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日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 長舩宗光 Munemitsu Katana

2017-04-18 | 
刀 長舩宗光


刀 長舩宗光延徳二年

この刀の写真資料に関しては、申し訳ないことだが刀身全体の写真が見つからない。分部写真しか残っていないので、これでご容赦願いたい。見ての通り、ゆったりとした湾刃出来。地鉄も板目に杢目が交じってゆったりと流れるような肌が地景によって強調され、その肌間は小板目状に良く詰んでいる。鎬寄りに直映りが立ち、映りの中に繊細な地景が交じり、地斑状にもなって自然な景色が窺える。匂に小沸を交えた焼刃は、湾れの中に小足が入り、焼の深い部分には逆足のような乱れが加わり、穏やかな構成の中に品のある景色が窺える。備前物は互の目丁子出来だけではなく、このような刃文もある。



刀 長舩忠光 Tadamitsu Katana

2017-04-15 | 
刀 長舩忠光


刀 長舩忠光延徳二年

 忠光は、室町中期の備前長舩を代表する名流の一。直刃を得意としたことでも有名。この刀の出来が典型。杢目を交えた板目鍛えの地鉄は地沸が付いて地景が交じり、総じて小板目状に綺麗に詰んでいるため、その中に杢や板目が立っているように感じられる。刃文は小沸に匂を交えた中直刃。刃境にほつれが現れ、金線砂流しを伴い、物打辺りが特に強く稲妻状に際立っている。刃中に小足が盛んに入るといった状態ではないが、所々に穏やかな小足が入る。帽子は小丸返り。

刀 雲重 Unjuu Katana

2017-04-14 | 
刀 雲重


刀 雲重

 備前国でありながら、長舩派や一文字派とはちょっと離れた地域で作刀していたことから、ひとくくりで備前刀とは評価できないのが雲生、雲次、雲重などの宇甘鍛冶である。山城物や隣国備中青江物に似た作風であるともいえる。本作は南北朝時代の雲重と極められた作。地鉄が小板目基調であり、杢を交えて良く詰み、斑状に映りが立つ。匂口の締まった刃中には小足が入り、ほつれ掛かり、同時代の青江物に良く似ている。

刀 長舩祐定 Sukesada Katana

2017-04-11 | 
刀 長舩祐定

 
刀 長舩祐定天正元年

 刃長二尺二寸強。反り深くしっかりとした造り込み。地鉄は板目が強く、小板目鍛えを交えて肌立つ風があり、所々に杢目が交じる。その杢目が刃中において渦巻き状の形式を生み出しているのが面白い。本作は刃中の複雑な景色を鑑賞したい出来。刃文は湾れの所々に崩れたような互の目を交えており、それが強くなく、穏やかな変化を生み出している。このように備前刀は、互の目丁子だけではない。個銘はなく備州銘ながら、すごく良くできている。
 

刀 古備前吉包 Yoshikane Katana

2017-03-30 | 
刀 古備前吉包

 
刀 古備前吉包

 平安時代から鎌倉前期までの、備前国の時代の上がる刀工群を、その後の一文字派や長舩派などと分けて古備前と呼んでいる。特に古備前派という流派があったわけではない。地鉄が一段と古調で、刃文は、初期には小乱と呼ばれる刃型が不明瞭な作風から、次第に互の目や丁子が生み出されてくるという、刃文の初期段階の時代の流れが見えてくるのが初期の特色である。中でも吉包は、互の目丁子が明瞭で華やかなところに特徴がある。この磨り上げ無銘の太刀でも、地鉄が古調な板目で、ねっとりとした風情があり、映りが鎬寄りに現れるという古い作にみられる特徴もある。華やかな互の目丁子の刃文と言うと一文字派がまず浮かぶのだが、吉包も古備前では華やかな作風を得意とした初期の刀工として忘れることができない。
      

刀 金房政次 Masatsugu Katana

2017-03-28 | 
刀 金房政次天正九年


刀 金房政次天正九年

 戦国時代後期の、大和の刀工。槍などの製作においても良く知られており、刀は頑強な造り込みが特徴となっている。この刀は二尺七寸強、1キロを超える重量がある。鉄の具足などには効果があろうと思うが、現代に生きる軟弱な私では、抜き難く振り回しにくいだろうなと、感じてしまう。かなり筋力を増強させた、屈強の武士が備えとしたのであろう。地鉄は肌立つ板目肌。刃文は、備前の影響を受けたのであろう、匂口の締まった互の目丁子。やや逆がかっており、足が入り、帽子は火炎風に乱れて返る。

刀 水心子正秀 masahide Katana

2017-03-25 | 
刀 水心子天秀

 
刀 水心子天秀(正秀)

 新々刀期の祖と崇められているのが正秀。最初は相州伝を極め、肌目の際立つ大互の目や、大坂新刀の中でも助廣の濤瀾乱を手本とした出来を得意としたが、次第に刀は鎌倉時代に還るべきとの意識を強めていった。晩年は本作のような互の目丁子を多く見る。綺麗に詰んだ小板目鍛えの地鉄に、逆がかった小互の目丁子。焼頭は一定にならず高低抑揚があり、一部は地に尖って入るところがある。刃中に匂が満ちて足が盛んに入る。高い斬れ味を想像させる出来である。
    

刀 一貫斎繁政 Shigemasa Katana

2017-03-21 | 
刀 一貫斎繁政


刀 一貫斎繁政

 彫物上手でも知られる近代の名工一貫斎繁政。また備前伝を得意としたことでも有名。この刀も、バランスの良い打刀に小互の目丁子を焼き、覇気横溢の這龍を肉彫した作。地鉄は良く詰んだ小板目鍛えで、流れ肌が窺え、細かな地景がこれに絡んで力が感じられる。刃文は小沸匂が複合した小互の目丁子だが、足が盛んに入るといった風ではなく、刃境が小互の目に砂流やほつれなどで変化があり、ここに小丁子が交じるといったところ。帽子は浅く乱れ込んで先掃き掛けて返る。面白い、楽しめる作である。

刀 長運斎綱俊 Tsunatoshi Katana

2017-03-18 | 
刀 長運斎綱俊


刀 長運斎綱俊

 綱俊、國秀、宗次、宗寛、宗明などこの周辺の刀工は、いずれも斬れ味が良いことで知られている。この刀の銘をみると、二人による截断が行われている。いずれも両車、即ち腰骨の辺りを斬ったことが判る。凄い斬れ味だ。造り込みも、この肉厚で斬れるのかと感じられるほどの二分九厘もある厚さ。もちろん刃先寄りの肉は削いであるから刃が通るのであろう。それでも身幅が広く、すごい。地鉄は良く詰んだ小板目鍛えで、細かな地景を伴う板目が交じる。刃文は匂を主調とする小丁子乱。焼頭がやや尖り調子に地に突き入る部分、小さく丸みを帯びた部分などがあり、焼の高さも高低抑揚があり、その中を鋭い金線が走る。特に物打辺りの地刃を走る稲妻が鋭い。ずいぶん前だが、このような金線や地景を疵だと言い張っていた方がおられたが、どこでそのような教育を受けたのだろう、単純なことながら、実際に刀を手に取って観察することをおすすめする。

刀 藤原守行 Moriyuki Katana

2017-03-16 | 
刀 藤原守行

 
刀 豊後國藤原守行

 本作は江戸時代寛文頃の豊後刀。小杢目鍛えの地鉄に小丁子の刃文。刃文が殊に細やかで複雑。特に地に突き入るような小丁子の頭は歪んでいたり尖っていたり、単に丸みを帯びて足が長く伴っているだけでなく、時に渦巻くような焼刃があったり、とにかく面白い。匂口明るく締まり、刃中には匂が満ちて刃文が鮮やかに起つ。備前伝の一つに進化形と考えてよいだろう。
    

刀 藤原正行 Masayuki Katana

2017-03-16 | 
刀 藤原正行


刀 藤原正行

 豊後刀には、古刀期から備前物に紛れる作があることは良く知られている。特に古刀期で、備前刀で違っていたら豊後刀と考えるというような見方がある。本作は慶長頃。この刀も、小板目鍛えの地鉄に板目が交じって新刀期のそれだが古風なところも窺え、刃文が腰の開いた互の目に尖刃交じりの変化に富んだ構成。匂が主で、小沸が付き、刃中は匂が島刃状に連続している。この様子が蟹の爪のように見えるところがある。物打辺りは小丁子が交じって一際備前風。帽子は乱れ込んで返りが長い。ちょっと分かり難いかもしれないが、風合いは備前物。

刀 月山貞一 Sadakazu Katana

2017-03-15 | 
刀 月山貞一


刀 月山貞一

 文久頃の、伸びやかな造り込み。地鉄 は小板目肌が良く詰んで小杢が交じり無地風にはならずに綺麗に肌が起ち、潤い感に満ちている。互の目に小丁子交じりの刃文が、あまり揃わずに連続している。だが良く観察すると、四つほどの互の目が単位となって連続しているのが判る。刃縁に小沸が付いた匂主調の焼刃は明るく冴え冴えとし、足長く射す。帽子も調子を同じくして乱れ込み、先に沸が付いて掃き掛けて返る。綺麗な備前伝である。月山というと、綾杉鍛えを思い浮かべるが、このような備前伝を得意としている。

刀 守久 Morihisa Katana

2017-03-09 | 
刀 守久


刀 守久

 石堂派は江戸においても活躍している。その一人が守久。江戸時代前期の明暦頃。刃長二尺三寸、反り四分。この時代の典型的姿格好。二尺三寸を定寸と呼んでいる方は、この時代の刀を指しているだろうと、想像しているのだが、実際には戦国時代のものまで二尺三寸を定寸と勘違いしている方が未だにおられる。二尺三寸が定寸は、戦のない平和な、このような時代の刀のこと。戦がないとはいえ、この刀工も良く斬れたことで評判である。良く詰んだ小板目鍛えの地鉄に、乱れた互の目に小丁子交じりの刃文が複雑ですごい。小丁子の頭が地に突き入って時に飛焼となり、刃中は小足が盛んに入り砂流しが穏やかに掛かり、物打辺りには小互の目状の沸筋が流れて二重刃のような景色となっている。石堂派、即ち備前古作を手本としている作風だが、互の目丁子もこうなると良く判らない。とにかく変化に富んでいるすごい作だ。

刀 備中守康廣 Yasuhiro Katana

2017-03-08 | 
刀 備中守康廣


刀 備中守康廣

 備中守康廣は、大坂石堂と呼ばれる江戸時代前期に備前伝を得意とした刀工集団の代表格。出は紀伊国であり、紀州石堂の呼称もある。この刀も高低変化に富んだ互の目に小丁子が密に連なる刃文構成で、小足、飛足が盛んに入り、鎌倉時代中期の備前古作を手本にしたことが良く判る。帽子はわずかに乱れ込んで掃き掛けており、古調を示している。地鉄は地景を伴う小板目鍛えに縮緬状に杢や板目が入って肌目が強く現れているとともに、丁子風の映りが淡く立っている。鎌倉時代の焼刃を求めながらも、刀の姿格好は江戸時代前期の、腰に帯びて安定感のあるもの。簡単に説明してしまったが、小丁子が密集し、焼頭が高低変化しながら連続し、しかも小丁子の寄り合う様子は複雑で繊細。鎌倉時代のあまり揃わない構成の方が自然味があって良いという人もあろうが、江戸時代の完成されたこのような美観もいい。澄んだ刃中に射す無数の足と宙を舞う飛足の動きのある働きも大きな見どころ。江戸時代の作と鎌倉時代の作を並べて比較するものではないが、こうして優品を鑑賞すると、江戸時代の技術の確かさを改めて思い知らされることになる。良いものは、時代など無関係に良いのだ。

刀 長舩忠光 Tadamitsu Katana

2017-03-07 | 
刀 長舩忠光


刀 長舩忠光文明十八年

 一寸ほどの区送りで二尺一寸強。反り六分。室町時代中頃の刀の一典型である。身幅はさほど広くなく、重ねを厚くして樋を掻いている。これも、この時代の高級武将の持ち物として多くみられる造り込みである。地鉄は、良く詰んで小板目風にも感じられる杢目交じりの板目肌で、微細な地沸が付いて映りが立ち、繊細な地景が肌目を綺麗に際立たせる。刃文は逆がかった互の目丁子。帽子は乱れ込んで返る。匂出来の焼刃は、明るく、柔らか味のある匂の足が射し、刃境には繊細なほつれが掛かっている。帽子が乱れ込んで、指表は二重刃状となる。忠光は直刃を得意とした名工だが、このような互の目丁子出来においても優れた作品を遺している。