思考の踏み込み

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

前田智徳25

2014-08-21 06:07:47 | 
前田の動きの中心もこの仙椎部にこそあり、重心は見事に下に鎮まって上体には一切ムダな力が入っていない。
これはおそらく前田が感覚的に上体に力が集まりやすい弱点を、早い段階で克服した成果であろうと思われる。




その為には相当に足腰を鍛え上げる必要もある。もちろん前田はそれもクリアしている。

ところが、上体に気が集まりやすい身体傾向を持つ者はアキレス腱が緩みにくいという特徴を持つ。
誰でも極端に神経が緊張しているときはアキレス腱が強張っているものだ。

普段からその傾向が強い上に、身体が捻れる偏り習性があると足首も捻れがちになる。

そうすると何が起こるか ー 。


うまく身体を休めることをしないで、足腰の負荷を増やし続ければ、アキレス腱への負担は相当に高まることが考えられる。

つまりー 、前田智徳という、この可憐なほどの努力家はその弱点を修正する為に鍛えれば鍛える程、本来アキレス腱への負担が高まるという潜在的な問題を、はじめから抱えていたということである。




前田は24時間野球の事を考えている。
あいつは凄い。

そう人々は賞賛する。

夫人の証言によれば寝るときもバットを抱いて寝ていたという。
私も凄いと思うし、そこが前田の魅力でもある。

だが、悲しいことに ー それは24時間アキレス腱が緩みにくかったという事であり、前田が "高み" を目指して己れに厳しくすればする程、その神経を研ぎ澄ませば研ぎ澄ますほどにー 、彼の身体構造の限界値に迫っていくだけであったのである。

(前田は甘いモノが大好きらしい、と先述した。それはサムライのクセに酒が苦手で甘いモノ好きという彼の意外性を言われるときに引き合いに出されがちな話なのだが、実際はもっと切実な問題かもしれない。甘いモノは神経を和らげ身体を緩める効果がある。
前田が甘いモノを好んだのは、365日緩みにくい自己の神経と身体を少しでも安らげたいという、無意識の内の行為だったのではないか ー 。 だとすれば何と厳しい日々であることか。甘いモノを食べている時だけが彼がその厳しさから解放されることを自己に許していた瞬間だったのかもしれない。)




前田は死にました、という。



前田を殺したのはいったい何か ー ?




過酷なプロ野球の日程か、選手を酷使する首脳陣か。あるいは身勝手に期待だけするファン達かー。
はたまた前田本人の身体に対する意識の低さか、周囲のトレーナーの無能さか。単にまだそういう身体を酷使する事が当たり前の時代であったというだけかー。

どれも少しずつ当てはまるであろう。

だが前田智徳が真の天才だというのなら、アキレス腱断裂という大怪我をする前になんらかの対処をしていなければならない。

たしかに違和感はあった、という。
そのときに処置しなかった事を後悔しているともいう。


何が前田を死なせたのかー。


その問いの答えは、以上のコトから総合的に見れば、言いにくい事であるが前田自身であり、前田を高みへといざなった前田の天才性でもある。


これ程の皮肉があるだろうか。