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日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 七兵衛尉祐定  Sukesada-Sichibeinojo Katana

2018-05-25 | 
刀 七兵衛尉祐定

 
刀 七兵衛尉祐定寛文三年

 七兵衛尉祐定は、与三左衛門尉祐定の五代孫。戦国時代の祐定など長舩鍛冶は、天正十九年の水害で鍛冶場を失い、亡くなった刀工もあり、言わば長舩鍛冶の壊滅であった。だがわずかの刀工がその技術を守り、江戸時代前期から中期にかけて再興を果たした。七兵衛尉祐定はそのような中で水害から逃れた一人。水害時は十五歳、この刀は寛文三年、八十七歳の作。二尺一寸強。戦国時代の祐定の特徴でもある蟹の爪風の互の目乱の面影を感じさせる出来。腰開き互の目に小足が入り、沸が明るく冴えている。実用を意識しているのであろう、帽子は返りが長い。





刀 伯州秀春 Hideharu Katana

2018-05-23 | 
刀 伯州秀春


刀 伯州秀春

 この秀春は、伯耆国の幕末の刀工。二尺五寸強の堂々とした造り込み。地鉄は良く詰んだ小杢目肌。地沸が付いてしっとりとした感がある。刃文は互の目が上下に長く伸びるような構成で、ちょっと変わった趣となり、工夫の跡が窺える。しかも互の目の内側には小丁子風の乱れを加えて更なる変化を求めているようだ。刃境、特に互の目の頭には小沸が付いて冴え、刃中に広がる沸の帯も、独特の互の目から生まれたものであろう海に広がる砂州のように見える。個性的で綺麗な刃文である。





刀 播磨大掾忠國 Tadakuni Katana

2018-05-22 | 
刀 播磨大掾忠國


刀 播磨大掾忠國

これも忠國の刀。二尺四寸強の寸法で、元先の身幅しっかりとし、張りのある姿格好。地鉄は小板目肌が詰んで地沸が付いた極上の肥前肌。肥前刀というと忠吉系の直刃が思い浮かぶのだが、忠國は互の目に変化をつけた乱刃が得意であった。焼頭が一定にならず出入り複雑、互の目に伴って長短の足が入り、刃縁の沸が明るく冴える。肌目に沿ったほつれから淡い砂流へと変じ、刃中の足に絡んで流れ掛かる。これも綺麗な出来である。□170








刀 播磨大掾忠國 Tadakuni Katana

2018-05-22 | 
刀 播磨大掾忠國


刀 播磨大掾忠國

 研磨の技法が要因で刃文が弱く見えるのだが、光に翳してみると鮮やかに輝く冴えた出来。しかも出入複雑に乱れが強く、互の目の頭は矢筈状に左右に開くなど、独創と工夫の跡が窺える。刃中に広がる足を金線を伴う砂流しが切り、互の目の中に葉が交じり、所々穏やかな飛焼も入り、帽子は乱れ込んで先掃き掛けて長く焼き下がる、総体に変化を求めた出来となっている。何より、沸が明るく、綺麗だ。





刀 肥前國忠廣 Tadahiro(Tadayoshi-ⅴ) Katana

2018-05-18 | 
刀 肥前國忠廣

 
刀 肥前國忠廣(五代忠吉)

 二尺五寸強の身幅広く重ねの厚い堂々たる体躯。上三代があまりにも有名であったが故、以降の忠吉は少々影が薄くなってしまったが、代々の忠吉はこのような美しく力強い、優れた作品を遺している。地鉄は伝統的肥前肌でこれも綺麗。刃文は小互の目乱刃。刃境が互の目に小丁子、尖り調の刃などを交えて複雑に出入し、肌目に沿ったほつれが掛かり、沸筋、金線が長く絡んで変化に富んだ景色となっている。帽子も丸く返るのではなく、湾れ込んで掃き掛けを伴い返りはごくわずか。古作を手本としたものであろうか。





刀 和泉守國貞 Kunisada Katana

2018-05-18 | 
刀 和泉守國貞


刀 和泉守國貞

 初代國貞のかなり強い乱刃出来。安定感のある姿格好に、網目状に淡い地景の入る地鉄。無地風の微塵な梨子地風といった感じではなく、また荒いわけでもなく肌目に強みが感じられる。刃文は綺麗な小互の目乱刃。沸が深く強く、鍛え目に沿ってほつれが強く入り、足を切って砂流し状に掛かる。このような沸の美観が國貞一門の特徴であり、子の真改がさらに沸深い焼刃を完成させている。






刀 安穏寺正幸 Masayuki Katana

2018-05-16 | 
刀 安穏寺正幸


刀 安穏寺正幸

 この正幸は江戸前期の陸奥国相馬の刀工。全国を視野に入れると知名度の低いあまり聞かない工銘だが、かなり出来の良い作品を遺している。この刀は、小板目肌が良く詰んで鎬地は柾目調に江戸期の刀の掟通り。刃文は小沸出来の湾れに浅い互の目が交じり、刃形は単調にならず、帽子はわずかに掃き掛けを伴う小丸返り。刃境には小沸が付いてほつれ掛かり、刃中は小沸と匂で明るい。





刀 和泉守兼定 Kanesada Katana

2018-05-16 | 
刀 和泉守兼定


刀 和泉守兼定

 会津十一代兼定の直刃出来の刀。慶応三年八月紀であり、動乱の最中の作。二尺三寸強、反り四分五厘の扱い易い寸法と反り格好。柾目鍛えの地鉄は刷毛で撫でたように綺麗に揃った肌目が連なり、鍛着が密に良く詰んでいる。折損を考慮したものであろう、刃文は小沸に匂が交じった細直刃。実用のものながら、美しい地刃となっている。□





大小刀 長運斎綱俊 Tsunatoshi Daisyo

2018-05-15 | 
大小刀 長運斎綱俊




大小刀 長運斎綱俊

 綱俊は加藤八郎と称し生国が出羽国米沢。水心子正秀の門人加藤國秀の二男として寛政十年に生まれた。江戸に上って父と同じ水心子正秀の門に学び、天保年間から長運斎の号を用い、米沢藩上杉家の抱工として江戸麻布飯倉片町の藩邸に起居し、ここを鍛冶場と定めた。この刀は、綱俊の初期の濤瀾乱刃出来。良質の鋼を用いたものであろう、地肌に潤いが満ちている。この微塵に詰んだ地鉄が綺麗に粒の揃った沸からなる刃文を生み出す。□





刀 延寿國秀 Kunihide Katana

2018-05-11 | 
刀 延寿國秀


刀 延寿國秀

 江戸後期の肥後延寿派の刀工。鎌倉期に山城から移住して栄えた延寿國村の末という。もちろん地鉄は古作のような作風ではなく、江戸時代の良く詰んだ小板目鍛えで、湾れ刃を焼いた出来。刃先が柾状になっているのであろう、刃先の線に沿って流れるような刃肌が現れ、物打辺りではわずかに揺れて沸筋を生み、そのまま帽子へと流れ込み、先は揺れて返っている。派手な刃文ではないがとても綺麗な出来。






刀 澤原重胤 Shigetane Katana

2018-05-08 | 
刀 澤原重胤


刀 澤原重胤

 新刀期以降の有名刀工はもちろんだが、あまり知られていない刀工についても、綺麗な刃文を焼いている作品を紹介している。号付された有名な刀剣類だけでなく、多くの刀工があり、知名度が低くても良い作品を遺していることを知ってほしい。重胤は奥州白河の武士。藩命で大慶直胤に学んでいる。この作品は、綺麗に詰んだ小板目肌に湾れ調子の直刃を焼いたもの。地鉄が綺麗なのはもちろんだが、沸が強く付いて広狭変化のある帯状となった焼刃の中には、肌目に沿ったほつれ、金線、砂流しが掛かり、特に物打辺りの景色は凄みがある。





刀 横山祐包 Sukekane Katana

2018-05-07 | 
刀 横山祐包


刀 横山祐包

 銘に友成五十八代孫と切り添える、江戸後期の備前鍛冶。拳のような綺麗に揃った小互の目丁子を焼くことで知られているが、本作のような腰開き互の目に小湾れを交えたような刃文も焼く。地鉄はこの頃に特徴的な小板目肌で良く詰み、無地風となる。匂出来の刃文は、刃採りをしない研磨であり、ぼうっとして見にくいが、手にしてみると焼刃冴え冴えとしていることが判る、とても綺麗な出来である。





刀 丹波守吉道 Yoshimichi Katana

2018-05-01 | 
刀 丹波守吉道


刀 丹波守吉道

 大坂に移住した吉道の、美しくも吉道一門の作風の特徴が良く現れている作。時代は延宝頃で、大坂では真改や助廣などが活躍している。この吉道は、父祖の創案したこの刃文構成を以て彼らに対抗していたのであろう。筆者は、助廣や真改に先行する丹波守吉道初二代こそが刃文構成の妙を生み出し、その後の多くの刀工に刃文構成による面白さと創造性を認識させた芸術家であったと思っている。そして、このように後代の吉道も優れた作品を遺している。この美しい刃文構成に対して、なぜ未だに「簾刃」と呼ぶのだろうか。そしてまた、「なんだ簾刃か」と言い捨てるように評価する方がいることもおかしい。







刀 統景 Munekage Katana

2018-04-26 | 
刀 統景


刀 統景

 これも古刀期から身長初期慶長頃にかけて活躍した豊後鍛冶。鎬が張って肉厚く、手にしてずっしりとした重量が感じられる。戦国期でこのような造り込みは専ら上級武将の持ち物であったと考えてよい。本作は肉の減りがなく健全。地鉄は詰んでいる中に板目が現われている。写真では分かり難いが、斑状に乱れた映りが鮮明に立っており、地相を見る限り古刀。刃文は、刃採りが直刃調で戦国期の備前刀を思わせるが、互の目が小模様にしかも複雑に乱れている。特に刃境の変化に富んだ様子が見どころ。□







刀 統行 Muneyuki Katana

2018-04-25 | 
刀 統行


刀 統行

 江戸時代以降の綺麗な刃文の作品を紹介している。本作の統行は江戸時代最初期、慶長頃の豊後国高田鍛冶。肉が厚くしっかりとした実用刀である。地鉄は板目肌が強く現れ、地沸が付いて躍動的。刃文は直刃で、刃境はほつれ、小足が控えめに入るなど、戦国時代の備前物を見るような出来。帽子は掃き掛けを伴って小丸に返る。総体に武骨な印象が窺えるも、刃境の繊細な働きが魅力の作。直刃として、とても綺麗な出来である。