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日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

太刀 来國俊 Kunitoshi Tachi

2018-03-02 | 太刀
上杉家伝来の名刀から

太刀 来國俊元亨元年十二月日

 鎌倉時代後期の山城を代表する名工、来國俊の太刀。来派は、大陸から優れた鍛造技術を携えて渡来した技術集団であった。それまでの我が国の作刀技術に来派の地鉄鍛えが加わり、格段に急速に進歩した、と考えている。良く詰んだ小板目鍛えの地鉄が綺麗で、刀身下半に乱れ映りが現れているのが良く判る。刃文は、備前の互の目丁子の影響を受けているのであろう、湾れ調子の構成に華やかな互の目丁子出来。互の目は大小変化に富み、大振りの互の目は袋状に丸みが大きく、これに小丁子、足が加わって華やか。文保四年に七十五歳作があることから元亨元年は八十一歳。もちろん弟子の相槌があってのことだが、この年齢で、これだけの作品を生み出すのだから、凄い。

太刀 助宗

2018-03-01 | 太刀
上杉家伝来の名刀から

太刀 助宗

 鎌倉初期の美しい太刀姿がまず目にとまる。腰反り高く、先幅はしっかりと遺っており、区も深いところから研ぎ減りが少ないのだろう、このような健全な姿は記憶にとどめておきたい。板目肌が良く詰んでいる地鉄は、無垢鍛えからであろう、刀身下半に映りが立っており、思いもよらぬ美しさ。地中に穏やかな景色が窺え、古人もこのような鋼の美観に気付いていたのであろうか、思いは鎌倉時代へと広がる。これに古調な直刃調子の小乱の刃文が焼かれている。刃中は小模様な乱れに小互の目、小丁子がまじり、時代の上がる一文字派の特徴が窺える。

太刀 長舩長光文永十一年 Nagamitsu Tachi

2018-02-27 | 太刀
上杉家伝来の名刀から

太刀 長舩長光文永十一年十月廿五日

 高瀬長光。二尺四寸三分で腰反り深く一寸五厘。踏ん張りがあり、茎尻辺りは衛府太刀拵に収めるためであろうか、わずかに削がれた造り込み。鎌倉時代に隆盛をみた長舩派の棟梁で、バランスの良い太刀を世に送り出しして長舩鍛冶の存在感を見せつけたのであろう。地鉄は杢目交じりの板目肌が強く肌立ち、帯状の映りが平地を走る。刃文は互の目丁子。一文字ほど激しくはないが、焼頭が丸みを帯びて出入り複雑、刀身中ほどの互の目の頭から地中に煙り込むような働きが窺え、この刀の特徴となっている。

太刀 兼光 Kanemitsu Tachi

2018-02-23 | 太刀
上杉家伝来の名刀から

太刀 兼光

 大町甚右衛門尉が磨り上げたことから大町兼光と呼ばれている作。元先の身幅広く、大鋒に結んだ、南北朝時代の典型的造り込み。現状で二尺三寸七分。ゆったりと反りが付き、磨り上げながら元姿が想像される。小板目肌が良く詰んだ地鉄に映りが立ち、地景が交じって網目のような地相。刃文は匂口の締まった細直刃調の浅い湾れ刃で、小足が穏やか入り、飛焼が入る。浅く乱れ込んだ帽子は尖って返る。南北朝時代には相州伝の焼き入れ方法が流行しているため、沸の強い大乱が多いのだが、その中でこのような穏やかな刃文構成はむしろ凄みが感じられる。父景光の時代から低い焼に片落互の目の刃文が焼かれるようになっており、このような刃文は同時代の他工にも間々みられるところである。大磨上だから、遺されている銘文は兼光のものではなく、大町右衛門尉の手になるかと思われる。

太刀 Kanemitsu Tachi

2018-02-22 | 太刀
上杉家伝来の名刀から

太刀 備州長舩兼光 延文五年六月日

 三日月兼光の号のある作。刃文に特徴のある作。姿格好は身幅の広い南北朝スタイルで、良く詰んだ小板目肌に鍛えられている。映りは比較的淡く、鎬寄りに起ち、区上から下半が比較的強く感じられる。刃文は匂主調に小沸が複合された腰開き互の目乱で、帽子は小さく乱れて焼き詰風。互の目と互の目の間の平地側に、小模様に乱れた尖刃が焼かれており、これが山間に沈みゆく三日月のように見えるという特徴がある。

太刀 備州長舩盛重 Mirishige Tachi

2018-02-21 | 太刀
上杉家伝来の名刀から

太刀 備州長舩盛重 文正元年二月日

 備前国大宮盛重の、茎の長い太刀。刃長三尺八寸一分、反り一寸五分強。この長さを破綻なく鍛え、しかも均質に焼き入れているのだから凄い。良く詰んだ地鉄に、激しく乱れた映りが立つ。刃文は腰の開いた互の目に小丁子交じり。丸みのある互の目が花のように寄り添って一つの単位となり、これが小互の目丁子の中に連続している。匂口に柔らか味があり、茎長く頑強で、激しい打ち合いをするためものだろうと思われる姿からは想像もできない美しさ。これがこのように遺されてきたことを想うと、手を合わせたくなる。

太刀 越後國住行光

2018-02-20 | 太刀
上杉家伝来の名刀から

太刀 越後國住行光作 天文二十三年二月吉日

 天文年間の越後の刀工。作品を見る機会のない刀工なので、ちょっと驚いた。長寸で身幅がありがっしりとした造り込み。茎が長く、長巻のような使い方をされたのであろう、攻撃的な実用武器だ。地鉄は板目が強く肌立って、決して綺麗というわけではないのだが、迫力がある。茎尻の形が加州茎であり、加賀刀工の流れを受けているものか。映りの立つ地鉄も凄みがあり、刃文は小模様に、互の目、小乱、小丁子が交じる複雑な焼刃に、二重刃、三重刃が現われ、さらに無数の小足状の働きが入り、ここも迫力がある。


太刀 長谷部國信(からかしわ)

2018-02-19 | 太刀
上杉家伝来の名刀から

太刀 長谷部國信(からかしわ)

 からかしわと号されている長谷部國信の太刀。國信は兄國重と共に相州伝を学んで後に京都において栄えたという。激しい皆焼刃に特徴がある。この太刀は、茎の形状が典型で、その先端まで遺されて貴重。元先の身幅も比較的たっぷりと残されており、堂々としている。焼が深いために地鉄の様子が分かり難いのだが、板目が強く焼が強いために熱反応から割れが生じているのではないだろうかという懸念を吹き飛ばすような綺麗な地鉄。刃文は廣光に比較してさらに焼の高い皆焼出来。焼刃が鎬筋を超えて広がり、互の目は腰開き調子に形も複雑さをみせ、大互の目の中に小互の目、丁子、足、葉、島刃などを焼いているのだが、刃中は沸付いてもちろん明るく、地にこぼれた沸も強い。

太刀 國宗 Kunimune Tachi

2018-02-16 | 太刀
上杉家伝来の名刀から

太刀 國宗

 刃長二尺六寸九分、反り一寸二分。鎌倉時代中期の備前国宗と極められている、元来が無銘の太刀。茎が雉子股に仕立てられており、腰反りがおおらかについて踏ん張りがあり、小鋒に結んで備前刀らしい出来。姿はもちろん堂々として素晴らしいのだが、地鉄の美しさが際立っている。杢目交じりの板目肌が、均質に、しかも良く詰んでおり、地景によって肌目が綺麗に起ち、鮮やかさは絶品。映りは焼刃の上に暗帯部を伴って乱れて現れているが、鎬地に向かって淡く溶け込んでいるかのように広がり、この太刀の大きな見どころとなっている。匂口明るく冴えた刃文は比較的穏やかな互の目丁子で逆がかった小足も穏やかに入る。

太刀 國綱(粟田口) Kunitsuna Tachi

2018-02-15 | 太刀
上杉家伝来の名刀から

太刀 國綱(粟田口)

 刃長二尺五寸一分、反り一寸二分。腰反り深く踏ん張りのある美しい太刀姿。先へ行っても反りがある輪反り風で、上品でありながらも截断にも意を払った造り込み。地鉄は均質に鍛えられた小板目肌で、全体に杢目と板目を交え、縮緬状に揺れて肌立つ風がある。山城物というと、小板目鍛えが密に詰んだものを思い浮かべるが、この太刀はかなり肌目が強く意識されている。ここが一つの見どころであろう。刃文は直調の浅い湾れ刃の構成で、区上に互の目が焼かれている。この辺りは鎌倉時代の粟田口派らしい出来。総体に小互の目と丁子が穏やか交じっており、この点でも品位が感じられる。

太刀 吉家(三条) Yoshiie Tachi

2018-02-14 | 太刀
上杉家伝来の名刀から

太刀 吉家作(三条)

 三条吉家の太刀。二尺五寸一分、反り七分二厘。鎌倉時代前期に三条吉家と一文字吉家がおり、銘も似ていることから両者の異同については様々に論じられている。比較的刃文がおとなしいのが三条で、華やかなのが一文字、或いは板目が強く出ているのが一文字、小板目肌が微塵に詰んでいるのが三条、といった違いがある。この太刀は、山城刀工らしい、微塵に詰んだ小板目鍛えの地鉄で、鎬寄りに映りが立ち、互の目に丁子を交えた匂出来の刃文を焼いて華やかな作である。地鉄を見て、三条吉家はこのような出来なのかと、改めて得心した。とても綺麗な出来である。

太刀 守次 Moritsugu-Aoe Tachi

2018-02-13 | 太刀
佐野美術館で上杉家伝来の名刀を鑑賞してきた。

太刀 守次(青江)

 刃長二尺八寸九分、反りが一寸三分。腰反り深く踏ん張りのある格好の良い大太刀。般若の太刀と呼ばれている。小鋒に結び、樋かが掻かれており、腰元の樋中に三鈷剣と梵字の肉彫があり、これも姿に緊張感を与えている。とにかく地鉄が綺麗だ。均質に詰んだ小板目肌に縮緬状の杢目板目が交じり、それが過ぎることなく綺麗に起っている。細かな地沸で全面が覆われ、区上辺りから乱れた地斑映りというべきであろうか、乱れと濃淡変化に富んだ映りが強く現れ、次第に穏やかになって上部へと向かい、物打辺りで丁子状の映りが顕著となり淡く地に溶け込んでいる。この地中の景色が素晴らしい。誰も真似ることのできない、創造を超越した景色であり、鎌倉期の鋼だけが持つ神秘としか言いようがない。穏やかな暗帯部を伴う焼刃は、小乱調に始まり、上部に行くに従って次第に穏やかな直刃小乱調となり、小足が入り、一部逆がかって頗る上品。帽子は小丸に返っている。鎌倉時代後期の青江守次である。佩裏は鑑賞してないのでわからないが、叢のない均質な地鉄で、映りも鯰肌と呼ばれるような斑状とはならないところが見どころ。

太刀 國資 Kunisuke Tachi

2017-08-26 | 太刀
太刀 國資


太刀 國資

 鎌倉後期の延寿國資在銘の太刀。國資は國村の子と伝えられている。姿は山城伝の鳥居反りで、とても綺麗だ。地鉄も頗る綺麗な小板目肌で、山城伝が強く現れている。銘を見なければ山城本国に間違えそうな風合い。刃文も互の目が穏やかに連続しているのだが、所々互の目のわずかに高く配されているところがるのと、所々に湯走り状に二重刃のような焼を伴っている。帽子は調子を同じくしてわずかに乱れ込んでいる。微塵に詰んだ小板目肌に繊細な地景によって現れた杢肌や板目肌も美しく、本国の國俊や國光に紛れそうな出来だ。



太刀 吉次作(鞍馬関) Yoshitsugu Tachi

2017-07-27 | 太刀
太刀 吉次作(鞍馬関)


太刀 吉次作

 美濃から山城国の鞍馬村に移住したのが鞍馬関と呼ばれる一派。この太刀は二尺九寸近くあり、反りの深い野太刀。時代は応永頃。茎が長いことから両手でしっかりと保持し、馬もろとも馬上の武者を攻撃する武器だ。重量があることから扱い勝手は悪そうだ。ただ、ものすごい迫力で、その存在感で相手を威圧することは間違いない。地鉄は古風な板目が揺れて流れる。古風な地相から、あるいは鞍馬という地名からも修験鍛冶を想わせるところがあるが、その辺りは謎が多い。美濃国から鞍馬に移住したというも、それ以前に、すでに古くから鞍馬に鍛冶が存在した可能性も高く、美濃への移住で鍛冶の技術を学び取り、再び鞍馬に戻って作刀したものか、今後の研究に期待したいところ。刃文は焼落としから始まる湾れ調で、物打辺りから穏やかな直刃となり、帽子も浅く丸く返る。刃中は小乱調に沸で乱れ、その中に金線、稲妻、沸筋が複雑に入り組み、応永頃とは思われぬ古風なところがある。

太刀 延清 Nobukiyo Tachi

2017-07-26 | 太刀
太刀 延清


太刀 延清

室町時代中後期の周防国二王鍛冶、延清の作。磨り上げと茎の仕立て直しが加わっているために茎が少し長いが、二尺三寸ほどのがっしりとした感じが判る。地鉄は杢目を交えた板目鍛えで、総体に均質に詰み、揺れるような肌合いが刃先では流れるような地鉄の景色を生み出している。古作とは違った綺麗な地鉄となっている。刃文はこの流派に特徴的な直刃。刃中にはほつれ、喰い違い、細かな金線、砂流しなど大和伝の働きが濃密。帽子も掃き掛けてわずかに返っている。