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日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

短刀 長舩永光 Nagamitsu Tanto

2017-05-30 | 短刀
短刀 長舩永光


短刀 長舩永光天文十三年

 六寸七厘、重ね二分八厘の鎧通し。かなり使い込んでいるが、重ねがしっかりと残り、鋒も焼深く健全だ。刀身中ほどが研ぎ減りで幅狭くなっているのが判ると思うが、ぼてっとした姿に比較して結構格好がいいと思う。刀身中ほどのやや上辺りの棟が削がれているのも使い勝手を研究した結果であろう。地鉄は良く詰んで小板目状に見える。刃文は湾れ刃。ほつれ、喰い違い、金線、沸筋、砂流しが働き、帽子も調子を同じくして掃き掛けて返る。

短刀 長舩清光 Kiyomitsu Tanto

2017-05-29 | 短刀
短刀 長舩清光


短刀 長舩清光天正五年

 七寸三分半、重ね二分強。尋常な造り込み。杢目交じりの板目肌に地沸が付き、地景で肌が起って見えるが、鍛着は密であり、疵気はない。特に地景が明瞭に現れており、地の色に濃淡変化があって綺麗だ。刃文は湾れに互の目が節のように交じったもの。このような刃文もある。小沸に匂を交え、細かな金線ほつれが掛かる。帽子の焼きが深いが、返りは比較的短い。

短刀 長舩清光 KiyomiTsu Tanto

2017-05-27 | 短刀
短刀 長舩清光


短刀 長舩清光天文十七年

 清光というと直刃を思い浮かべるが、このような腰開き互の目も焼いている。地鉄は杢目を交えた板目肌で、地沸が付き肌立つ感があるも、疵気はない。斬れそうな地鉄だ。刃長六寸強、小振りで具足の腰に収め易い造り込み。焼刃は腰開きの浅い互の目で、刃縁を沸筋金線が走り、刃中には沸筋が金線を伴って流れる。帽子も乱れ、先も複雑になり、返りも乱れて長く焼き下がる。

短刀 長舩祐光 Sukemitsu Tanto

2017-05-26 | 短刀
短刀 長舩祐光


短刀 長舩祐光永禄八年

 七寸五分、元幅七分六厘、重ね二分七厘だから、厚手の鎧通しだ。地鉄は縮緬状に細やかに揺れる板目肌で、地景により肌目が立っているにもかかわらず総体に均質である。直状の映りが立ち、質は特に優れている。刃文は細直刃で、堅い鎧の隙間から用いることを想定したもの。面白いのは、祐光の銘。祐光は勝光や宗光の父として知られている。この祐光は茎に五郎左衛門尉清光の子と記されている。即ち祐光の古銘を復活させようと考えたもの。祐定と清光の二大流派が隆盛の時代、このような長舩鍛冶の多くの刀工は、祐定家や清光家にのみ込まれていたのであろうか。

短刀 長舩忠光 Tadamitsu Tanto

2017-05-25 | 短刀
短刀 長舩忠光


短刀 長舩忠光永正九年

 ちょっと磨り上げられていて光の字が失われている。永正頃だから、総体に比較して茎が長かったものだが、区送りによりさらに長くなったことから切り縮めたのであろう。身幅が狭いことから鎧通しとされたに違いない。地鉄は板目肌が地景によって綺麗に立って現れている小板目鍛え。刃文が互の目の連続に砂流が掛かり、帽子は小丸に返り、区まで棟焼が連なっている。棟焼の中にも小互の目が交じっており、かなり特殊な出来。もう一つ、忠光には直刃が多いことから直刃が得意であることは理解しているのだが、互の目乱も優れたものを遺していることがわかる。

短刀 長舩治光 Harumitsu Tanto

2017-05-24 | 短刀
短刀 長舩治光


短刀 長舩治光

 六寸八分強の鎧通し。刃長に比較して茎が長め。時代は大永頃、即ち戦国時代もちょっと時代が上がる。両刃造短刀でも説明したが、時代の上がる短刀は、刃長が短めで茎が長い。先に紹介した天正頃の祐定と比較すると良く判ると思う。時代的に五十年ほどの差がある。地鉄は緻密に詰んでおり、刃文は湾れ刃。写真では分かり難いが、小沸に匂が伴い、刃中には淡く沸筋が流れる。

短刀 長舩祐定 Sukesada Tanto

2017-05-23 | 短刀
短刀 長舩祐定


短刀 長舩祐定元亀三年

 祐定の綺麗な地鉄の短刀。地鉄は戦国時代の備前物の特徴的な杢目交じりの板目肌が均質に詰み、地景で強く立って見えるのだが、鍛着は密。刃文が変わっている。直刃から始まりごく浅く湾れが交じり、所々の小足が入り、帽子は丸く返っているが先端は掃き掛け、丸みを帯びて返り、長く焼き下がる。

短刀 長舩清光 Kiyomitsu Tanto

2017-05-19 | 短刀
短刀 長舩清光


短刀 長舩清光永禄七年

 身幅広く重ね厚くがっしりとした造込みで、先反りが付いている。先反りのある造り込みは截断に適しているが、この短刀を実際に戦場で用いたものか不明。あまりにも出来が良いからだ。地鉄は特段嘉綺麗に詰んだ小板目肌で、細かな地景によって小杢が綺麗に現れている。残念ながら映りはない。腰元の彫物が活きている。刃文は直刃に始まり、小模様に浅い湾れが交じり、先はわずかに乱れて返り、返りが尖り調子の互の目に乱れている。特別注文であろう。

短刀 長舩春光 Harumitsu Tanto

2017-05-12 | 短刀
短刀 長舩春光


短刀 長舩春光永禄十年

 九寸六分強。わずかに先反りの付いた短刀。地鉄は板目肌が強く現れて肌立ち、地沸が付いて焼が強く施されたことが判る。春光は帽子の返りを長く焼き下げるを特徴としており、この短刀においても、写真では分かり難いのだがその様子が窺える。刃文は互の目が地に突き入るような出入りの態で、小沸に匂を伴い明るく、足はさほど密に入らないながら、互の目に湾れ、物打辺りが穏やかになって先乱れて返るなど変化に富んだ構成とされている。

短刀 長舩永光 Nagamitsu Tanto

2017-05-09 | 短刀
短刀 長舩永光


短刀 長舩永光享禄五年

 質を異にする鋼を交ぜ込んで強度を高めており、これによって肌の色合いが微妙に異なる結果となり、鍛え肌が強く鮮明に浮かび上がっている。皆焼ではないが棟焼を強く施しているところから焼き入れの温度管理も難しいところであろう、地の風合いは、焼き入れの調子によってこのように強くなるものだと改めて得心される。刃文は焼が深いために互の目ながらその互の目が良く判らない。刃中に足が入っているためにようやく互の目と判断できる。刃境はほつれ掛かり、これが地中では地景となっている。焼の深い帽子は先がほつれて火炎風になる。

短刀 長舩則光 Norimitsu Tanto

2017-05-08 | 短刀
短刀 長舩則光


短刀 長舩則光永享十二年

則光は室町時代中期の長舩鍛冶を代表する一人。この短刀は、彫物を含めて景光や兼光を再現したもの。特に湾れ調の腰の開いた浅い互の目は兼光を、片落ち風のところは景光を想わせる。地鉄は杢目交じりの板目肌で、映りは景光風に凄みがある。室町時代には、このように古作を手本にその再現を試みた作が間々みられる。これも復古意識によるものであろうか。

両刃造短刀 Tanto

2017-04-10 | 短刀
両刃造短刀


両刃造短刀

 写真資料のある両刃造短刀を、製作年順に並べてみた。1明應二年の勝光、2明應五年の祐定、3永正二年の祐定、4享禄二年の祐定、5天文二年の清光、6弘治三年の祐定、7元亀二年の与三左衛門尉祐定、8天正九年の与三左衛門尉祐定。わずかな区送りもあるが、寸法を合わせてあるので、刃長と茎長の関係が判ると思う。7の元亀二年の祐定は特殊な例と考えられるが、おおよそは時代の変遷が分かると思う。こうして眺めてみると、7の祐定の引き締まった様子が良く判る。高級武将の備えであったと推測される。

両刃造短刀 与三左衛門尉祐定 SukesadaⅡ Tanto

2017-04-08 | 短刀
両刃造短刀 与三左衛門尉祐定

 
両刃造短刀 与三左衛門尉祐定

 天正九年、即ち二代目の与三左衛門尉。刃長七寸。身幅も広くなって、姿が大振りに感じられる。両刃造短刀は、戦国時代のわずか百年ほどの間にしか製作されていないことは説明した。このわずかの期間においても造り込みは変化している。初期は比較的短く、次第に大振りに変わっている。地鉄は良く詰んだ鍛えと板目が交じり合った綺麗な出来。刃文は小沸に匂が複合され、皆焼風に焼深く構成された小互の目丁子。写真では刃中の様子は良く判らないが、複雑である。

両刃造短刀 与三左衛門尉祐定 Sukesada Tanto

2017-04-07 | 短刀
両刃造短刀 与三左衛門尉祐定


両刃造短刀 与三左衛門尉祐定

 元亀二年の作だから、初代の時代の与三左衛門尉祐定。刃長六寸強の、やや小振りに引き締まった造り込み。時代が降るとどっしりとした造り込みとなる。地鉄は微塵に詰んだ小板目肌に板目が交じり、肌目立つことなく地沸が付き、潤い感さえある。極上質の鋼を丁寧に処理したことが想像される。刃文は互の目乱。焼深く、沸が付き砂流しが掛かる。焼刃構成は複雑で、沸匂の深な中に砂流や金線が走る。240□

両刃造短刀 長舩勝光 Katsumitsu Tanto

2017-04-06 | 短刀
両刃造短刀 長舩勝光


両刃造短刀 長舩勝光明應二年

 時代の上がる両刃造の典型。刃長五寸強の小振りながら、刃長に比較して茎が長い。両刃造はこの頃から戦国時代末期までの百年ほどの間にしか製作されていない。両刃に焼刃を施すわけだから、製作は困難だろうと思う。技術の高い工のみが製作を任されていたのであろう。しかも丁寧な作業によるだろうから、特に出来が良い作が多い。刃文はゆったりと開いた腰開き互の目。この焼刃の中にほつれや金線が交じる。基本は互の目だが顕著ではなく、むしろ湾れの要素が強い。