名前には呪術性があるといわれる。
昔、人は知らない人間に自分の名前を教えなかったという。
なぜなら、相手に自分の名前を知られると、呪術師に呪いをかけられてしまうからだ。
それが本当かどうかは私はよくわからない。しかし、名前には呪術性があることは確かだ。
例えば、Aという名前の人がいたとしよう。
後ろからAさんに「Aさん」と呼びかけると、Aさんはこっちを振り返った。当たり前の事である。しかし、よく考えてみよう。
私が呼びかけた「Aさん」というのは、単なる音である。私がその音を出すことによって、Aさんは振り向くという行為を反射的にさせられているのである。
つまり、単なる音がAさんを操っているということになる。それが、言葉という術である。
私たち人間は、言葉にとらわれるという性質を持っている。
頭の薄い人は「ハゲ」という言葉に敏感に反応する。その「ハゲ」という言葉の呪術にかかっているわけだ。
また、洗脳は言葉による呪術である。
あるワンフレーズをしつこく脳みそに刷り込むことによって、私たちはそれが嘘であったとしても、信用してしまう。
現代における呪術師は、広く言葉伝える職業についている者である。
例えば、ニュースキャスター、コメンテーター、お笑い芸人、政治家、弁護士など、その言葉に影響力を有している人たちである。
社会的地位が高く、信用できるとおもわれる人間ほど、呪術力が強い。私たちは、その言葉を簡単に信用し、思考を操られる。