備前刀は乱刃だけではない。

短刀 長舩清光 Kiyomitsu Tanto

2017-04-04 | 短刀
短刀 長舩清光

 
短刀 長舩清光元亀二年

清光は直刃基調の作が多い。板目に杢を交えた典型的地鉄で、直刃の刃文は区から始まり、ほぼ一定に物打を越え、ふくら辺りから次第に焼幅が広まり、切先の焼きが深まり、沸付いて掃き掛けを伴うなど先が乱れて返る。刃中は所々ほつれ掛かり、小足が入り、匂の流れがあり、砂流しが交じる。これも典型。
 

短刀 細川正守 Masamori Tanto

2017-03-27 | 短刀
短刀 細川正守


短刀 細川正守

 細川正守は水心子正秀門人正義の子。師流の備前伝を得意とした。江戸時代に入ると短刀は製作されなくなったが、江戸時代後期、復古思想によって再び短刀が造られている。中でも、このような冠落造や、鵜首造が多くみられる。刺突の効用が求められたのであろうか。もちろん斬れ味も鋭い。地鉄は小板目肌。棟側が柾目となっているのが良く判る。刃文は匂主調の互の目乱刃。小足が左右に開き調子で盛んに入る。

短刀 長舩家助 Iesuke Tanto

2017-03-14 | 短刀
短刀 長舩家助


短刀 長舩家助正長元年

 室町初期の家助。正長は応永の次であり、まったく応永備前と言ってよい出来。杢目を交えた板目鍛えの地鉄も、応永杢と言い得る綺麗な杢目が連続しており、映りの立つ平地に地景によって杢目が浮かび上がる。刃文は逆がかる腰開き互の目に小互の目、尖り刃などが交じり、帽子は浅く乱れ込んでごく浅く返る。匂主調の焼刃は、所々に小沸が付いて明るく、刃中に広がる匂の中に清浄な砂流と沸筋が流れ掛かる。

短刀 長舩祐包 Sukekane Tanto

2017-03-13 | 短刀
短刀 長舩祐包


短刀 長舩祐包

 祐包は、江戸時代末期、即ち備前刀最後期の一人。地鉄は良く詰んで小板目状に見えるが、その中にうっすらと板目や杢目が浮かんで見える。均質ながら無地にはならず、綺麗に粒立っているように感じられる、極上の地鉄だ。刃文は腰の開いた互の目に小互の目と小丁子を交えた抑揚のある構成。匂を主調に所々に小沸が付いて明るく、刃中には匂の足が柔らかく入る。帽子は綺麗な直状に小丸に返る。江戸期の備前伝の典型の一つ。短刀は、江戸時代に入ると製作されなくなる。せいぜい寛永頃までで、再び製作されるようになるのは江戸時代後期。

短刀 水心子正秀 Masahide Tanto

2017-03-02 | 短刀
短刀 水心子正秀

 
短刀 水心子正秀文正元年

 平造の刀身に比して大振りの彫刻を施しているところは相州風ではあるが、刃文構成には明らかに備前伝。地鉄は細やかに良く詰んでおり、素質の良さを示している。小沸出来の小互の目に小丁子交じりの刃文は浅く湾れ、匂口が締まって明るく冴え、小足が盛んに入ってこれにわずかに砂流しが掛かる。足は逆がかっており、帽子は先小丸に返る。鮮やかな出来である。

短刀 長舩幸光 Yukimitsu Tanto

2017-02-21 | 短刀
短刀 長舩幸光


短刀 長舩幸光明徳十年

 戦国期長舩刀工の短刀。戦国時代でも年代が上がる作は、このように刃長(五寸五分)が短いにもかかわらず比較的茎が長い仕立てとされている。穂先三寸と言われるように刃物は三寸もあれば十分に殺傷能力を持つ。短めの短刀を具足の腰に収めて戦場で盛んに使用したものであろう、鎧通しもこれに似ている。地鉄は杢目交じりの板目鍛えが良く詰んで小板目風となり、細かな地沸で覆われ、戦場で用いる武器かと思えるほどの美しさ。刃文は匂主調の互の目乱。形状がはっきりとせずに乱れ、足も定まらずに自然味がある。総体に柔らか味の感じられる出来である。この質感は室町時代前期から中期にかけての特質でもある。

短刀 長舩経家 Tsuneie Tanto

2017-01-27 | 短刀
短刀 長舩経家


短刀 長舩経家大永二年

 天正より四十年ほど古い大永頃の備前長舩鍛冶経家の短刀。刃長五寸ほどで少し小振りに造り込んでいるが、刃長の割りに茎が長いのは手持ちを考慮したものか、同じ戦国時代の備前物でも、少し時代が上がるとこのような造り込みが多く、天正頃まで時代が降るとがっしりとした短刀姿になる。刃長は三寸ほどあれば充分に刃物、武器としての役目を果たす。小振りに仕立てて具足の腰に帯びたものであろう。地鉄は備前肌。刃文が湾れ、互の目、飛焼、湯走り、帽子も乱れ込んで先は掃き掛けて返る。沸が強く砂流し金線も強く入り、相州振りが窺える備前の短刀である。


短刀 長舩清光天正五年 Kiyomitsu Tanto

2017-01-26 | 短刀
短刀 長舩清光天正五年


短刀 長舩清光天正五年

 細身の鎧通し。茎が長めで手持ちも良さそうであり、総体に引き締まった感がある。地鉄は小板目交じりの板目肌。所々に小杢が交じり、地沸が付いて地景も顕著。刃文が湾れに互の目、区上に小互の目があり、所々小足が入る。戦国時代の備前清光に間々みられる刃文構成。見るからに備前物の短刀だが、刃文構成に相州伝の影響が窺えよう。純然たる相州伝と言うわけではないが、相州風が見えるのだ。匂主調ながら沸が強く意識され、帽子は焼深く沸筋金線が刃境を流れる。戦国時代に備前刀工も普通に相州の作風を採り入れているのであろうと感じる。

短刀 豊前守清人 Kiyondo Tanto

2017-01-19 | 短刀
短刀 豊前守清人


短刀 豊前守清人

 清人は、後に柾目鍛えに直刃を焼くを得意としたが、初期は師風の備前伝互の目乱に沸を強く効かせた砂流し金線を配する焼刃を特徴としていた。本作は、良く詰んだ柾目調に流れる板目鍛えの地鉄と、出入りに抑揚のある互の目に足の長く入る出来の刃文で、まさに師風。造り込みは懐に隠し持つに適した小振り。地沸が付いて地景が明瞭に入る極上の出来。沸主調の焼刃は、刃縁に沸が強く明るく付き、匂いに満ちた刃中には沸のほつれや足が射し込み、刃境を金線と沸筋が流れて帽子にまで至る。

短刀 吉兵衛尉吉次 Yoshitsugu Tanto

2016-12-27 | 短刀
短刀 吉兵衛尉吉次


短刀 吉兵衛尉吉次

 幕末から明治に活躍した姫路の刀工。造り込みは、重ねががっちりと厚く、腰の上から棟の肉を削いで刺突の効果を高めた構造。地鉄は板目が流れて柾がかり、地沸が付いてと言うより、皆焼状に焼が施されていることから、全面が沸で覆われている。これほどまでに焼が強いと、本来であれば折れ易いのだろうが、重ねが極厚であることから、打ち合いにも充分に耐えられそうだ。良く計算された作と言えよう。刃文は湾れに浅い互の目を交えているが刃形は判然とせず、とにかく刃中は沸が強く流れて迫力がある。これが棟焼まで連続しているのだ。特殊な注文であろう。

短刀 直心斎兼虎 Kanetora Tanto

2016-12-06 | 短刀
短刀 直心斎兼虎


短刀 直心斎兼虎

 小振りに引き締まった短刀。刃長七寸、わずかに先反りが付いた菖蒲造りは、幕末から明治に間々みられるもので、懐に収め易い、いざという場合の守りの武器。兼虎は真雄の子で清麿の弟子。清麿ほど強い地景や金線を出さない小板目鍛えで良く詰み、地沸が厚く付いて刃文も沸の深い乱刃出来。真改や左行秀にみられるような焼刃である。穏やかに出入りする刃境にはほつれが掛かり、刃中に沸が厚く広がって刃先にまで至る。帽子は掃き掛けを伴って小丸に返る。小振りながら覇気に富んだ出来である。


短刀 弘幸 Hiroyuki Tanto

2016-11-17 | 短刀
短刀 弘幸


短刀 弘幸

 堀川國廣の門人、平安城弘幸の九寸八分強の短刀。相州古作を意識したもので、刀身に比べて大振りの彫刻を施している。時代は慶長頃だから、先反りの付いた姿は戦国期の名残り。地鉄は、國廣一門にありながらもさほどザングリとした感はなく小板目肌が良く詰んでいる。刃文はこの工らしく、やはり國廣門人らしからぬごくごく浅い湾れ。浅い焼刃であっても相州気質は顕著で、小沸と匂の複合からなる焼刃の刃境が穏やかにほつれ掛かる。□



短刀 肥前國忠吉 Tadayoshi Tanto

2016-11-15 | 短刀
短刀 肥前國忠吉


短刀 肥前國忠吉

 初代忠吉の寸伸び短刀。身幅たっぷりとして先反りが付き、いかにも実用の武器。腰元に不動明王と護摩箸の表裏重ね彫りをしており、健全体躯を保っていることから、御家の護りとして大切に伝えられたことが推測される。地鉄は忠吉、忠廣の追求した小糠肌とも呼ばれる肥前肌。所々に板目肌が浮かび上がって地沸で覆われている。刃文は互の目に湾れの複合。刃縁の沸が深く明るく、刃中には沸が流れ込んでほつれ掛かり、一部は控えめな砂流しとなる。大ぶりの彫物が施された幅広の造り込みに、沸深い焼刃は相州伝。その一方で、完成度の高い肥前独特の風合いが滲み出ている。

短刀 金道 Kinmichi Tanto

2016-11-14 | 短刀
短刀 金道


短刀 金道

 初代伊賀守金道の、受領前の作。一尺六分五厘。ごくわずかに先反りが付いて、いかにも実用の姿格好。戦場では重宝されたかと思う。平肉も削いだ刃先鋭い構造であることから斬れ味も高い。地鉄はザングリと肌立つ板目に杢目交じりで、地沸が付き、杢状の肌目と映りによっておぼろ立つような景色が能動的。刃文は腰の開いた互の目が尖り調子となり、湾れが加わって構成は比較的複雑。刃境は匂口が引き締まって明るく、刃境にほつれが掛かり、刃中に色濃く広がり、沸筋砂流しとなる。帽子も刀身と平行に働く気配が濃厚で、地蔵風に乱れて返る中に火炎状に浮かび上がる。三品派の金道は、出身が戦国時代の美濃。京都に移住し、その頃隆盛していた相州伝を加味した作風を専らとした。帽子に、地蔵風に乱れ先がって返るところが美濃の作風を残しているところ。