思考の踏み込み

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

前田智徳18

2014-08-14 00:46:13 | 
例えば球界の生き字引、野村克也が "最高の投手" と評した伊藤智仁は語る。




「僕が対戦した打者ではナンバーワン。本気になった前田にはどんな球も通じなかった。」

「顔色や仕草で、こいつヤバイな、ってわかった。
…松井秀喜?高橋由伸?

彼らも良いバッターだけど、ここに投げておけば絶対に打たれないというコースがあった。でも前田にはそれがなかったー 。」



クールなイメージの強かった中日の今中慎二も言う。




「僕を "この野郎!" という気持ちにさせたのは唯一前田だけだった。
よく審判になぜ前田の時だけそんなにムキになるのか?と聞かれた事さえあった。
特にランナーがいる時の前田の集中力は凄まじかった。」


そして広島戦で完全試合を達成した槙原寛己。



実はこの試合、前田は左肩亜脱臼で欠場していた。

「前田がいなくてラッキーだった。ヒットだけでいいならいつでも打てる。
真ん中の球は平気で見逃すくせに、難しい球は確実にとらえる。」

ちなみにこの完全試合の次の対槙原戦、ケガの癒えた前田はリベンジに燃え、見事に "返し" となる大ホームランを打っている。もちろんバックスクリーンへ。


他にも "打ち損じ以外で打ち取れる気がしなかった ー "、という発言をする投手までいる。

ー これらはほんの一部の証言であるが、1990年代から2000年代にかけて活躍した各チームのエース達は口を揃えて言う。



"最強の打者、 ー それは前田。"



野球というスポーツにおけるバッターという仕事をこなす人々の、実力を分析するとき何処に焦点を絞るべきだろうか。

ある人は打撃フォームの合理性を言い、ある者はそのスイングの速さを言い、またあるいはバットコントロールの技術を言う。

だが打撃の真髄はそこにはない。

打者として必要な能力の、究極における部分とは選球眼と集中力にある。

投手が球を投げる。
指から離れる。
捕手のミットに届く。

プロの世界であればこの間、わずか0,4秒そこそこであるという。




その "一瞬" で、打者はストライクボールの判別をし、コース球種を見極め、振るか振らないかの選択をする。


バットを振る起動をしてからボールを捉えるまでにも、まず脳から筋肉へと指令が行き渡るのにプロでも0,1秒かかる。
そこからスイングするのに0,2秒。

ということは打者に残された時間は僅かに0,1秒ちょっとと言う事になる。




だからこそ、球離れが遅い投手というのは有利であるし、球の出どころの見えにくい投手もまた強い。

逆にギリギリまでボールを呼び込める打者はこの0,1秒を限界まで引き伸ばせるという意味で好打者たり得るのである。